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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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おんなじことのくりかえし。

▲ しゃきしゃきという歯切れのよい鋏の音で目が覚めた。どうやらお隣に来ている植木屋さんらしい。親方の「あ、そこはもうちょっとこのへんから・・・」と、木の上の職人さんに言うてはる声がそのしゃきしゃきの合間に聞こえてきて、あれ?今年は早いなあ~と寝ぼけた頭で思いつつ寝床でぐずぐずしていたのだけど。
ちらりと見た目覚まし時計に「わあ、もうこんな時間!」と、あわてて飛び起きた。あああ。寝過ぎたり、寝不足だったり。ほんまむちゃくちゃな夏であった。(←もう過去形にしたい)

▲ よく砥がれた鋏のその規則正しい音は、いつもなら秋到来をかんじて身の引き締まるような思いがするのに。その日は何か落ち着かなくて煩わしく感じてしまったのは「秋一番」の剪定のはずが天候は「まだまだ夏」だったからか。それにしても、朝早くからすでにものすごく暑いのに、木に登って剪定の職人さんもたいへんやなあ・・などなど、いろんなこと思いながら、汗かきながら、珈琲を淹れた。ネルの中、お湯を注ぐや湯気と熱気。ぷくぷく泡といい香り。あ、けど、熱いのみものは朝の珈琲だけ・・という日がつづいてるなあ。ふうう。

▲ この前デパートに(涼みに)入ったら、なんか全体が茶っぽい。お決まりの季節の先取りディスプレイだ。ひんやり空調も心なしか低めになってるんとちゃうやろか。一歩外に出たら焼けつくような日差しやのに。騙されへんからね・・と思いながら服売場を歩いてたら、そのうち洗って洗って色あせたシャツ姿の自分がみすぼらしく感じ、やがて「やっぱりおしゃれは秋からやなあ」とか何とか。おばちゃんはおばちゃんなりに、買わへんなりに、あらら、いつしか気分は秋、になってしまってる。

▲ 今さら言うような事でもないけど、まちに出たら、テレビつけたら、ネット立ち上げたら、雑誌開いたら・・・とにかく何でも「購買」に結びつくように演出されているものね。
かつて信州の山暮らしの頃、そしてまだパソコンも持ってなくて、ネットで買い物なんて夢だった頃。車の運転が苦手だったわたしは友だちから「クミちゃんのは村内限定免許だね」とからかわれるほど行動範囲が狭かった。(正確に言うと村内でも無理、という所あり)
くわえて相方は超のつく出不精で。週一回一番近いまちまで買出しに車で20分余り、彼の運転で行くほかは、村の食料品(「村の百貨店」と呼びたいくらいいろんなものを置いてはった)と農協購買車(演歌鳴らして「走るコンビニ」やまびこ号!)で食材やら日用品を買っていた。あのころ「購買欲」を刺激されるといえば、若い友だちの履いてた雪に強い外国製の長靴や手袋。お向かいさんがまちで買ってきたという雪かきの軽いスコップ!本とCD以外はとにかく生活に必要なものだった気がする。

▲ ふと 『にぐるまひいて』 (D・ホール作 / B・クーニー絵 / もきかずこ訳/ほるぷ出版)という絵本をおもいだした。舞台は19世紀初頭のニューイングランド州の山村。お話は収穫の秋10月、とうさんが市場へ出かけるところから始まる。とうさんが刈り取った羊の毛を、かあさんがつむいで織ったショール、娘が編んだ手袋。息子がナイフでけずって作った白樺のほうき。家族4人一年かけて作り、育てた作物を荷車に積んで10日かけてとうさんはまちの市場にむかう。

▲ ようやく着いた市場でとうさんは、積み込んできたものを売るんよね。品物を入れてきた袋や箱も。荷物がぜーんぶなくなると最後は荷車も牛、手綱までも。それからとうさんは次の一年の暮らしに必要なものを買う。やかん、縫い針、ナイフ、それにペパーミント・キャンディも忘れずにね!暮らしの中で使う小さな道具たちと、ほんの少しの楽しみの品。

▲ 帰り道は身一つ。お土産を入れた鍋を棒に通してとうさんは来た道を反対にそっくりなぞって家族が待ちわびる家にてくてく歩く。
やがて冬がきて、一家はまた娘は編み物をし、息子は木をナイフでけずり、若牛のための手綱を編み、新しい荷車を作る。春になると羊の毛を刈り取り、楓の蜜を採って、野菜作り。そうして再び10月が巡って。そのくりかえし。

▲この話は「古きよき時代」のお伽話だろうか。
「時代」のちがう今こんな暮らしはとてもむずかしいけれど。時々おもう。食べるものだって、着るものだって、暮らしだって、本来はそれほど「変化」のあるものじゃなくて、おんなじことの繰り返しじゃないかなあ、って。自分のものぐさの言い訳するみたいでちょっと気が引けるけど。
余分なものをもたない生活に「変化」をせまってくるものは何なのか、購買欲を刺激してくるものは何なのか。自分がほんとにほしいものは何か。「今さら」だけど、考えてる。


* 追記
「購買欲」と広告といえば、前にここで「四季」について書いたとき紹介した 『先見日記』(駒沢敏器さん版06.8.21『日本の夏が終わる』)をふたたび。ぜひ。
by bacuminnote | 2010-09-13 14:31 | 開田村のころ