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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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前から7列目 左から3番目。

▲朝いちばんに珈琲を淹れたあとは、続いてヤカンいっぱい番茶をわかす。その熱気が暑いとぼやきながら、ヤカンごと洗い桶で冷やす〜というのがこの夏の朝の日課で。今日もお湯をわかしながら珈琲を飲んだけれど、湯気たちのぼる台所がちょうどよいくらいに 肌寒い朝だった。
もしかしたら、このまま秋になるのか、じき又「残暑」に戻ってゆくのか、わからないけれど。夏の間じゅう「しんどい」ことも「できない」ことも、言い訳はぜーんぶ「暑さのせい」にしていたもんで。この涼風のここちよさがうれしい反面「もう文句は言わせへんからね」と夏から言い渡されたみたいで。ちょっとこまってる。

▲この間いつもの書店に寄ったら“お気に入り棚”の前で書店員のnさんがいてはった。「おひさしぶり〜」の挨拶のあと「じつは」と今月いっぱいでこの店の勤務が終わること、来月からは別の支店に異動がきまった旨聞いておどろく。
3年前のこと。
この書店にはよく寄っていたのだけれど、長居するのはたいてい絵本や児童書のフロアで、ある日ぶらりと入った階上の「文学」の棚に『昔日の客』(関口良雄著・夏葉社刊)を見つけてびっくりした。
じつはその本、ここに置いてあるはずがないと(ごめんなさい!)善行堂ネットショップで購入。でも近くのお店に置いてはるんやったら、次に出た夏葉社の本〜『星を撒いた街』は迷わずここで、と決めた。

▲ 発行のその日がきて、うきうき出かけて行ったら、果たして目当ての本はまだ入ってなくて、がっかり。(←知らんかったけど、本の入荷システムってけっこう複雑なんよね)でも、そのとき応対してくれた若い女店員さんが感じよくて。7日頃(入荷)というのを「七夕さんの頃には入ります」という言い方 しはったのも印象的で。そして、彼女が入荷日の確認をとりにレジに行って、一緒に登場しはったんが、担当のnさん。

▲ レジからこっちにむかいながら「え?どこ?どの人?」というnさんの声が聞こえて、こんなことでわざわざ出てきてくれんかってもええのに、と恐縮しつつも頬がゆるんだ。
とにかく、みじかいやり取りの中にも 書店員さんの「本が好き」がじんじん伝わって(←においでわかる)その日、本は買えなかったけど「ええ棚」発見!と、はずむような気もちで家に帰った。
で、さっそくその旨ツイートしたら、夏葉社の島田潤一郎さんが《もしかしてそれは△書店さんではないですか?文芸担当の方が弊社のことをものすごい応援して下さっています。違っていたら、すいません…》とお返事。

▲えーっ!!わたしのツイートに書店名は一文字伏せ字にしてたのに。大阪というだけで、すぐにどこの書店かわかるやなんて。島田さんってすごいなあと思った。一人出版社で、注文受けるのも書店への営業も自分で歩いて回ってはるからやろか。いや、やっぱりこのひとも又誰よりも「本が好き」やからかもしれへんなあ、とちょっとドキドキしながら「もしかして、のそのお店ですよ〜」と書いたら、その後
《鳥肌ものです。その担当氏は本当に、本を愛されている方です。その方がいらっしゃる限り、△書店さんの棚は、文学ファンの期待に応えてくれはずです》とつづきリプライがあったんよね。

▲ いやあ、それにしても。
本がつないでくれた人やものが、これまでどれくらいあったことやろ〜しみじみと思いながら買った本(息子1の誕生日プレゼント)を手に映画館にむかう。
こことも又今月いっぱいでお別れなのだ。以前から「もしかしたら・・」という噂は何度か聞いたこともあったけど、ついに閉館がきまったという。

▲90席のこじんまりした試写室みたいないい感じの部屋。かかる映画もすきな作品が多かったし。方向音痴のわたしが迷わず一人ふらりと入れる唯一の映画館だったんよね。
ちょっと早かったからか、館内はわたしともう一人だけで。いくらなんでも二人はさみしいなあと思いながら、いつも通り前から7列目左から三番目の席に腰を下ろす。

▲この前きたときには『ハンナ・アーレント』を観たんだった。そういえば『海炭市叙景』もここで(そのときのブログ→)。相方は最近タルコフスキー特集を観て来た。信州の山暮らしのころは映画館が遠すぎて連れて行ったことなかったから、息子2が11歳にして映画館デビュー(笑)したのもここだったんよね。・・と思いにふけってるうちに次々お客さんで席が埋まった。
多分これまでわたしが来た中でいちばん多い観客数。その賑わいがうれしくて さみしい。
おとなりの女性二人組も、いつもこんなに入ってるとよかったのに。あんなん観たねえ、☓☓もここやったねえ。さみしなるねえ〜と話してはるのが聞こえて。ほんまにねえ〜

▲ この日観たのは『おじいちゃんの里帰り』(予告編→というドイツ映画。
1960年代半ば家族の将来のためにトルコからドイツへと単身移住したおじいちゃんのフセイン。やがて家族も呼び寄せ、その家族も独立して、ある日フセインは子どもも孫も、家族全員集まった席で「みんな揃ってトルコに行こう」と提案〜(というか、半ば強引に押し切るんよね)一見なんということもなく、平凡な家庭だけど、その実みんなそれぞれに問題は抱えており。

▲息子らは失業や離婚の問題を。孫のチェンク(6歳)は父がトルコ人、母はドイツ人。おじいちゃんは「おまえはトルコ人」と言うけれど、学校でトルコ対ドイツのサッカーの試合の応援をめぐって友だちとけんかになって。「いったい自分は何人なの?」と悩み始めてる。おじいちゃんのことが大好きな大学生の孫娘にはイギリス人の恋人がいて妊娠していることがわかり、悩んでいる最中で。

▲ そんな中でおじいちゃんの「トルコに行こう」という誘い。しかも「トルコに家を買ったから」と言い出すんよね。おじいちゃんの故郷はトルコでもイスタンブールのような都会ではなく、ドイツから3000キロも離れたアナトリア地方という田舎なんだけど、そこの黄色いおんぼろバスにみんな乗って旅に出る。
映画はこの一家のむかし〜トルコでの暮らしからドイツに移住してからの、生活習慣、言語や文化のちがい、とまどいを、現在の生活を交互にユーモラスに時に皮肉もこめて描く。

▲戦後の労働力不足にドイツで「ゲスト労働者」と呼ばれた人たち。まるで家畜のような入国前の身体検査の様子がニュースフィルムで流れる。いまのドイツにおけるトルコ系移民への労働問題や差別の深刻な問題は劇中には出てこないんだけど、合間に挟まれたそんな映像に深い問題がかいま見える。

▲ そうそう。トルコでは旅立つ人を見送るとき、うしろから水を道端に撒くんよね。これは水が蒸発するぐらい、早く戻ってくるようにという意味があるそうで。映画でもフセイン一家がドイツに移住するとき、トラックの荷台に家族5人と荷物積んでの旅立ちに、近所の人たちや親しい友だちが水の入ったバケツを持って集まってきて、水を撒くシーンがあって胸がつまった。
さて、8月もあと3日。映画館の閉館も、本好きのひとの異動も。さみしいけれど。心のなかで、映画で観たように水撒いて見送りたいなとおもう。
すぐまたもどってきてくれますように。


*追記
その1)
今日の新聞(web)によると、この映画館の閉館で《フィルムで上映する主要な映画館は、府内から姿を消す。》《愛知や三重、徳島などからも熱心な映画ファンが足を運んだ。》とあった。

その2)
トルコとドイツといえば、前に観た『そして、私たちは愛に帰る』(ファティ・アキン監督)がとてもよかった。この間思い出して又観たところです。

その3)
今日は本屋さんのことだけで、本のこと書けなかったけど、この間図書館で借りた『1969新宿西口地下広場』という本にドキュメンタリー映画『'69春~秋 地下広場』(大内田圭弥監督)のDVD付録がついていて、先にこれを観ました。1969年2月頃から、毎土曜日に新宿西口広場に始まった「フォークゲリラ」を中心に広場の人びとを記録したものですが。

深く残ったのがその名も「広場」という言葉でした。ここに集まった人たち、学生も労働者も、サラリーマンも、皆よくしゃべってる。運動に反対にしろ賛成にしろ、みな真剣に議論しており。そして、そのうち取り囲んでる人らも加わって。それがごく自然な感じで広場のあちこちでみられ、驚きました。ナレーションにこんな一節が。

《昔、ギリシャに広場があった。人びとはアゴラと呼んだ。事が起きるたび、人びとは家の中から外に出てアゴラに集まり、それぞれの心ぶつけあったという。対立する意見が、ありのまま闘わされたにちがいない。たくさんの人びとが、それを聞き、参加していったにちがいない。全体の意思はそこで決められた》

《アゴラは自立する人たちによってつくられたのであろう。アゴラは、自立する人たちを新しく生み出していったのであろう。広場は人間たちが創るものだ》
(同書p143映画『採録シナリオ』大内田監督本人による〜)


その3)
今日はこれを聴きながら。
King's Daughters & Sons - Lorelei
by bacuminnote | 2014-08-29 12:20 | 映画