人気ブログランキング | 話題のタグを見る

いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31

I miss you.

▲ この間の朝のこと。
庭から相方が「おーい。朝顔咲いてるぞ」と呼ぶので、何あほなこと言うてんの?今年は種蒔くの忘れてたやん~とか思いながら、外に出た。「ほら」と相方の指さす方みてびっくり。横っちょにはまだ小さな黄緑色の双葉があるのに。いきなり花。
どこからか種が飛んできたんやろか。冬が来る前にあわてて「ショートカット」で花咲かせたんやろか。相変わらず草まみれの庭の(怠け者の言い訳みたいで気が引けるけど、これはこれで気に入ってる)緑の中 地上10cm足らずのところで咲く清々しいうすいブルーの花。二人しゃがみこんで静かにながめてた。

▲ 不思議の花一輪をみて「生命」を感じたあと、佐野洋子さんの『死ぬ気まんまん』という本を読み終えて、いま「生」の向こう側にある「死」をおもっている。
これは去年のいまごろ72歳で亡くならはった佐野さんの最後の本。絵本もエッセイもこれまで何冊も、そして何度も、たのしんで読んできた佐野洋子本だけど。もう「新作」はないのだなと思うとさびしい。

▲ 本のタイトルはドクターから「あと二年」と宣告された佐野さんの言動をみて息子さんが「かあさん、なんだか死ぬ気まんまんだね・・」と言うてはったから、やそうな。ちょっと本を読んだくらいで著者のことをわかったみたいにこんなこと言うたらおこられるやろか。でも「死ぬ気まんまん」やなんて。ほんま「佐野洋子」らしいなあと、おかしいかなしい。
有名な話だけど、このときの告知のあと、というかその足で佐野さんはガイシャを買うんよね。なんとジャガー。しかもブリティッシュグリーン。あの深いグリーンにもうっとりするけど、佐野さんの大胆さ、おもいきりのよさには もっとくらくらする。

▲ 『私はそうは思わない』『友だちは無駄である』『がんばりません』『あれも嫌いこれも好き』『ふつうがえらい』『覚えていない』『役に立たない日々』『問題があります』・・・と、思いついたタイトルだけ並べても「佐野洋子」とおもう。いつもどきっとするくらいイタイところをつき毒舌をはきながら、純真でまじめ。ひねくれてるようでチャーミング。

▲ 『死ぬ気まんまん』の最後の章は関川夏央氏の『「旅先」の人 佐野洋子の思い出』という文章が寄せられているのだけど、その中にもチャーミングな佐野洋子を思わせるエピソードがある。久しぶりにあう関川氏にこんなことを言わはったとか。
『また遊びに来てよ。誰かいい男いない?鑑賞したいのよ』『最近、悪いおばあさんになっちゃってさ、男好き全開なの。でも、取って食うとか、そういうんじゃないの。鑑賞よ、鑑賞。』本気なのか、男子をおちょくってる(←大阪弁)のか、煙草吸いながら佐野さんのいたずらっ子みたいに、ふふと笑う顔が浮かぶような話で、ますますファンになった。

▲ そういえば、もうずいぶん前のこと。NHKの
「週刊ブックレビュー」
で司会者で作家の藤沢周が佐野家をたずねてインタビューする場面があって。佐野洋子の前で、藤沢周が たじたじだったのが ものすごくかいらしかったのをよく覚えている。
目の前の男性をいっぺんに少年にしてしまう、そんな魅力が佐野さんにはあるんやろね。
そのときに映ってたうしろの障子紙がちょっと破けてたのも なんかええなあと思った。(←うちといっしょや~)

▲ 《私も死ねば「いい人だったね」と皆思ってくれるのだろうか。
死んだらそれも自分にはわからないのだから、つまらない。 
死なない人はいない。そして死んでも許せない人など誰もいない。
そして世界はだんだん淋しくなる》(『死ぬ気まんまん』エッセイの最後に)
つらい、きびしい、さびしい話もいっぱいなのに、それでも読後ふしぎにかろやかな、ちょっと冷たいけどさわやかな風にふかれたみたいな、そんなきもちになった。 思ってることばんばん言うて、すきなこと書いてはるようで、その実 ほんとうにしんどいところは、誰にも語らず 独り じぃっとかみしめる人だったのかもしれない。 すごいなあ。
さて。
今日はぽかぽか陽気やから、お墓参りにゆこう。義父が亡くなって8年。パン屋やめてもうじき8年だ。


*追記
youtubeにこんな動画をみつけました。何かの番組でしょうか?「絵本作家 佐野洋子」
http://www.youtube.com/watch?v=MNvrB7vVzrQ
by bacuminnote | 2011-11-14 11:12 | 本をよむ