いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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流されないためにも。

▲とうとう12月になった。
ああ、今年一年わたしは何をしてたんだろ?と思いながら、残り一枚になったカレンダーを眺める。
だけど、こんな風に ぼんやりしている間にも世の中は動いている。こわいくらいに。

▲先月末(11/27朝日新聞夕刊『夕陽妄語』)加藤周一氏が「2006 年11月に太平洋の両岸でおそらく歴史に残るだろう二つの事件が起こった」として、米国の「中間選挙」での共和党の大敗と、日本では衆議院での与党による「教育基本法」改定案への強行採決を挙げていた。前者は「米国の有権者のイラク戦争政策批判」として当然の結果という気がするけれど。もうひとつの「歴史に残るだろう」大きな事件がこの国に起こっているというのに、何事もなかったような顔で2006年は暮れてゆくのだろか。

『GRAPHICATION』no.147という広報誌に「いま教養が必要な理由」というタイトルで木田元氏(哲学者)と池内紀氏(ドイツ文学者)の対談が掲載されていた。その中で池内氏がこんなことを言っている。
「権力者が教育をいじる時代はやはりよくない時代ですね。教養がない政治家ほどすぐに教育を言い出す。最初に言ったように、もともと教育と教養はほとんど関係がないし、本当は国を愛する教育より、ものごとの本質をみきわめ、流されないための教養を身につける方が大事だと思うんですけどね」

▲「ものごとの本質をみきわめ、流されないための教養を身につける」
子どもたちにそれを伝えるにはどうしたらいいのだろう。いや、子ども以前に大人たちは(わたしは)果たしてそれをできているのだろうか?と、考え込んでいる。
たいていはじっくり考え続ける、ということが苦手で、すぐ途中で放り投げてしまうわたしだけど。時代を見きわめ「流されないため」にも、考え続けることを自分に課そうと思う。

▲さて、暗いニュースばかりの毎日ながら、この間は久しぶりにしみじみと いい映画に出会えた。うれしくて「よかった、よかった」とあちこちで言いふらしてる。
でも10年くらい前の作品だし、何より「名作」なので観たという人もけっこう多かった。その映画『イル・ポスティーノ』は1950年代イタリアのナポリ沖の小さな島での話。

▲水道もない貧しいこの島にチリから亡命したパブロ・ネルーダ(実在した詩人)が住むことになり、世界各国から届く彼への郵便物をマリオという青年がその専用配達人として働くことになる。マリオは配達をしているうちに、詩人に届く郵便の差出人に女性が多いことから詩人になれば女性にもてるのか、と詩に興味を持ち始める。それで詩人に詩について教えてもらうようになる。

▲漁師という仕事に興味が持てず、ぶらぶらしていたマリオが詩人と出会い、やがて「詩」そのものにも出会ってゆくのだけれど。
自分を表現するなにかを獲得できるって、なんてすばらしいのだろう。そうして、彼は一目惚れしたベアトリーチェという娘に詩を送ろうとする。

▲詩人とのであいはそればかりでなく、不満に思うばかりだったその小さな島の美しさをマリオに気づかせる。
初めは「島で一番美しいものは何?」と詩人に聞かれて無邪気に「ベアトリーチェ」と答えた彼が 波や風の音、教会の鐘、それから ベアトリーチェのおなかに宿った赤ちゃんの心音・・・それらを後にチリに戻った詩人に聞かせるため 録音する場面は、島への愛、妻への愛、そして詩人への深い友情を感じて胸があつくなる。

▲「ニュー・シネマ・パラダイス」のフィリップ・ノワレ演じる詩人ネルーダがとてもいい感じ。そしてこの映画のクランクアップの12時間後亡くなったというマリオ役のマッシモ・トロイージがせつない。作品そのものが詩のような気がした。
詩への思いや、生まれ育った田舎のうつくしさに気づくのにずいぶん回り道した自分 が重なって、忘れられない映画となった。
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Commented by 三度笠 at 2006-12-12 07:22 x
あっというまの12月やねえ
いつもタイムリーな引用をありがとう
「ものごとの本質をみきわめ、流されないための教養を身につける方が大事」
ほんまに、こういう考えが基本にあって、家族や友人隣人を大事にせなあかんと思うようになって、郷土や自然、そんで愛国心につながるのが、スジちゅうもんと違うかなあ。

『イル・ポスティーノ』
私もA夫妻におしえてもらい随分たってから、ホームビデオで一人おんおん泣きながら観た、忘れられない映画です

ネタばれですが、以下に好きな台詞を:
ベアトリーチェが、自分の無力さに落ち込むマリオに
「あんただって立派よ」というところ。
ベアトリーチェ、なんていい女。
以来、私も夫に「あんたが一番!」と言うことにしました
(少々無理矢理でも、笑)。
そうか、あの男優さんはなくなられたのですか...

これと「セントラルステーション」が、私の中でセットなの。

もっと語りたいですが長くなるので、また別途~!
Commented by baku at 2006-12-12 14:45 x
■三度笠chan
GRAPHICATIONのこの号の特集「教養の再生」
の中に松本昌次さんという編集者が「"教養"をめぐる若干の回想」という文章の中で『埴谷雄高さんが、かつて、「精神のリレー」の継承者になって欲しいと語ったことがある。「より深く考えること」と書かれたバトンを、たとえ10メートルでもいいから走って、次の誰かにリレーして伝えて欲しいということである』と書いておられました。
「精神のリレー」なんて、わたしにはできそうにないけど、子どもには「自分の頭で考えることの大切さ」は、かくじつにバトンタッチしたい、と思う今日このごろです。

「イル・ポスティーノ」やっぱり観てはったのね。
あのマリオ役の方は心臓移植の手術を延期してまで本作の撮影に賭けてはったそうです。
あ、ここで劇中出た詩の朗読が(英語で、ですが)聴けます。(何故かうまく繋がらないときもあるんだけど。"Tonight I can write"がいい感じ~)
http://www.geocities.com/nerudapoet/postman/poetryof.htm
by bacuminnote | 2006-12-09 15:15 | 映画 | Comments(2)