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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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わたしのえんそく。

▲ 目が覚めたときから、頭の奥のほうが何だかきんきんして重い気分で起きだした。こんな日に限って朝一番 聞き流せないような電話があったり。あああ。深ーいため息つきながら見る窓の外は抜けるような青空で。こういう時はかえってその晴天ぶりも、焦げてしまったパンも、相方や息子がああだこうだと熱心に政治の話をしてるのさえ癇に障る・・と、ひとり不機嫌オーラを出しまくっていたんだけど。昼ごはん食べ終わるや、この前から行こうか迷ってた所に「行ってくる!」と立ち上がった。(←おおげさ)

▲ なんてことはない。
電車に乗りさえすれば、ものの5~6分で万博記念公園には着くのである。夏の間休館だった民芸館の『民藝運動の作家達』にも行きたかったが、今回は「みんぱく」(国立民族博物館)で開催中の特別展『エル・アナツイのアフリカ アートと文化をめぐる旅』に。たったの二駅だけど、モノレールの高い大きな窓から見える景色もたのし。単純。こんなことやったらもっと早くから出て来ればよかったなあ。いや、朝はどこにも出かける気になれんかったのやから。出足遅くとも、やっぱり「いま」だったのだろう・・・とか何とか、ごちゃごちゃ思ってるうちに「ばんぱくきねんこうえん~」のアナウンス。

▲坂道降りてすこし歩くと太陽の塔が見える。
近くで見ると相変わらず圧倒的な存在感。かつて滋賀や信州から帰省するとき、高速を降りて車窓からこれが見えると「ああ、大阪に帰ってきた」と思ったもんだ。せやから、わたしにとって太陽の塔は「芸術」というよりふるさとみたいな感じ。
この日は保育園・幼稚園・小学生のにぎやか遠足の団体さんがここかしこに。汗ばむような陽射しの中、太陽の塔をバックに記念撮影やら、集合してセンセのお話やら。そろそろ遠足もおしまいの様子。たったか小走りの「元気あり余り組」から、ぞろぞろ摺り足「くたびれた組」まで。駅にむかう長い列がつづく。

▲「暑い!センセ、ジュース買(こ)うて」
「あかーん」
「なあ、センセぇ」
「あかん言うたらあかん。お茶でものんどけや」
「そんなん、とっくに飲んでしもた」
と、いにしえから繰り返された懐かしき不毛な会話(笑)が、今ここにも繰り広げられてて、思わず声あげて笑うおばちゃん。(←わたし)

▲ 子どもたちの去った平日の昼下がりの公園は中高年組で埋まる。三~五人くらいのおばさまたちのにぎやかなおしゃべりの輪。ゆっくり、ゆっくり杖ついて、あっちでとまり、こっちでとまって、空を見上げ木々に見入るひと。
そうして15分ほど歩くと「みんぱく」に着いた。中に入ると美術館や博物館特有のひんやりした空気にきもちが締まる。

▲ エル・アナツイは1944年ガーナ南東部の小さな町で生まれ大学で彫刻を学んだ後、ナイジェリアに移り、大学で教えながら作品を制作しているそうだ。展示は四つのセクションに分かれていて。「第1章:記憶を掘る」は木を素材にした彫刻やレリーフ。流木のようにも見えた木は日々の生活で使いこまれた臼を使っているらしい。
「第2章:歴史を紡ぐ」はチラシの写真にも使われているアナツイが2000年頃からはじめたというワインのコルク栓をおおうアルミのシールを再利用して織り上げた大きな「織物」たち。(たとえばチラシの作品『Red Block』だと510×334×2pの大きさ)空き缶の蓋やビールや酒瓶のふたを使った作品もある。

▲ 他に人がいないのをいいことに作品の真ん前で、少し引いた場所で、(会場がせまくて、余り後ろに引いて観ることができないのがとても残念)しばし立ちすくむ。『ブラック・ブロック』『オゾン層』『大地の皮膚』『アメモ(人間の顔)』『移動する大陸』・・・とひきこまれる。やがて作品に込められたものが、うまく言い表せないけど、ぐんぐん自分の中に迫ってくるようで。近づいたり離れたりして何度も見入った。

▲膨大な数のコルクを巻いたアルミのシールを伸ばし、穴をあけて銅線でつないだり、空き缶のふたを縫い合わせたりするのは、彼の工房にあつまる助手たちだとか。
『興味深いのは彼らの意識である。彼らはとくに美術作品の創造に関わっているという思いはない。時間から時間までラジオを聴きながら淡々と手作業をこなすだけなのである。彼らの中には工房での仕事が終わると、別の仕事に出かけていくものもいる。アナツイの美しい織物は、地元の人びとの生活に深く根ざしているのである』(解説リーフレット:第3章「創造のプロセス」解説より抜粋)
インタビューのビデオでも氏が、その柔和な笑み、額の深い皺も白い髪もジャズミュージシャンを思わせる風貌で「人とつなっがっていく満足感」を語っていたのが印象深く残っている。

▲ 第4 章は「作品の背景ー社会、歴史、文化」。行きつ戻りつの後、もう一回ぐるりとまわりたかったけど、足がくたびれてきてお終いにすることに。
外にでたらソフトクリームの看板が目にはいった。
無料休憩所の中は写真愛好家らしき小団体のカメラ談義が熱を帯び、おばさま三人組は「お教室」のあれこれ話から「今夜のごはん何にするの」話に到るまで、じつににぎやか。四人掛けのテーブルに一人のわたしは何だかさびし。だれともしゃべらず食べるもんやから(それでなくてもアイスを食べるのは誰よりも早いのに)あっというまにコーンだけになった。

▲ さて、その頃になると空の色のトーンも落ち、あたりは秋の夕暮れの空気が漂う。帰途、モノレールを待ちながら、ずっと思っていたのは『あてどなき宿命の旅路』(On Their Fateful Journey Nowhere)という作品とそのタイトルについて。家に帰ったら調べてみようと思うこともいくつかあって。かばんからごそごそノートを出してるときに「そういえば」と、いつのまにか頭痛が治っていることに気がついた。きっと「えんそく」のおかげやね。


* 追記 *
2010年09月21日 読売新聞/関西発トピックス動画(←そのうち消えるかもしれませんが、会場の様子がわかります)
by bacuminnote | 2010-10-12 19:53 | 出かける