いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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象の小川。

▲寒い。
いったん春めくと、からだも気持ちも一気に緩んでしまうからか、ここ数日の寒さが堪える。一昨日は晴れたかと思うと急に曇り、その後いっときは歩くのもこわいほど吹雪き始めて。いつものことながらこの時季の気まぐれ天気にはほんま泣かされる。
できるだけ「洗濯物は外で乾かしたい」派(!)のわたしはそのつど洗濯物を外に出したり入れたりしており。
そうして、洗濯干し器を移動させるたびに障子戸にコツンコツン当て、ゆえに障子は穴ふさぎの「桜」が派手に舞っているのであった(苦笑)

▲少しづつ散り始めた白梅のそばの山茱萸(さんしゅゆ)の黄色いつぶつぶが一杯ついているのに、この間気づいた。よく見ると はぜた花火のように小さく開花してるのも混じって、かいらしい。一枝切って一輪挿しにいれたら、ぱっとそこだけ春になったようでうれしい。
黄色い花がすきになったのは、信州暮らしのころ、まだ雪の残る軒下にクロッカスの黄色い花が咲き始めたときの感激が忘れられないからかもしれない。
春が近いことをしらせてくれる黄色はとくべつやもんね。

▲ 昨日は京都に住む息子2と途中合流で吉野に行って来た。
昨日の朝も前日の寒さをそのまま持ち越しており、外に出るやその冷たい風にきゅうと音がでるくらい(笑)縮こまりながら駅まで歩く。母にはお菓子や食欲のないとき用のフリーズドライの軽食。それに頭の体操プリント(!)を数枚と、あとネットでみつけた母が読みそうなコラムをプリントしたものも入れた。
道中電車の乗り換えがわたしは1回、息子は3回もあるので、前日時間調整して合流する電車を決めたんやけど。「ちゃんと早起きできたんやろか〜」と地下鉄の中でふっと思ったちょうどそのとき「ごめん。寝過ごした!一本後の電車に乗ります」メール。がーん。

▲ この日バッグに入れてきた本は『丹生都比売(におつひめ) 梨木香歩作品集』(新潮社2014年刊)この本、表題作ふくめ9篇の短篇がおさめられている。最初に表題作が単行本で出たとき(1995年)梨木本ということや、舞台が吉野と知って気になりながらも、このタイトルにひっかかって長らく手が伸びなかったんよね。というか、吉野というと、この本の背景にある「壬申の乱」のように「皇位継承」にまつわる争いの話がよく出てくるのが、わたしは かなんのであった(苦笑)
と言いつつも、その辺りの歴史をよく知らないのも確かで(この本はフィクションなんだけど)何となく読みたくなったのは、今がわたしにとって"読み頃"だったのかもしれない。たぶん本にも旬みたいなもんがある。

▲でも、政争の渦中にいた主人公も”闘う人”ではなく、繊細で心やさしい小さな男の子、草壁皇子で。光をあてる人が梨木香歩さんらしいなあと思う。
初めて父・大海人皇子から弓矢の手ほどきを受けたときも、異母兄弟である大津皇子は《生まれてこのかたずっと扱ってきたといわんばかりに、一度で見事に的を射た》のに、草壁皇子というたら弓を持っただけで(弓が山櫨の木でできているせいか)手がまっかにかぶれてしまい《そのことを心中深く恥じて》いるような。伯母に《この世が、どうにも肌に合わぬのじゃなあ》と同情されるような子で。

▲ 大人の目には姿の見えない〜もの言わぬキサという女の子とも、そういうやさしい子やから、であえたのだろう。
皇子は言う。《キサといると、語ることより語らぬことの方が、ずっと貴いことのように思えてくる》キサという名前は(彼女は何も語らないので)草壁皇子が目の前にそびえていた《象山(きさやま)のキサ、喜佐谷のキサ》から名づける。

▲ わたしにとっては、なじみ深いこの山や地名を目にして、もう長いこと行ってない宮滝付近の風景や「象(きさ)の小川」の流れがそれでもすぅーっと浮かんできて。そのことにどきんとする。
この辺りは万葉集にもよく出てくるところ。古典は大が五つくらいつくほど苦手で無知なわたしだけど(せやからね、まちがってもわたしに万葉集のこととか聞かんとって下さい)大すきなところで。ひさしぶりに寄ってみたくなった。

▲ この草壁皇子の醸し出す空気は他の短編にでてくる子どもたちにも重なり、つながるものを感じる。いや、この本だけではなく梨木香歩というひとが描く子どもの周りにはいつもこんな風が吹いて《涼しい鈴の音が立つ》ようで。胸をつかれるんよね。そうそう、本文中、吉野の山にも春がきた〜という場面に《そこここに春を告げる山茱萸の木が目立つようになりました》とあって、頬がゆるむ。

▲ さて、いつものように途中から川の見える席に移動し外を見ると、ちょっと前まで晴れていたのに、空はいちめん灰色で吹雪き始めたんよね。雪が舞い舞いしながら電車を追いかけて、吹き飛んでゆくようすに見入る。そのうつくしさに吸い込まれそうになる。
「花の吉野」と言われるけれど、わたしのすきなんはこんな日の吉野やなあと思う。人の姿のない川原、薄緑色の川のさざなみ、枯れ草に枯木も。そうして材木屋の煙突から立ち上る煙が見え始めると「ああ帰って来た」と思う。

▲ 激しく雪の降るなかホームに降り立って、そう言うたらあの子、こんどこそ間に合うたんやろね?〜と気になってメールしてたら、一台とまってたタクシーがお客さん乗せてすいーっと走り去ってしまった。仕方なく強風に飛ばされそうになりながらタクシー乗り場に立ってたんやけど、人も車も見えず。
♪Tombe la neige あなたは来ない〜(←なーんて歌うてる場合やない・・泣)
こんなことは初めてなので、駅員さんに聞きに行ったら「たまたま出払っただけで、そのうち帰って来ますやろ」と間延びした声が 切符売り場のガラス戸越しに返ってきて。「そのうち」って、どのうちよ?・・・と、もぞもぞ言いながらも元の場所で震えつつ立っていたら、ようやく一台戻ってきて乗車。よかった!

▲家に着いたら玄関口に「寒かったやろ。ようお帰り」と母がいて、その後ろ〜大きな壷には姉が活けた山茱萸が小さな黄色い花火いっぱいつけて 枝を伸ばしてた。まさかここでも春の黄色にあえるとは。
やがて一本遅れで息子も到着して。にぎやかに話す間にも窓の外は吹雪続けていた。話の合間、大きく窓を開けてみる。とたんにぴゅうっと吉野川の冷気が入って来て。暖房でほてった頬にそのつめたさが心地良い。
「ええなあ。川の空気そのまんまやなあ」と悦に入ってたら、うしろから「わかったし早う閉めてくれへん?」と言われてしもた。


*追記
その1)
母に地元の造り酒屋さんの歴史を紹介した蔵元さんによるコラムをネットでみつけたのでプリントして持ってゆく。
その中に当時蔵元さんのご先祖が大塩平八郎たちを匿った旨の記述があり。「大塩平八郎の乱」(←《江戸時代の天保8年(1837年)に、大坂(現・大阪市)で大坂町奉行所の元与力大塩平八郎(中斎)とその門人らが起こした江戸幕府に対する反乱》by wiki→)についてはガッコの歴史授業程度の知識しかなかったので、母にレクチャーのためにわか学習(苦笑)
飢饉は天災ではなく人災である》とは氏のことば。
上記wikiにも書いてありましたが、《奉行所に対して民衆の救援を提言したが拒否され、仕方なく自らの蔵書五万冊を全て売却し(六百数十両になったといわれる)、得た資金を持って救済に当たっていた》とか。もうちょっとくわしく知りたくなりました。

その2)
山茱萸 wiki→

その3)
この間から観たふたつの映画のローマ〜

ひとつめ『グレート・ビューティー 追憶のローマ』→
冒頭セリーヌの『夜の果ての旅』の一節が流れます。
《旅は有益だ。想像力を誘う。あとは幻滅と疲労のみ。(中略)すべて見せかけ、つまり小説、作り話。辞書にもそうある。しかも目を瞑れば誰にでもできる。そこは人生の彼岸》
セリーヌもプルーストも(いや、プルーストは出てきませんが・・)未読のわたしは、いきなりここで挫けそうになるのですが(泣) そうしてその後も「ああ、もうちょっとわかりやすい映画観たかったんだけどなあ」とか思ったりしてたんだけど(苦笑)エンディングまでたどり着いて(観て)ほんまよかった!

ふたつめ『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』→こちらはドキュメンタリーです。
ひとつめの映画が強烈だったので、その後に観たこちらは淡白な感じがしたけど。
救急隊員。アパートの老紳士とその娘、シュロの木に寄生した害虫の世界研究の植物学者〜よかったです。

その4)
きょうはニーナ・シモン。ボブ・ディランの曲のカバーです。
Nina Simone -''Just Like Tom Thumb's Blues''
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Commented by surume393939 at 2015-03-14 12:06
bakuさん こんにちは。いつもいつも楽しくかつ興味深く拝読しています。
春になると吉野をおもってしまいます。あのヒト・ヒト・ヒトの道とその中を通る車。それがいやで如意輪時から宮滝まで静かな山道を歩いた時の事を思い出します。
途中の集落には春の花が咲き乱れていました。山道のクロモジの薄い黄色の花が印象深いです。
立派な歴史資料館にも行った事があります。宮滝大橋から眺めた川の景色も心に残ります。川沿いの古いお菓子屋さんで買った葛の干菓子もなんかひなびた味がしていました。桜木神社、高滝、象の小川、喜佐谷川 どういうわけか私はこころ惹かれてしまいます。
でも和歌山から電車で行くととってもとっても遠いです。
Commented by bacuminnote at 2015-03-14 15:55
■surumeさん。
今日はぽかぽか陽気で。洗濯物はもちろん外干しです♪
買い物帰りの上り坂〜いつものダウンジャケットでは汗ばむようでした。

宮滝〜ええとこですよね。
龍門や国栖(くず)、もうちょっと先の川上村もいいです。
十代の頃は、そのよさがわからず。"ただの田舎"としか思ってへんかったけど。ていうか、目も耳もこころも、からだごと「まち」に向いてたんですよね。

仰るとおり、桜の頃の吉野はほんま人も車も多くて。
ひとに聞かれると、小さい声で「春はやめといたら」と言うてしまいます(苦笑)
まあ吉野にかぎらず「〜の名所」と呼ばれるとこは、たいていそんな感じですやろね。

奈良でも吉野でも〜どうして京都のように観光客が集まらないか、という事よく言われますが、なんというても交通の便がよくないからでしょね。でも、せやからこそ、奈良にも吉野にも、いつまでもどこか「ひなびた味」が残ってるんやろなと思います。
Commented by lapisland2 at 2015-03-20 20:27
bakuさん、おはようございます。
昨日は2月に戻ったかのような寒くて暗い一日でした。

夜お風呂で ♪雪は降~る 重い心に むなしい夢 白い涙♪と絶叫していい気分になり、
さてそろそろbakuさんの新投稿のある頃かしらと尋ねてみたら、
>♪Tombe la neige あなたは来ない〜
とあって、思わず爆笑でした。

雪が降るとこの歌を口ずさみたくなる私たちはまさしく同世代に間違いありません。
初めて覚えたフランス語のシャンソンはこれだったかも?
いまだに冬の夜はお風呂の中で絶叫しています。

ふるさとに古い歴史があるということは、重いことかもしれないけれど、
どこか根っこの所で、古い古い時代に繋がっている自分を感じられるのではありませんか。
それがない人にとってはうらやましい事なのかもしれませんね。

大好きな山茱萸がいいお話に繋がりました。
『丹生都比売 梨木香歩作品集』帰国したら読みたいと思います。

おかあさま、お元気のようでよかったです。
Commented by bacuminnote at 2015-03-20 22:58
■lapisさん。
あはは〜
"雪はふる あなたは、来ない"(←ここ、語り風に・・笑)出ますよね。この歌、口ずさむ率けっこう高いです。遠くイギリスのお風呂で、lapisさんの絶唱ぶり想像して笑うてます。

古い歴史のまち〜といえば、ずいぶん前に読んだ上野千鶴子さんの本に、故郷金沢で過ごした十代半ばのことを書いたエッセイがあり。
《とりわけ金沢という街は、過去が澱のように溜まって、変化を拒む土地がらだ》(「W坂」より抜粋)
というところに共感。
でも、すきです。わが故郷。

あ、母は「いまが楽しいので、まだもうちょっと長生きしたい」と言うてました。いっときは「早う、おとうさん迎えに来てくれたらええのに」と連呼してたのに。完全復活。
by bacuminnote | 2015-03-12 20:09 | yoshino | Comments(4)