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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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しらべもの。

▲一昨日は曇り空ながら暑くなく寒くなく。朝から洗濯物干したあと、塩おむすび二個とお茶のポットを持って万博記念公園に。五月の平日の万博は幼稚園から中学校まで遠足組でにぎやかなこと。この日わたしの横を長い行列つくって歩いてたのは幼稚園のたぶん「年少」さんたち。ぶかぶかのスモック着て、隣の子と手をつなぎながら、あっち見てこっち見て。とことこ、たかたか歩く。と、急に走り出したり。ひと組が列からはみ出し、それを追っかけた子がころんで大泣き。揃ってるのは、ブルーのスモックだけ。それぞれがみごとにバラバラに動いてるのを見ていると、なんかうれしくなる。

▲ しかし大変なのはセンセ。ここの幼稚園、職員一人に対して子どもが多いなあ。あれ?あの子ら大丈夫かな?とか。ついつい保護者的(祖母的)視線のわたし。でも若いセンセは何度もうしろ振り返り声かけて、前後左右移動しつつ、適度に注意し、怒りっぱなしということもなく。すごいなあ。
前のピンクのスモック組がどんどん先を行くけど。ええやん、ええやん、ゆっくりで。と、子どもらとおんなじくらいスローペースで歩くおばちゃん(あの子らから見たらおばあちゃんかも)は思う。

▲ そんなわたしに「おはよう」と挨拶してくれる子。「あのねえ。◯ちゃんったらね、さっきねわたしの事、ぐいって押すんだよ」といきなり話しかけてくる子。皆ほんまに かいらしい。公園でお弁当とおかあさんやおとうさんが待ってるんやって。わあ、いいねえ。

▲これからもみんなそれぞれマイペースで行ってや~と心の中でメッセージ送って、途中でバイバイ~わたしは 「みんぱく」(国立民族学博物館)に向かう。待望の特別展『今和次郎(こん・わじろう)採集講義・・考現学の今』
を見に。

▲ 考現学とは、考古学が遺物から過去を探る学問であるのに対し「いま」を対象に調査するということで、これは今(こん)やその仲間による造語らしい。英語では“Modernology”(モデルノロジー)というそうだが、今和次郎らは「モデルノギオ 」(byエスペラント語)とよぶ。モデルノギオかぁ、よい響きなり。

▲ 今和次郎の経歴などはみんぱくHPなどでみていただくとして。とにかく、この特別展。パンフレットからして楽しい。KONが(今、と書くとややこしいので以後ローマ字表記にします)が煙草を吸いながらかばん抱えて歩きながら何やら考えてはる(あとで説明をみたら銀座で「しらべもの」の最中らしい)写真の切り抜き。そこだけ白抜きのふきだしには「人のくらしの一切しらべ」と書かれてる。バックにはカフェの女給さんたちの店別ユニフォームの絵。前むき、後ろ向き、横向き。おもしろい。

▲KONはどんな時もジャンパー姿でポケットにはメモ帳を潜ませ、道ゆく人の服装、髪型、履物、持ち物に、歩き方・・・と、今だったらストーカーに間違えられるんちゃうか、と心配になるほど(苦笑)後をつけて観察、記録する。
こんなふうに大正の終わりから昭和のはじめにかけて、東京の街頭で通行人を「しらべて」はスケッチ。展覧会では、KONの膨大なノートに描かれたスケッチ、メモ書きを展示してあって、一点一点おもしろくて壁に張り付くようにして見てるもんやから、なかなか前に進めない。これ、写真(写真も少しあるけど)じゃないから余計に惹きつけられるんよね。

▲ おもしろいのはその眼のつけどころ。「主に美大出の面々によって編成された、いまでいうサブカル系の研究サークル」( 『今和次郎・吉田謙吉 東京考現学図鑑』泉麻人の言によると)ってことなんだけど。80年以上も前にそんな研究に励んでいた人たちがいたやなんて。

▲ 「公園で昼寝する人のスケッチ」寝姿から服装もじつに様々でたのしい。
「某食堂ノ器ノカケ方」ずらりと紙いっぱいに描かれた湯のみ茶碗の図は、さながら考古学の土器調査のようで可笑しい。どの部分にヒビが入って欠けてるか11パターンの紹介(1927年)→これを発表したあと件の食堂では器を新調したとか(笑)
「Collection of “Osime patterns”」と題したおしめの文様採集(1925年)
その頃のことやから、たぶん着古した浴衣を解いて縫ったんやろね。おしめの文様が並ぶさまが ほんまにきれい!

▲ 「ああ、このまま、今日はみんぱくに泊っていきたいなあ」(笑)ってほどだったので、ついついコーフン気味で書いたけれど、まだまだ書けてないことがいっぱい。(続きはぜひみんぱくに行って実物をみてほしいけど、行けない方は図録やネットでの紹介をご覧いただきたいです。)
わたしがいちばん心に残ったのは民家の調査に行ってるときのKONのスケッチで、田舎の家を描きながらそのそばで交わされる親子の様子や会話までメモしてるところ。まるで「そこ」に連れてってもらったみたいに、その家と家族と、吹く風や光まで浮かんでくるようで。

▲ すべてを詳細に調査することを「悉皆調査(しっかいちょうさ)」というそうだけど、KONの温かな眼差しは「調査」というよりはやっぱり「しらべもの」やなあと思った。それに、最後にみたKON70歳のときに庭で撮った「とし子夫人と」という写真。これがすてき。お二人ともいい笑顔で、ほんまに仲のええご夫婦なんやなあと、ほかほかした気持ちになった。

▲ 途中、館内の照明が一瞬暗くなり、パチパチしたかと思うと同時にものすごい大きな雷鳴が何度も響き。その後 雨宿り?か、入ってきた中学生ご一行様がにぎやかすぎたけど(!)まあ、その前にゆっくり見たし、ね。センセが「ほかに見学の方もいてはるから、しずかにするように」って繰り返してはったけど。君ら、そんなんどこ吹く風~たのしそうに隣の子としゃべり続けてたなあ。

▲外に出たら雨あがり。大雨にうたれた公園の緑のきれいやったこと!樹の下、ビニール袋をぬれたベンチに敷いて、葉っぱから雨水が滴り落ちるので日傘さしながら、すっかり遅くなったけど 一人おむすびランチもおいしかったぁ。
帰りはこの前来た「武内晴二郎展」 (←その日のことは ここに書きました)民芸館の売店をのぞき絵葉書買って。
前のバラ園を名札を見ながらゆっくりと歩いた。
ユーロピアナ、ゾリナ、天津乙女、パスカリ、ペーター・フランケンフェルトにマチルダ、ブラックティ・・・。この日はメモすることが一杯でわたしのノート(じつはメモずき、しらべものずき)は裏表紙まで ぐちゃぐちゃの字で埋まった。


* 追記
みんぱく チラシ PDF

工学院大学図書館
「今和次郎コレクション」

「今和次郎コレクション/ 欧州紳士淑女以外」
by bacuminnote | 2012-05-31 14:21 | 本をよむ