いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

「やけたかな」「まあだまだ」

▲ 暮れからお正月にかけての「いつもとちがう」時間があるせいか、休み明けのしゃんとしない感じがずーっと続いてるせいか、いや歳のせいか。なんだか1月は長い。
この間は買い物に行く気もしなくて、お葱だけはたっぷり刻んで買い置きの豆腐で湯豆腐にしたら、相方が一口食べて「うまいなあ」としみじみ。二口食べては又「やっぱりうまいなあ。豆腐は」と言う。「たまに褒めたと思ったら、豆腐のことやんか〜豆腐作ったんはわたしとちゃうし」と言い返しながらも、じつ言うとわたしも同じことを思っていたんよね。

▲ 以前読んだ本に《嗜好とかいて「老人の口に旨い」》とあって。(上野千鶴子『ひとりの時間に』)「嗜」という字のみごとな読みにそのときは「うまいこと言わはるなあ」くらいに思ってたけど、今はもう心から納得。ってことは、つまりウチの食卓もだんだん「老人の口に旨い」ものに変わってきてる証拠やろか。

▲ この間ツイッターで「グルテンフリー・エキスポ」というイベントがカナダで開催されていることを知った。グルテンフリーとはグルテン(小麦に含まれるたんぱく質の一種)を含まない食品のことで。すごいなあ。そんなものが開かれてるんや、と驚いた。で、調べてみたら、以前は小麦アレルギーの人などを対象につくられたものだったのが、最近は健康や体質改善のためにグルテンフリーのパンやお菓子が欧米でも、日本でもちょっとしたブームらしい。

▲ そう言うたら、ここにも何度か書いている(→)1990年 親子三人でカナダ横断旅行の目的のひとつは(主に天然酵母の)「パン屋訪問」だった。事前に在日カナダ大使館にその旨手紙を出したら、各地のパン屋紹介の記事コピーとはげましのお手紙を送って下さって。その記事の中で一番気になったのがこの「グルテンフリー」のパンだったんよね。
そもそもパンに適してるのが強力粉といわれるのはその含有グルテンが多いからで、グルテンのないパンってどんなんやろう?と思ったのだった。

グルテン (gluten) は、小麦、大麦、ライ麦などの穀物の胚乳から生成されるタンパク質の一種。胚乳内の貯蔵タンパク質であるグリアジンとグルテニンを、水分の介在下で反応させると結びついてグルテンとなる。弾性を示すため、グルテン前駆体の2種のタンパク質を含む小麦粉を水でこねるとグルテンが生成され生地に粘りがでる。パン生地などが発酵した時に気泡が残るのも、生地がグルテンによって粘りをもっているためである。(中略)
小麦粉はタンパク質の含有量の多寡により強力粉、中力粉、薄力粉に分けられる。製パンなど粘りを必要とする用途ではタンパク質を多く含む強力粉が使われる
》(wikiより抜粋)

▲ 当時日本では乳製品・卵の入っていないパンを焼く店さえ少なかったので、ウチにもアレルギーをもつひとやその家族の方たちからよく問い合わせがあったけど、まったく小麦を使わないパンというのは知らなかった。
さて、あちこちのパン屋を訪ねたり、ときにその目的もすっかり忘れての(苦笑)長旅の終盤、バンクーバーでようやく資料にあったグルテンフリー、イーストフリー(←化学イーストを使ってないという意味)のパンを作ってる店を訪ねる。

▲やっとのことでみつけたと喜んで「自己紹介文のカード」(英語がおもうように話せないので、前もって友人に"日本の田舎で小さな天然酵母パンやをしています〜”というようなことを英文で書いてもらってた)をみせたら、なんと経営者が変わってしまっており。目的のパンには出会えなかったんよね。心底がっかりして店を出ようとすると、従業員さんが「あなたたちのいう、そういうパン売ってる店があるよ」と近所の自然食品の店まで案内してくれた。サンキュー!(←わたしらが自信をもって言えた言葉)

▲ 件のパンは玄米粉100%で焼いていて、パウンド型の小ぶりのパンながらずっしりと重く(←グルテンがないので膨らまないから重くなる)1kgの表示におどろく。
すごいパンやなあ。どんな人が焼いてはるんやろなあ。と言うてたら、連れて行ってくれたひとが「その店、海のそばのいい所にあるから一度行ってみたら?」とすすめてくれはって。
さっそく店の前の公衆電話から電話をする。わたしの英語が通じたんかどうかわからんかったけど(苦笑)「来てもOK」と言うてくれてはるみたいやったので、バスでかの地にむかった。(←1時間半もかかった・・・)

▲店主さんの話ではそのパンは、増えてきている小麦アレルギーの子どものために焼いているそうで。カナダでもナチュラルイースト(天然酵母)でパンを焼いている店はごく少数で、グルテンフリーのパンとなるとほとんどなくて、各地に発送しているとのことだった。
そのときは、アレルギー事情というのもよく知らなかったし、小麦の国カナダで小麦のアレルギーか〜たいへんやなあと単純に思ってた。(今ならもっとつっこんだ質問ができたのになあ、と詮ないことを思ったりするが)

▲さて、カナダの旅から帰り(移住を目論むも無理かも〜と悟り・・苦笑)わたしたちは翌年滋賀から信州に転居。
そしてその次の年には思いがけず二人目の子が生まれた。上の子のときから13年後の出産。ずっと親子3人と思ってたから「新人」の登場はうれしかった。
思いがけないといえば、二ヶ月過ぎた頃からこの子に皮膚炎が始まって、それは日に日にひどくなってゆく。
ある日、おもいきって大きなまち(松本)まで出て病院で受診したら「この月齢の子だと牛乳や卵が引き金になることが多いけど、この子はたぶん小麦だね」と言われたのだった。
まいった。なんせパン屋なのである。というか、ドクターによれば「だから、こそ」のアレルゲンというわけだった。

▲ 母乳だったので、まずは赤ちゃんもわたしもパン焼きの仕事場に入らないこと(つまり、わたしはベイキングの現場の仕事をしない)小麦を一切食べないことに。
それだけのことをしてもなお、職住一緒の環境だから(粉が舞っているので鼻から入る)母子とも小麦の摂取ゼロというわけにはいかない、らしい。
いやあ、もうこの頃のことは山盛り話すこと思うことがあって、今でも思い出すと胸がいっぱいになる。たぶん一番しんどい思いをした子どもも、ほかの家族もみんな、それぞれにほんまに大変な時間だったと思う。
でも、それゆえに知り得たことも、出会えた人たちとの深い温かなつながりもあって。それは今のわたし(たち)の芯のところに在りつづけてる。

▲ 小麦ってね、パンだけでなく、スパゲッティにうどん、ケーキに和菓子、ちょっと想像のつかないところでは醤油にまで使われており。小麦除去の食事は(ほかにも除去していたものも多かったから)なかなかきびしかったんだけど。その話はまたべつの機会に書くとして、きょうは本の話を。
田舎暮らしで近くに小さい子もいないし、冬の長いところだったから、外遊びの期間がほんとに短くて。何より痒いのをちょっとでも紛らわせてやりたくて、時間があると上の子も(かれは親のように弟の世話をよくしてくれた)わたしも絵本を読んでやった。

▲たくさんあった絵本も息子1が大きくなって殆ど人にあげてしまって手元になくて。友だちやパンのお客さんたちがお子さんの絵本(産着に布おむつも!)を送ってくれはった。
松本への病院通いの帰りには必ず市立図書館に寄って(村には図書館も本屋もなかったので)段ボールいっぱい借りて帰った。
ところが、それまで気にもとめなかったけど、絵本ってパンやお菓子の登場率がものすごく高いんよね。
今ざっと思い出せすだけでも『しろくまちゃんのほっとけーき』『からすのパンやさん』『おだんごパン』『ぼくのパンわたしのパン』『はんぶんあげてね』・・・そうそう『ぐりとぐら』の「かすてら」から、かの『アンパンマン』にいたるまで。そして、どの本も絵から文から、おいしそうなパンの焼けるにおいがぷーんと漂ってくる。

▲ けど、パンを食べたことなくても、ケーキの味を知らなくても、息子は「よんで、よんで」とこれらの本を繰り返し持って来てたから。
もしかしたら読みながら、辛かったのはわたしだったのかもしれない。ドクターのいう「小麦粉の舞う中で」妊娠中の仕事や、生まれてからも仕事するそばで寝かしてたせいやろか?妊娠中にパン食べ過ぎたんやろか?という思いもつねにあったし。
でも、根が食いしん坊やし、子どものためだけやなく、自分も食べたかったから(苦笑)小麦のかわりに雑穀粉や米粉、さつまいもやかぼちゃを使って、いろいろ工夫してパンもどきや、お菓子を焼いたんよね。

▲そのころ息子のお気に入りは雑穀粉+米粉のパンケーキ。
『しろくまちゃんのほっとけーき』を開きながら「ぽたあん どろどろ ぴちぴちぴち ぷつぷつ」「やけたかな」「まあだまだ」と一緒に声出して、フライパンで何枚も焼いたっけ。絵本にあるような小麦粉も卵も牛乳も使ってないから、ぺたんこのパンケーキだったけどね。焼きたてに 少しはちみつやメイプルシロップをとろーりかけて「おいしいなあ」「おいしいねえ」と食べた日がなつかしい。大人になった息子にその味の記憶はもうないかもしれないけど。今日これ書いてて、久しぶりにかれの小さいときのアルバムをみてたら、食べてるとこの写真が多くて笑ってしまった。って、わたしが写してるんだけど。たぶん何か食べてるときの顔がかわいくて、いとおしかったんやろなあ、と思う。

▲アレルギーいうてもね、ほんとうにさまざまで。皮膚炎として出る場合からアナフィラキシーみたいに皮膚から粘膜、呼吸器へと次々症状が広がってゆくものまで。
カナダで訪ねたパン屋さんみたいにグルテンフリーのパン焼いてはっても、同じ工房内で小麦使ったふつーのパン焼いてたら、それだけで反応起こす子もいるし、パンケーキの甘いシロップもだめな子もいてるしね。大人になった息子は今はパンもパスタもOKだけれど、食物アレルギーで食べたら「絶対あかん」ものは依然としてあるし。気を抜けないのは変わらない。

▲でも、でも。それでも言いたいです。
食べられるものが限られている子どもたちも、外食できない子どもたちも、せめてお家ではゆっくりたのしんで食べる時間をすごせますように。限られた食材でご飯つくったり、おやつ拵えたりするのは大変やけど、お母さんやお父さんも「おいしいもん」をたのしんで作って食べてほしい。そして何より、親が子どもとそんな時間をゆっくりもてる仕事や社会を、と願います。



*追記
その1)
食物アレルギーとは
「食物アレルギー」という言葉は、多くの場合は食べてからすぐに症状がおきる「即時型アレルギー」の意味で使われます。症状は、食べた直後から1時間後、遅くとも4時間以内に見られます。じんましんや紅斑(皮膚が赤くなること)、浮腫(むくみ)が一番多い症状ですが、咳・喘息発作、嘔吐・腹痛・下痢などが見られることもあります。血圧が下がって意識が遠のいてしまうアナフィラキシーショックが、一番重い症状です。》(アレルギー支援ネットワークHP→より抜粋)



その2)
「アトピー性皮膚炎と食物アレルギーはちがうの?」と、時々周囲の人から聞かれるのですが。
ここに小児科の医師がこたえた記事がありました《Q :アトピー性皮膚炎と食物アレルギーとは違うのですか?A:木村彰宏(いたやどクリニック 小児科部長)〜もぐもぐ共和国HP〜》→


その3)
カナダといえばこの方です。
Neil Young - Mother Earth (Live)→
[PR]
Commented by lapisland at 2015-01-26 22:41
bakuさん、こんにちは。
年取ってくると、ホント、さっぱりしたものが一番美味しく感じられますよね♪
そうか、嗜好の「嗜」は「老人の口に旨い」なんですねぇ。
ところが海外にいると、病気の時も年を取ってきても、
そのさっぱりしたものが手に入りにくいので、本当に困ります。
若い時はフレンチでもイタリアンでもいいのですが、
年取ってくると、日本の老人にはまったく向きませんワ。

前にも時々息子さんのアレルギーのことが文中に出てきて、
なんのアレルギーだろうと気になっていたのですが・・・
小麦アレルギーだったのですね。(他にもいろいろありそうな)
生業がパン屋さんでは、どんなに大変だったかと思います。
日本にいた頃の友人や知り合いの子供たちにもいろんなアレルギーで悩む子たちがいましたし、
私自身もひどいアレルギーに何十年も悩んでいますので、よくわかります。
私の場合は、父方の祖母がかなり重症の喘息持ちだったので、
仕方がないといえば仕方がないのですけれど。

グルテンは大丈夫なのですが、いくつかの食物、金属や糊、虫、薬、etc.etc.
ガーデニングを趣味とするものにとっては植物アレルギーも困ったものです。
日本にいた頃は、スギ花粉だけでなく、稲の花が満開になるとひどい症状が出ていました。
こちらでは、白樺やグラス類その他。
そんなわけで、年中アレルギーの薬や目薬・点鼻薬、朝晩の喘息のインヘーラーが欠かせません。

グルテンフリーの食品は英国でも、わりと普通にあって、
(というと、ちょっと大袈裟な言い方になってしまいますけれど、)
殆どのスーパーでグルテンフリーの食品が手に入ります。
(グルテンフリーがブームということではなく、キノアなどの雑穀がちょっとしたブームになっています。)
それだけアレルギーを持つ人が多いということでしょうね。
それに、殆どすべての加工品にアレルギー情報が書かれていて、
特にナッツのアレルギーは多いので、まったくナッツとは関係のなさそうな食品でも、
「ナッツも扱う工場で作られている」という明記が入ることが多いです。

息子さんが生まれてからあとのお話は、
いっぱいある中のほんの一部なんでしょうけれど、
それでもきゅんと胸に迫りました。
Commented by bacuminnote at 2015-01-27 11:15
*追記その2を 書き加えました。
Commented by bacuminnote at 2015-01-27 13:02
■lapisさん。
今朝は雨音で目が覚めました。
ひんやりじっとり寒い朝です。
たいへんな中lapisさんがパソコンにむかってくれる姿を想像して申し訳なく。けど、ほんまうれしいです。コメントありがとう。

そうそう。昨夜はお好み焼きでした!調子にのって次々焼いて食べ過ぎたから、今日はまたあっさり系でいきます。
若い頃はこってり+生サラダやったけど、いまは煮もの炊きものが「口に旨い」〜そちらでいう年配者むけメニュウみたいなんは、どんなものなのでしょう?
いずれにしても。
嗜好も、健康上の食事制限も、
食べ物って毎日のことやから、かんたんやないですね。

アレルギーのことは子ども自身のプライバシーの問題でもあるし、これまではあえて書きませんでした。でも最近は彼自身も食物アレルギーのことを発信したりしているので、初めて(お察しの通り「いっぱいある中のほんの一部」ですが〜彼にも伝えて)書いてみました。

でも、ほんま言うとね。
カナダ旅行やアレルギー関係の資料、アルバムなどを見ながら、書きながら、何度もとまり、胸がいっぱいになってしまいました。もしかしたら「書く」のに、わたし自身も時間が必要だったのかもしれないなあと思いました。

小麦と蕎麦は(調理前は)粉なので、口から食べなくても鼻から吸引してしまう、ということもあり。
蕎麦屋の子の蕎麦アレルギー、パン屋の子の小麦アレルギーというのも、珍しいことではないそうです。それでも親の仕事が子どもの健康状態をそこねる原因になるのは辛いことで。当時は転職も考えたりしました。
しばらくして小麦への反応は落ち着きましたが。成長と共にまた別のものがNGになったりして。なかなか食物アレルギーとのつきあいはたいへん。
離れて暮らす今も時々はらはらさせられますが、当人は元気に学生生活送ってるもよう(←苦笑。なかなか帰ってきません)

すみません。自分のことばかり書いてしまいました。つづきはまた「お話」できるときをたのしみに!
Commented by surume393939 at 2015-01-28 00:06
bakuさんこんばんは。
私も息子さんのアレルギーやカナダの旅の話を読んで胸がキュンキュンしました。
ウチの長男は未熟児でうまれアトピー性皮膚炎でも随分大変でした。幼児期より高校生になってからが特にひどく、これはわたしの勝手な希望が受験生のストレスになり引き起こしたアトピーだと深く深く反省しています。
天然酵母のパンの為にカナダまで家族で行かれたなんてすごい行動力に驚きます。探求心なのでしょうか?夢の実現に向けての突き進まれたのでしょうか?なんか羨ましいですね。
朝から私も天然酵母の種おこしを といってもホシノの天然酵母の種なんですけどね。思うようなパンができない時もありますが、天然酵母のパンの味が大好きです。
Commented by bacuminnote at 2015-01-28 11:51
■surumeさん。
コメントおおきにです。
ほんまに子どもが大きくなるまではいろいろありますよね。
親(とりわけ母親)の反省の話は自分の事も重ねてせつないです。でもでもとりあえずは、いまとこれからがだいじ。前むいて歩いていこ〜と思ってます。

surumeさんも天然酵母パン焼いてはるんですね〜わたしもさいしょ家で焼き始めたのが星野天然酵母でした。けっこうおいしかったけど(自画自賛!)なかなか安定してうまく焼けず。
1983年くらいだったか当時の『自然食通信』という雑誌に載っていた楽健寺さん(東大阪)のパン講習に参加したのがきっかけでいわゆる楽健寺酵母(りんご・山芋・人参・玄米)にかえました。そのときはパン屋になるつもりもなく、まったくのホームベイキングやったんですが。
その後相方がパン屋修行に出てからは、わたしは家のパン焼き係をあっけなく解任され(←あはは〜作業がええかげんすぎるので・・苦笑)ベイキングは相方の担当となりました。彼は研究熱心なので(←へんこともいう)酵母もどんどん彼流に変えて「楽健寺酵母」から「麦麦酵母」に変身しました(笑)・・と、パンの話になると止まりません。続きはいつかお会いしたときに!


by bacuminnote | 2015-01-23 23:28 | パン・麦麦のころ | Comments(5)