いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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きっとここは そういうところ。

▲2004年信州から大阪に戻った最初の夏、まだ荷物が散乱する中 とにもかくにも、と買ったものは、葦簀(よしず)とすだれとエアコンだった。もともとクーラーは相方もわたしもあまり好きじゃなかったけど、外出するときも鍵を閉めない山の暮らしから、夏でも雨戸を閉め切って寝る、という都市型生活(苦笑)に変わったから。嫌いもナンも、そんなん言うてられんくらい大阪の夏は暑かったんよね。

▲滋賀県は琵琶湖の東で四年(ここも大阪に比べたら格段に涼しい所でエアコンなし)それに十数年に及ぶ信州での暮らしで、すっかり身もココロも寒冷地仕様になってしまったのだろう。窓から入る風はつめたい高原のそれ、というイメージが頭から離れず、いっそう大阪の夏を暑くしていたのかもしれない。だから最初の年は家族で暑い、暑いとしつこいくらい言うて、扇風機もエアコンもフル稼働してたなあ。
信州生まれの下の子は、ひどいあせもでお医者さんに行ったり(寒冷地育ちの子がいきなり暑いところに行くと熱出したり、ひどいあせもになったりするらしい)ほんま冗談やなく、ひと夏やっとの思いで過ごした気がする。

▲そんな夏からもう三年。エアコンは最小限に控えて、の日々にも慣れた。(暑いのには相変わらず弱いが・・・)
けど、夏になると彼の地のみどりの風が恋しくなる。
去年は予想外の大雨で、近くまで行きながら泣く泣くスルーして帰って来たので、今年こそは、とこの間 息子(その2)とふたり信州への旅に出た。
反抗期のさなかやし、ハハと子で遠出なんて すでにもうタイムリミット状態で。もう今回が最後かもしれへんね~と息子と話しながら、やっぱりけんかしぃしぃ計画を立てた。

▲ところが初日から事故の影響で電車が遅れるというアクシデント。いきなり駅で、いつ復旧ともしれない電車を待つことになった。
人身事故とのアナウンスに、うかれた思いが一気にダウンする。全くなんという社会なんやろ!とやりきれない思いと憤り。それなのに、しばらくすると「暑いのにホームで延々待たされる」ことへのいらだちに変わってしまってる自分に気付き、深くため息だ。
あっちこっちから不満の声がもれ聞こえる。
列の中 山行きスタイルの親子は 子どもが待ってる間におやつを食べ尽くしてぐずり始め。横にいた中年の女性は「こんなに暑いところでずっと立ってたら、買ったお弁当が腐っちゃうわよ」とぼやく。

▲やがて、皆から「ほお~」という安堵の声がもれる中、見慣れた姿!の「特急しなの」がやっとやっとホームに入ってきた。1時間半の遅れだった。
この日息子は終点・長野泊。わたしは松本経由でひと足先に開田入り、と、初日は別行動。ところが電車が遅れたため(最終的に2時間の遅れとなった)わたしは予定していた松本での時間が正味1時間ちょっとになってしまうわ、息子は息子で電車が終点まで行かず急遽松本止まりになるわ(つまり別の電車に乗り換えなければならない)で、ああでもない、こうでもないと、さっそくけんかが始まるのであった(やっぱり、ね)

▲それでも、長野行き特急に乗り換えてぶじ息子も出発、わたしは払い戻しで得たお金で(特急が2時間以上遅れると払い戻しされるらしい)タクシーをとばして目的の松本民藝館に。
前にここを訪れたのは学生時代の夏休みだったから、もう30年ほど前になる。その後 思いがけず長野県の住人となって松本にはしょっちゅう来ていたのに、ほとんどが子どもの病院通いで、ここに足をのばすことなど思いもしなかったのだ。開田から出て来て、診てもろて、帰るだけで精一杯やったから。

▲館長の話では何年か前に大規模な改修をしたらしい。入り口が違ってたのはそのせいか。けど、静かな雑木林に囲まれた「なまこ壁」の蔵造りの建物の醸し出す雰囲気は昔と変わることがない。ついでに来館者も少なく(地元でも知らないひとが結構多い。とてもすばらしいところなのになぁ・・・)静かで、この空気を独り占めできるぜいたくも かわらなかった。
開け放たれた中二階の小さな窓からふと外をのぞくと、軒先からおおきな蜘蛛の巣がかかっているのが見えた。光る糸も、その模様のうつくしさも、巣のむこうに見える畑の濃いみどりも、民藝館にとてもよく似合っており。息きらしてタクシーに乗りこんで、何度も時計をのぞき込みながらの入館だったクセに、いつのまにかもう時間を忘れてる。そしてまた来たくなってる。たぶん、ここはそういう場所なのだろな と思う。

▲たのしみにしていた『李朝展』は一室だけの企画展ながら充実していた。館長にていねいな説明をしてもらいながら、白磁の大壺のおおらかな曲線に魅入る。竹張箪笥もきれいだったな。あっという間に1時間。車を呼んでもらって松本駅に。
この日は長野:松商学園の高校野球決勝選だったらしく、その関係の車で渋滞する中、運転手さんの「それは いい試合でねぇ」と、熱の入ったリポートを 時計見ぃ見ぃ半分うわの空で聞きながら(苦笑)すべり込みセーフで駅に到着。
そうして夜には開田の友人宅に。ああ、夜のなんと暗く心地いいこと。目覚めの朝のなんとさわやかで清々しいこと。
風がちがうんよね。
来てよかったなと思う。

▲それだけじゃない。着いたその日も、息子と合流した翌日も翌々日も、あっちでもこっちでも熱烈歓迎してもろて。「よう帰ってきたね」と言うてもろて。「かわらない」山と空と友だちは皆シャイだから。さりげなく、やさしく包んでくれて。
あらためてこの村でわたしたち一家が得たものの大きさをおもうのだった。
若い友だちも、同世代の友だちも、ジンセイの先輩も。それに今回初めて出会ったひとも。笑って、食べて、のんで、しゃべって。気がつけば けんかもせずに親子で笑う。
時をわすれ、また来たいとおもう わたしのすきなところ。
きっとここは そういうところだ。
おおきに。また、帰ってきます。
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by bacuminnote | 2007-08-05 22:39 | 出かける