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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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おいしいモン

▲休みがとれた、とかで上の子が帰省。もう成長は止まってる
はずの年やのに帰って来るたびに大きくなってる気がするのは、その態度のデカさゆえ、かな(苦笑)
それでも。
お茶碗ひとつ、お皿ひとつ、お湯のみひとつ増えるだけで、いつもながらの粗食のテーブルもなんだかにぎやかに見えて。
ああ、この時間こそ「ごちそう」と思う夕餉・・・なぁんて、うっかり口にでもしたら「おかあちゃん『手抜き』を『家族愛』にでっち上げてどうすんの?」って つっこまれそうやから(笑)
こういうシアワセは秘かに一人感じ入っておかんと、ね。

▲今はこんな風に「粗食一本道」(笑)のわたしだけど、若いときは「おいしいモン」を求めて、あっちこっちに。今思えばずいぶん(当時のわたしとって)不相応な店にも行きました。
友だちのSと祇園の某店の暖簾をどきどきしながらくぐったのもその頃のことです。
どんな展開でそういうことになったのか、もうすっかり忘れたけどその日は「わたしのおごり」で「なんかおいしいモンを食べに行こう」という話になって「それなら行きたいお店があるんよ」と京都育ちのSは祇園は花見小路をさっさか歩いて行くのでした。

▲竹矢来や格子作りの「いかにも」な京都のこういうとこのお店は「いちげんさんおことわり」の小さな札がさらっとかけてあったりして、前を通り過ぎるだけなら何回も行き来してるけど。
「えっ、S!こんなとこ行くん?」
あとをついて歩きながらも、わたしの頭の中は自分の所持金確認。えっと、たしか財布にこれだけと封筒に給料の残り入ってたのもバッグに入れて来たし・・・と、パニくりそうなわたしなどお構いなしにJは鼻歌なんか歌ってる。

▲高校生のときのクラスメイトにお茶屋さんの娘がいた、とかで、Sはいろいろと物知りで 歩きながら
「この店は○○のごひいきで有名なんえー」とか ほんまか嘘かは知らんけど 歌舞伎役者の名前を各所にちりばめては(笑)上機嫌なのです。
わたしは、といえば何度確認しても所持金が増えることなどないわけで、たしか27年くらい前のことですからカードなんて持ってなかったし(今もやけど・・)
ま、足りなかったらSもお金持ってるやろしどうにかなるやろ(いやあ、ほんまに若いというのはこわいもん知らず)と、
思い直してSのあとについてゆくのでした。

▲やがてSの足が止まったお店は思いの外、気楽な雰囲気でほっと一息。
聞けばお昼は観光客も入れるようになってる、とのこと。
「あんたにおごってもらうから言うて そんな高い店へなんか案内よーせんえー」
Sはそう言うとわたしの「そわそわ」がおかしいと、からからと笑うのでしたが。
何故かそのとき一階の客席はわたしたちだけだったので、お料理を運んでくれるたびにお姐さんも、好奇心旺盛の若い女の子相手に気さくにいろいろ話しかけてくれて。
いつしか「そわそわ」も「どきどき」も忘れ
「おいしいなあ。おいしいなあ」と、上品な懐石料理を年相応にがつがつ食べた(苦笑)気がする。
(が、今、どんな料理だったのか全く思い出せない)

▲忘れられないのは、お姐さんの帯のお太鼓の落ち着き方がええ感じやったので、そのことを言ったら、なんと、いきなりその場で帯を解いてレクチャーをしてくれはった!こと。
着付けなどまるでだめなわたしも、着付け自慢のSも一瞬何しはるんやろ とびっくりしたけど、流れるようなその手つきがもうほんまにみごとで、うっとり見入っていたのでした。

▲果たして 懸念の「おあいそ」(お勘定)は竹細工のお皿の上に載った千代紙のその端っこに小さく鉛筆書きでした。
とにかく初めての経験にぼおっとして、いくらだったのか覚えがありませんが、外に出てから財布のぞき込んだら電車賃くらいしか残っていなかった気がします。

▲Sとは何回その日のことを思い出しては大笑いして話したことでしょう。
その後わたしはケッコンしたり、からだこわしたり、子どもが生まれたり、そのうち田舎暮らし、となって、料理屋さんになど行くこともなくなりましたが、ばりばりのビジネスウーマンだったSは お金に糸目をつけず京都の老舗旅館に泊まった、NYにある有名なイタリアンの・・・と電話がかかると「おいしいモン」の話を聞かせてくれるのでした。

▲「けど、あのときの店はやっぱりサイコーやったな」が いつも話の締めくくり。
雑誌や新聞で京都の料理屋さんの記事見ると、あの日思いっきり背伸びしてSと行った祇園を思い出します。
そして、おいしいモン食べ尽くしたんか、急ぎ足で3年前遠い遠い手の届かんとこに行ってしまったSを思って「そや、あのときはほんまサイコーやったなあ」と ぶつぶつ一人言うてるのでした。
by bacuminnote | 2005-08-04 16:47 | たべる