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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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濃く青いインクで。

▲ 凍えるようにつめたい雨が終日降って 心細いようなきもちになっていたら、翌日はなんとか雨もあがり時おり薄日が差す朝となった。
その日は午後から義父の七回会(ななかいえ)。
ひろく言われている「○回忌」という言い方ではなく仏縁に「会う」という「え」という呼び方をしたいとおもいます、とご院主さん。その体型もよく通るテノールもオペラ歌手みたいなご院主さんの読経がひびく。経本を開いていっしょに読んでいたはずが知らない間に「迷子」になってしもたから。あとはただじっと聴き入っていた。

▲そうして法事がすみ、皆で義父の好物だった珈琲とシュークリームを。
生前、毎日・・・多いときは日に何度も通っていたという階下の喫茶室で淹れてもらった珈琲は、カップに注ぐと同時にふわーっと香りが立ち。カスタードクリームのあまいにおいと共に部屋いっぱいひろがった。
一杯は義父に。
亡き人の事を義母がおもしろく語り、さんざん大きな声でわらって、それからちょっとしんみりした。いつのまにか窓の外は明るく、畳にのびた冬の陽は 長くやさしくて。佳い時間はゆっくりとすぎる。

▲ ホームからの帰途、11月の夕方はもう薄暗くて ショッピングセンターの大きなクリスマスツリーに電飾が光ってた。歩いていると風が冷たくて、ほっぺたは冷蔵庫から出したてのパイ生地みたいなのに、体はほかほかして・・・この感じ、雪かきの時みたいやなあ、と信州の冬を思い出す。
義父が亡くなって、そのあとしなければならない多くの事で 相方がしばらく大阪と開田高原を頻繁に行き来していた頃。それまでは冬に相方が留守にすることなんて一度もなかったので、雪が降るたび どきどきしながら一人雪をかいた。

▲ さて、家に着く頃にはからだも暖まって。まずは自分への「おつかれさん」ビール。おいしい。「仏縁」に会(お)うたかどうかわからないけど、その日は義父のことをおもう一日だった。
そういえば、と出してきた相方の子ども時代のアルバム。ここに義父が詩を何編か書き込んである。設計者らしく几帳面な濃く青いインクの文字で、賢治の詩や知らない人のうたが どんぐりみたいな相方の写真の横に添えられていて。「若い父親」はこのころどんな事を考えてたのだろう。ああ、詩の話など一度もしたことがなかったけれど。

『また いつとなく
鐘は こころのなかの とびらをたたき、
しろく よりかかる。
おもひでの ほたるぶくろの花のゆれるやうに
鐘のねは すがたもなく
遠遠(とほどほ)に こころの窓によりかかり、
しづけさの かぜのおもてに 手をのべる。』
(「よりかかる鐘の音」 大手拓次
by bacuminnote | 2009-11-24 16:30 | 開田村のころ