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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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流れる空気は。

▲ここ数日うんと冷えてきた。
ちょっと前まではきもちよかった朝一番の雨戸開けも億劫になってきたし、ふと見上げた街路樹の葉っぱはもう残り少なくなって・・そういえば、前を通るといつも落ち葉掃きしてはった 近くのマンションの管理人さんの姿もここ数日みかけない。
家の中でもmacの前では 気がついたら椅子の上に正座してるし、ね(笑)
けど、寒くなって当たり前。じきに12月やもん。

▲道行くひとも はじめはマフラー、次にコート姿が増え、そしてこの頃は手袋が目にとまるようになった。
じつは(というほどのこともないけど)手袋好きである。いや、コレクションしてるとか特別に凝ってる というわけではなく、手袋の似合ってるひとを見る(見つける)と、よろこんでいるだけ(笑・・本を読む姿のうつくしい人を見るのが好きなのとおなじかも)

▲この間のこと。夕方買い物帰りに手をつないだ高校生のカップルとすれちがった。つないだその手は素手なんだけど、もう一方の手には同じグレイの手袋を片方づつしていて。ちょっとベタなドラマの一場面みたいな気もするけど。おばちゃんはなんだかうれしくなって、少しがまんして間をおいてから(苦笑)そっと振り返り寒風の中 若いふたりの後ろ姿に見とれてた。
『手袋にキップの硬さ初恋です』(藤本とみ子・現代俳句歳時記1989)なーんて句を思い出したりして。冬と初恋、手袋と恋はよく似合う。あ、けど、今の高校生に「硬いキップ」なんてもう通じないんだろな。ともあれ、このふたりが今週のわたしの手袋観察・ベストワン。

▲「暑い」より「寒い」に惹かれるのは冬生まれだからか、寒いとこ育ちだからか。そのくせ寒がりの冷え性なので、大阪から琵琶湖・湖東(けっこう寒いとこ)、そして信州・開田高原へとどんどん寒い所に移動するわたしたちに、親もきょうだいも、そして友人たちにも驚かれたり呆れられたりしたものだ。

▲「寒いとこ」といえば、先日から読んだ本二冊はどちらも北海道出身の作家だった。一冊は『遠別少年』(今回は 光文社文庫版にて再読) 北海道の最北 稚内市から日本海側に少し降りた遠別という小さな田舎町で少年時代をすごした 装丁家の坂川栄治さんの短編集。もう一冊 『海炭市叙景』は函館出身の佐藤泰志さんの遺作となった短編集。

▲これらの本は同じ北海道が舞台の小説ながら、人口5000人に満たない遠別と、海炭市という架空の地方都市と、描かれるまちも時代も全然ちがうんだけど。そこに住むひとびとのよろこびや哀しみ、ひとの愚かさもきれいごとじゃない切羽詰まった思いも。その背景に流れる空気は北のまちのそれだ。
いつだか観た映画で主人公の若い女性が「寒いと生きている実感がするわ」と言ってたのをおもいだした。

▲さて、今回再読した『遠別少年』は初めに読んだ時 その世界にノックアウトされてわたしは坂川栄治さんに手紙を書いた。と言ってもどこに出していいのかわからないので、出版社のリトル・ドッグ・プレスの方にお願いしたら坂川さんのもとに届けてくださった。

▲手紙にはその本のこと、それから『写真生活』のことを書いた。坂川さんは、ブックデザイナーかと思うと文章も書き、写真も撮り、写真のギャラリーもやってはった多才な方で。その『写真生活』にはいろんな国の16人の写真家のことが紹介されているのだけれど、唯一日本人でとりあげられている山沢栄子さん(1899-1995) は相方(ときどき忘れそうになるけど、パンやになる前はカメラマンだった)の写真の師。彼は先生の最後の弟子として長く助手をつとめていた。

▲うれしいおどろきだった。しかも「要塞とサックス」として、その作品をアルバート・アイラーのサックスを重ねて語っておられて。アイラーは相方が昔から好きでよく聴いているから。そして坂川さんのギャラリーで「山沢栄子写真展」も開かれたことを知ったのだった。先生が亡くなられた翌年のことだったらしい。
そうそう、手紙を出して すこしして坂川さんからお返事をいただいた。A4の紙びっしり手書きの手紙は4枚もあって感激した。
「一冊の本が送り手と受け手をつなぎます。まさにこの手紙がそうです。」(手紙の中から)
by bacuminnote | 2007-11-29 21:38 | 本をよむ