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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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よだきぃ。

▲ その日は朝からうっとりするような 冬青空。
ええな。ええよね、こういう空〜と、うきうき。洗濯物いっぱい干して、息子が夜に帰ってくるというので、ついでにお布団も干して。用事で出かけなあかんけど午前中で戻ってくるし(大丈夫やよねと〜自分に言い聞かせ)大急ぎで支度してバスに乗った。
ぽかぽか陽気のこんな日は 車中あっちでもこっちでも居眠りのゆらゆら頭が見えて、ええな。ええよね〜と頬がゆるむ。

▲わたしは持ってきた文芸誌(『群像』2014年9月号→)を開く。目的は掲載されている『九年前の祈り』(小野正嗣)。芥川賞にはあんまり関心ないんだけど、受賞作の舞台が学生のころ何度も訪れた友だちんちのけっこう近くだと知って、すぐに読み始めたのに。何故だか なかなか先に進めなくて、そのままになっていたのだ。
けど、バスでも電車でも、その適度な振動と車内の雑音がええのか「乗り物読書」はいつも すすむんよね。加えて、この日は文中に旧友が昔しょっちゅう口にしてた「よだきぃ」(大分でめんどくさいなあ。だるいなあ〜というような意味の方言)が出てきたあたりから物語が近くなった気がする。

▲ 作品には地元のおばちゃんたちの会話が何度も出てくるから、他にも方言はいっぱい語られているんだけど。「よだきぃ」はわたしにとってちょっと特別。これ、彼女と彼女の地元の友だちも皆しょっちゅう口にしてたんよね。「よだきぃ〜」「よだきぃのぉ〜」と今これ書いてても、何かいうたらこのやりとりしてた友人たち(笑)が浮かんでくる。(そうそう、著者も彼女たちが通ってた高校の出身らしい・・・てことは、彼も高校生の頃はガッコ近くのあの書店〜夏葉社の『本屋図鑑』表紙に描かれてる"根木青紅堂書店"に通ってはったんやろか〜と想像したり・・・)
いつもせっかちで答えを急ぐ関西人(←わたし)とちがって、南の友たちはみな悠々としており。そのどっしりゆったりのんびり感に、若いころは時に苛立ったり、うらやましかったり。

▲何度も乗った電車〜日豊本線や、佐伯駅から彼女んちまで〜くねくねとリアス式海岸沿いを走る車の窓からみた海も重なって。海のない奈良県の山育ちやからか、その景色はいまもあざやかに残ってる。訪ねるたびに大事にもてなしてくれた彼女のご両親も、いまはもう亡くならはったけれど。長いことみていないあの海がしみじみなつかしい。

▲はじめに書いたように、最初この小説にはすーっと入っていけないものがあって、それが何なんやろ?とずっと頭の隅っこで思いながら読んでいたんだけど。
「よだきぃ」に出会ってから、ねっとりとした潮風を肌に感じながら、海辺の小さな町の急な階段や、狭い路地に突っ立ってるような。いつのまにかそんな空気の中にいて物語を「見て」いるような気がした。
受賞発表の日、著者が言うてはった(→)《小説は土地に根ざしたもので、そこに生きている人間が描かれると思うんです。あらゆる場所が物語の力を秘めている。それを切り取って書くことが、普遍的な力を持つと。》を思い出しながら、大分県南海部郡に(みなみあまべぐん/いまは佐伯市)そして海をもたないわたしにとっての「土地」にも。あらためて思いを馳せるのだった。

▲さて、思いのほか用事も早くすんで、行き帰りのバスで件の小説も読み終え、予定通りお昼前に最寄りの駅に到着。いやあ天気がいいと自然に姿勢もよくなるね。友人のブログでみて思い出した「アマリリス」♪ソラ ソド ソラソ〜ララソラ ソファミレミード〜なーんて、ええ調子で鼻歌うたいながら歩く。
朝早くからバタバタ動いておなかもすいたし、さっと買い物して帰ろう〜とビルの地下のスーパーに。野菜売り場にて、おひたしは菊菜か小松菜か、と迷ってたら、すぐとなりで「大根か丸大根か」と大根談義のおばちゃん二人がいてはって。くくっと笑いをこらえてたんだけど。
次の瞬間フリーズした!
「外、えらい雪降ってるんやろなあ・・」「せやろなあ」

▲ええっ!?ゆ、雪ふってるんですか・・・?
大急ぎで菊菜をつかんでレジに直行。走るように地上に出ると、あのまぶしいような冬青空が一変して暗く灰色に染まり、白い雪が舞っていた。
大変。早う帰らんと布団が、布団が・・と思いながら、いや、慌てて濡れた地面で滑ったらあかんと言い聞かせながら。急いでるようなゆっくりなような複雑な足取り(苦笑)でペタペタ音たてて(たぶん悲壮な顔して)歩いてたんだけど。
そのうちはげしく吹雪き始めたのを機に、布団のことはあきらめた(泣)


*追記

その1)
この間読んだ『ポケットに物語を入れて』は角田光代さんによる書評や文庫の解説によせた文章を集めたものですが。今これを書きながら、このことばを思い出しました

作家がある場所のことを書く、その言葉がその場所の持つ本質を、意識的でも無意識的にでもとらえてしまえば、それは古びない》(p27より抜粋)

その2)
観た映画(DVD)
ドキュメンタリー『椿姫ができるまで』2011年エクサン・プロヴァンスで上演されたヴェルディのオペラを、作り上げてゆく過程を撮った作品です。
音楽は広く好きだけど、オペラは「食わず嫌い」でしたが、何年か前に友だちが連れて行ってくれて「おいしい」ことを初めて知りました。
いや、でも、このドキュメンタリーはとくにオペラ好きじゃなくても、見応えのあるすばらしい作品です。
オペラって演劇なんやなあ〜と改めて思いました。舞台を作ってゆくことの、それぞれがそれぞれのパートで積み重ねるたゆまない努力も、何度も何度も繰り返す稽古の様子も、ほんま感動的です。
そうそう、映画のはじめにでてくる大道具さんの工具類に釘付け。すてき!おもわず画面の写真を撮りました。

その3)
ジェイク・バグ()のインタビューを何気なく読んでいたら、彼が《初めて‘好き’と思える音楽と出会った》というのがドン・マクリーンのヴィンセントやった、って書いてあって。ものすごく久しぶりに聴いたけど。ええなあ。
ヴィンセントとはVincent Willem van Goghのこと。最初の♪Starry Starry Night〜という歌詞はゴッホの「The Starry Night(邦題:星月夜)」という絵に由来するそうです。
Don McLean - Vincent →
by bacuminnote | 2015-02-15 20:58 | 本をよむ