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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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そんな季節だった。

▲いつものように買い物に出ると、道中行き交う人たちが下げてる某ドラッグストアの大きく膨らんだ袋に、スーパーの売り場でそこだけごっそり空っぽになった棚に、きもちが一気にしぼむ。それでも野菜をカゴに入れながら「今日も寒いなあ」の後「ここでこんなんやから向こうはもっと冷えるんやろねえ」「ほんまになあ・・」と、しみじみ話してはる声が耳に入ってきて、眉間の皺が一瞬緩むのをかんじる。

▲わたしだけじゃなくそばにいた人たちも東北の凍えるような寒さをその時 思ったにちがいない。
けど、もしかしたら買いだめの人と「向こうはもっと冷える」の人は重なってるかもしれへんよなあ・・・などと思い、溜息。そんな風に思ってしまう自分にも溜息。

▲ 「疑心暗鬼」とは暗闇というだけで疑い、鬼がいるかのように見えるというたとえだが、暗闇の中ほんとうに「鬼」はいないのか。
現実に起こっていることの上に一枚(時に数枚も)ベールをかぶせたような報道の前で、訝り、憤り、ほんとうの事が「わからない」という不安に唸る。そして、何もできない自分が歯がゆい。いや、今は何もできないからこそ、せめて現実から眼をそらさず「知ろうとする」「考える」ことを放棄しないでおこうと思ったり。最後はやっぱりこれ以上もう被害が大きくならないように、不安や痛みを抱える方たちがゆっくり休める場所が一日も早くできますように、と願うばかりだ。

▲ この間からぶぉーんと音が大きくなったり、突然静かになったり、あぶないなあ、と思っていたうちの冷蔵庫がついに動かなくなった。義父母のときからのものだし、仕方なく(こんどはちょっと小さめのサイズに)買い換えることにした。
相変わらずまぶしいくらいの照明の量販店(←この明るすぎる照明、なんとかならへんのやろか)は、春の三連休ということもあって多くの人で賑わっており、中でもテレビ売り場のレジは満員で番号札を持った人たちが列をつくっていた。

▲ 広いフロアに数えきれないくらいにたくさんのテレビが並んで、その大きな液晶画面に地震や原発のニュースとバラエティー番組が同時に音もなく映しだされる。家族づれやカップルが品定めをするのに画面を眺め、見比べている。それはとても不思議な光景だった。なんだか胸のあたりがざわざわして早々に用事をすませて店を出る。

▲ 帰途、いくつかのマンションの前に引っ越しトラックが連なって停っていた。きびきびと家具を運ぶプロの仕事に眼を奪われ、しばし立ち止まる。
そうだ。そんな季節だった。地震と原発のことで頭の中がいっぱいで忘れそうになっていたけれど、あと10日もすれば4月なのだ。うちの子も進学の春。

▲新しい年になって、わずか3ヶ月の間に世界のあちこちで、次々といろんなことが起きて。息子がネットで流れる海外ニュースにベンキョウもそっちのけで 深夜までかじりついていたのがずいぶん前のことのように思ってしまう。
若い感受性が捉えた社会の矛盾や欺瞞も、権力の暴走も。自然災害のむごさ、原発事故の恐怖。そして人が結集する力の大きさも。しっかりしっかり覚えていてほしい。
いつだか読んだ本に紹介されていた句をひとつ。
「生きたまへ五月は青き風の色」(深代惇郎)
by bacuminnote | 2011-03-21 13:42 | 本をよむ