いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

もどるのではなく。

▲冬の空の青がとてもきれいな朝。
洗濯日に洗濯日和、というのがうれしい。毎日山のような洗濯してた日はすでに遠く、いまは隔日に洗えばじゅうぶん。ふたり二日分の決まった数のタオルとパンツとシャツを干す。こうして庭に立ち、忘れた頃に青空を横切ってすいーっと走ってくモノレール4両 眺めたりしながら、あたりまえのように洗濯物を干してるけれど。

▲この間こんなことツイートしたら、北に住む友から「え、外に干せるんですか? いいなぁ。」とリプライがあって、はっとする。
そうだった。信州から大阪に越してきた年の冬「家の外に干せる洗濯物」と「スカートで家の外を歩ける」のにカンゲキしたことを思い出す。

▲ いま、指折りかぞえてみたら、あれからもう10回目の冬だ。
寒さに強かったはずが、毎日「寒い、寒い」とぼやきながら暮らしてる。日々の雪かきに耐えた腰もよわくなったし、パン屋の早寝早起きの生活スタイルもすっかりくずれて。どんどん自分のからだや記憶から「あのころ」が遠くなってゆくようで。時間がすぎてゆく、というのは そういうことかもなあ~と思ったり。
けど、やっぱりちょっとさみしい。

▲ そう言えば、
以前はパン屋をしていたことを告げると「今も家で焼いてるの?」と聞かれることが多いんだけど。
パン屋時代はよそのパンを食べる機会が圧倒的に少なくて。(近くにほかのパン屋がない田舎の暮らしだったことも大きいが、売れ残ったりすると自家消費が必須)店を閉めたあと、パン好きのわたしは「待ってました」とばかりに、かねてから食べてみたかったあの店の、この店のパンを嬉々として買いに行ったり取り寄せたりして、自分で焼くことはまるで頭になかった。それは相方もいっしょで。近所でうまいパンもみつけたし、それで満足してた。

▲ それに、わたしは自分でパンを焼かなくなってからもうずいぶんになる。
その昔はわたしが家のパン係だったんやけどね。パン屋になる前(1980年代はじめ)は、数少ない天然酵母パンの本を探して読んだり、講習にも出かけたりして試行錯誤しつつ 小さなオーブンで焼いていた。たまにはおいしく焼けることもあったけど、発酵がうまくいかないこともあって。出来上がりは不安定だった。でも「ホームベイキングってそんなもの。それに天然酵母なんやからむずかしいねんで~」とか、なんとか うそぶいていた。

▲そのうちジンセイの転機がやってきて。カメラマンをやめた相方と、天然酵母のパン屋をしようということに。
でも、こんどのパン係は家族に食べさせるだけやないからね、ちゃんとパン屋で修行もして、何より研究熱心で緻密な仕事をする相方の役割となり、ええかげんで大雑把なわたしは自然の流れで(苦笑)雑用係とエイギョウ担当となったんよね。(このことは前にも書いた気がする。くり返しですみません~)

▲ せやから。
分割するときのパン生地の重さ~プチパンは何gで、グラハムは何gとか~、地方発送のお客さんのご家族のこと、パンの好み、到着時間帯等々。それに宅配便の番号(いまは郵便番号でデータをとるけど、以前は地域別の番号を伝票に手書き)なんかは、結構しっかり頭の中に入ってて さっと浮かぶんやけど。

▲酵母の仕込みやホイロ(発酵器)や窯の温度調整など、すべて相方まかせで。たまに成形を手伝うことになると、打ち粉なしではできん下手くそやったし。(→ベテランは掌から油が出てるんか?と思うほど、何もつけなくても生地が手にくっつかないのです)

▲ ま、そんなわけで、大阪にもどってきて、晴れて?よそのパンも買って食べられるようになり、昔よく買ったパンに再会したり、いろいろおいしいパンにも出会ったけど。
そうこうしてるうちに、なつかしく思い出すのは相方の焼いたパン、つまり「麦麦」(ばくばく)のパンなんよね。とりわけわたしが好きだったグラハム(全粒粉)をたっぷり使ったパンやライ麦とキャラウエイシード入りの硬いパン。この郷愁は「あちこちでごちそう食べさせてもろたけど、やっぱり家で食べるご飯が一番やわ~」という感じに似てるかもしれない。

▲ 相方は相方で、かつて自家用によく作った厚めのクラストで焼いたピザが好きなんだけど、市販品ではなかなか見つけられないので、久しぶりに食べて(焼いて)みたいと思ったらしく、大阪に戻って8年目にして、酵母をあらたに起こして小さいオーブンにてホームベイキングの再開となった。

▲そんなわけで、この頃はときどき台所になつかしい酵母のにおいが満ちる中、バタンバタンと手捏ねしてる音が聞こえて、頬がゆるむ。(←あ、捏ねてるのも焼いてるのも相方。わたしはやっぱり雑用係と「食べる」専任!)

▲それでも、パンはすきだから今も時々よそのパンも買うし、パン屋には おもしろい人がようけ いてはるので、よくブログやツイッターを見たりする。
 広島の『deRien』(ドリアン)さんのパンを初めて食べたのは、福岡・糸島の山の中に暮らす友人(知る人ぞ知る”Small Valley Dessert Company”)が「おいしいから」と送ってくれたんよね。

▲パンはしみじみと旨かった。それに石窯焼きのパン特有の焼きかげん、焼き色もええかんじだった。(←これは彼女とわたしの共通して「気になる」とこのひとつ)で、そのパンもさることながら、彼女から店主の田村さんのプロフィールや、氏が以前中国新聞に連載してた記事を教えてもらって、もういっぺん感激。

▲次は自分でも注文したもののその後はそのままになっていたんだけど、引き続きブログ「焚き火を囲んで眠るような話」やツイッターは読ませてもらってる。そしたら、去年はなんと秋から店を一年間休業してフランスに修行に出る、という報告に、おどろいたり、さすが~と思ったり。

▲そして渡仏のあいだお店は一年限定で志をおなじくするパン屋さん(『Pano organika』)が営業されている、と知る。(この発想 とてもおもしろいし、あとの方のパンも、ええかんじ。ええ焼き色。うまそう!)

▲で、そんなこんなの話をツイートしたりしてるうちに、そういえば、と新聞連載記事を思い出しみんなにも教えてあげようと改めて読み返したら。最終回にこんな記事にはっとした。
フランスの老舗のパン屋『ポワラーヌ』の話。

僕の大好きなフランスのパン屋「ポワラーヌ」は、何百年と変わらぬ薪でパンを焼く製法で、世界で一番のパン屋になった。結局、おいしかったのだ。
店主はそれを「レトロ・イノベーション」と言った。古いやり方で革新するという意味だ。(中略)古い方法で、戻るのではなく、前へ進んでしまえばいい。
実際にできる。
食べ物も、道具も、生活も、昔ながらのやり方の方が質が上がる。人の手間ひまが、それだけかかっていたからだ。
技術を人の手に取り戻し、古い方法で新しい時代をつくる。】

(中國新聞2007.9.13『私の口福 旅するパン屋』最終回~田村陽至~より抜粋)
※ 記事の上にあるbackというところクリックすると前回のエッセイが読めます)

▲エネルギーの話になるときまってだれかが言う。
「そうは言うても、昔にはもう戻れないし」
この一言で、その場はちょっとしんとなる。みんなの頭のなかには今の「便利な生活」が何もかも一気に「不便な生活」に~そんな逆戻りの図 が浮かんでるんやろね。そして、思考停止に陥ってしまったりする。

【古い方法で、戻るのではなく、前へ進んでしまえばいい。】
そうか。その手があったか。
twitterでSさんがすぐに【前進ということばがちがうことばにみえてくるような、前へ進むという話しでした。】と返してくださったけど、ほんまにそう!
むくむくと力がわいてくるのを感じる。



* 追記
その1)
モンゴルに二年間暮らしたというドリアンの田村さんのブログを読みながら、ウチがパン屋のとき、モンゴルに暮らしてる若い日本の女の子がよくメールくれたことを思い出していました。たしか草原の馬乗りをしてたパン好きの子。あれから、どうしてはるんやろなあ。
もし、もしも、まだここ読んでくれてはったら、うれしいです。
Wちゃん元気にやってますか?

その2)
このあいだ、久しぶりにCDを買いました。 Nils Frahm (ニルス・フラーム)のScrewsというアルバム。
Nils Frahmのピアノは前からときどき思い出したようにyoutubeで聴いていたのですがCDを買うのははじめて。

これまで意欲的な作品を発表してきたニルス・フラームがある日左手の親指にボルト4本を埋め込むほどの大怪我を負ってしまったそうです。知りませんでした。
ピアニストにとっては致命的ともいえるアクシデントですが、彼は(親指以外の)「9本の指で9曲の短い楽曲を作ろう」と、一日一曲づつレコーディングしたのがこのアルバムやそうです・・・などという説明は余計なくらい。
しずかで一音一音しみいるようなピアノです。

その中の一曲"you"を~

[PR]
Commented by lapis at 2013-02-10 04:27 x
bakuさん、こんばんは。
パン屋さんになったきっかけやらパン作りのもろもろのお話、楽しく読ませて頂きました。
私もず~っと昔に天然酵母のパンを焼こうと四苦八苦していた頃がありましたが、なにしろ不精なのと神戸なもので近くに美味しいパン屋がたくさんあったもので、結局「餅は餅屋」に任せるのが一番と言う結論に。
でも、幼い頃の焼きたてのパンの匂いは今でも忘れることができません。
bakuさんとパンの好みが似ているかもね。
もちろん、フランスのパンは大好きですが、グラハムやライ麦の重いパンやキャラウェイシードのパンも大好き!
イギリスでいいのは、いろんな国からの移民の人たちがいるので、いろんな国のパンが食べられることでしょうか。
帰国した時にも懐かしいパン屋や新しいパン屋のパンを食べまくっていますよ。
イギリスにも美味しいパン屋はけっこうあるのですが、バゲットなんかは粉が合わないみたいで、穴がまったくないバゲットとは丸っきりの別物がバゲットとして売られていることが多くて、がっかりです。

『deRien』のパン、もう見るだけでWow! ですね♪!
Commented by baku at 2013-02-10 16:12 x
lapisさん。
「おいしいもの」の話はたのしいですね~
バゲットはやっぱり粉と塩やろなあ、と思いますね~(あたりまえやけど・・)。
わあ、書いてると食べとうなるなあ。

若いときは食べることに力入ってるとこあって、あちこち食べ歩いたりしたけど。いまはもう、自分のすきなもの、すこし(あ、少しやったら足りんか?)あったら、それでええなと思うようになりました。

で、何が好きか?とかんがえると、旨いご飯とパンなのでした(苦笑)あ、あとビールとワインとたまにウヰスキーもほしいけど。

川上弘美さんも食べることや つくることがお好きなかたのようで(まえに『考える人』って雑誌に料理してはるとこ載ってて、かっこよかった!)『もの食うて機嫌なほりぬ春の雲』なんて俳句読むと、ほんま、ほんま~とカンパイしたい気分になります。
by bacuminnote | 2013-01-26 16:00 | 音楽 | Comments(2)