長い睫毛は くるりんと。
2010年 02月 28日
だから、ピンクの庭が夢の中のようにそこだけくっきりカラーで、ふしぎな光景だ。
▲ 返却日まであと一日なのに、まだ最後まで読めていない本を持って図書館に行く。600ページ余りもある分厚い本やから、残りは館内で読んでそのまま返却すればいい、と袋に入れてきた。
ところが、いつもは混んでるエレベーター前にはわたし以外だれもいなくて、おかしいなと思ったら「やっぱり!」の休館日。ふうう。毎日が平日でもあり休日でもあるという生活を送っているので 時々こういうことになる。
▲ このまま重い本を持って帰るのもなあ、と階下の公民館のソファのあるスペースで最後まで読んでいくことにした。ここには円形のソファがいくつかと隅っこにはテーブル席がひとつあって、この日はテスト中なのか女子高生が四人、数学の問題を皆で考えているみたいだった。短めチェックのプリーツスカートと紺のジャケットのよくある制服姿。瞬きするたびにバシャバシャと音がしそうなその長いまつげは、離れたところからでも くるりんとカールしてるのがわかる。
▲さて、 本の残りはあと2章。
時おり聞こえるきゃっきゃっ楽しそうな笑い声と、もうすっかり忘れてしまってるホウブツセンやらインスウブンカイという言葉にどきん。こういうのに泣かされた日々を思い出したりして、続きはなかなか進まない。あかん。ここでは気が散って読めへんなあ・・と顔をあげたときに、年配の男性が湯気のたつカップラーメンを持って、そろりそろりとそのテーブルに向かった。
▲どうやら その雰囲気から、おっちゃんがテーブル席に荷物を置いてお湯を入れに立ってる間に、高校生グループが座ったみたいで。向こうから歩いてきたときからそう決めていたかのように、おっちゃんは迷うことなくさっと自分の荷物を持つとソファ席に移動した。女の子たちは「あ・・・す、すんません」と 口の中でごにょごにょ。おっちゃんは「いやいや、こっちでもええし」と答えてはった。けど、さすがにテーブルのない、背もたれもないソファでラーメンは食べにくそうだ。
▲ ラーメンの匂いがフロアに広がり、ずるずるという音と、高校生のぼそぼそ何やら言う声が響く。
と、そのとき。「そんなところでカップラーメンなんか・・・」という声がして。びっくりして本から顔を上げた。てっきり館の職員が何か言いに来たのか、と思ったのだ。そしたら一人の女の子が「そんなとこでラーメンは・・」と言い、別の子たちがそれに継いで「そこでは食べにくいやろから、こっちに」「そう、こっちに来て座ってください」と言うのだった。
▲ あのぼそぼそ声は数学の問題対策じゃなく「おじいさんに悪いことしたよね」とか言って相談していたんだろな。「どうぞ、こっちへ・・・」と口々に誘う笑顔がほんまにかいらしくて。「ありがとう。けどな、恥ずかしいし、ここで食べるわ」とはにかみながら答えるおっちゃんもまたええ感じやったから。
結局、気は散りっぱなしで(苦笑)ひざの上の本は先にいっこも進めなかったけど。
マンゾク。数学のテスト うまくいくといいね、って心の中でおもいながら、わたしはまた重たい袋持って公民館を出た。