いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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前や後ろの知らない人らと。

▲暑すぎや~寒すぎるわ~とぼやいてたら、知らんまに6月になっていた。(一年の半分がこんなに早うてええんか・・)日々くるくるかわる天気に、身も心も、干した洗濯物も~ 外に出したり中に入れたり。ほんま何かとややこしい。
そして、ついに梅雨入りときた。

▲昨夜から降りだした雨は一旦あがったものの、朝から又ぽつぽつ降り始め、駅にむかって歩いてるうちに本格的な降りとなって。
こんな日はきっと空いてるやろうと思った整形外科の待合室は「こんな日やから痛む」患者さんで埋まってた。

▲リハビリの順番を待っていると、理学療法士や柔道整復師のスタッフと患者とのやりとりが、途切れ途切れ耳に入ってくるんよね。
痛いとこ、具合の悪いとこの話から始まって、家庭でもできる運動の指導や掛け声。長く通ってる人はそのうち、天気の話から野球に相撲に自分語り。

▲仕切りのないフロアのあちこちで(他人に聞かれても差し支えのない程度の)家族への愚痴や不満、ときに「ウチの子(孫)が・・」的自慢話も。
そういうたら、デイサービスに行ってる母も皆とするのは昔話と家族の話って言うてるもんなあ。
なんか問題やなやみごとがあるにしても、自慢にしても(苦笑)家族の数だけ家族の話と事情があるわけで。
せやからあちこちでエンドレスに繰り返されるんやろなあと思う。

▲この間おもいたって『海よりもまだ深く』(是枝裕和監督)という映画を観てきた。映画館に行くのも、邦画も、それに友人と行くのも、ひさしぶりのことだった。
東京のある団地が舞台の、家族の物語だ。

▲団地といえば、かつてこのまちが「ニュータウン」と呼ばれ始めたのと団地の誕生は同時期。
でも、わたしらがここに越して来たすぐ後くらいから、どんどん潰され(引っ越し当初はまだ「マンション建設反対!」の看板もあり、退去せず残って住んでる人もいてはった)そのうちに高層のマンションがいくつも建って。まちはどんどん変わって。いつしかその前を通っても前の団地が思い出せないようになってしまった。

▲映画ではその古い団地の4階に、子どもらが大人になり出て行き、夫が亡くなり妻が一人で住んでいる。裕福でもなく、4階までの階段もきついが、気楽な一人暮らしだ。
息子の良多はかつては文学賞もとったのに、今は書けなくて。生活のため興信所の探偵業。「作家として取材のためにやってる」とコトあるごとに言うて物悲しい。そしてお金が入ると一発当てようと競輪に走ってしまうんよね。
で、良多のその不甲斐なさゆえに離婚した元妻と小学生の長男。それから、ときどき母のもとを訪ねて、おかずを拵えてもらっては持ち帰る姉(笑)を中心に、物語が綴られてゆくんだけど。

▲映画館に行ったその日はたまたま1日(ファーストデイ)の水曜(レディースデイ)でだったので、わざわざ「シルバー申請」(苦笑)しなくても割引料金であった。
そのせいか、平日の朝イチだったのに、中高年以外のお客さんもけっこう入っていて、劇中なんどもそのセリフの絶妙さに、場内のあちこちでくすくすと笑いが起き、その空気がなんとも心地よかった。
いっしょに行った隣席の友人だけやなくて、前や後ろの知らない人らといっしょにこの映画のなかに入ってるような、そんな気がして。

▲せまいベランダで母親が水をやる鉢にはミカンの木で~子どものころ良多が給食のときのミカンの種を植えたもの。息子の横で、すっかり大きくなった植木に水をやりながら、母親がひとりごとみたいにぼそっと言う。
【花も実もつかないんだけどね、なんかの役には立ってんのよね~】

▲ほかにも暗くなかったらノートに書き留めておきたいせりふや場面がいくつかあって、残念やなあと思ってたら、劇中 良多が自室の原稿用紙が(←原稿用紙に手書き派やったんか~とか思いつつ)散らかる机の前に、その日、興信所の仕事中に会った誰かの発したことばで、ぴんときたものを書き留めて、壁に貼り付けており。そんなことばのポスト・イットでいっぱいになった壁に、ぐっとくる。
そう。だれかが吐いたことばひとつから、物語は始まってゆくんよね。

▲たまたま台風の夜、おばあちゃんちに集まった元家族。良多と帰りそびれた元妻と息子、そして母親4人が団地ですごす一夜。カレーうどん食べてお風呂に入って、なんてことのない時間がていねいに描かれる。
やがて夜が明けて台風がとおりすぎると、物語は又なんてことない顔でおわりをつげる。
けど、みんなの胸のなかをたしかに風はすいーっと通り抜けてったんよね。だから清々しい朝。
まあ、問題はいっこも解決はしてへんのやけど。

▲是枝監督でおなじ配役(母・樹木希林 息子・阿部寛)では、だいぶ前の作品になるけど『歩いても歩いても』もいい映画だった。物語としては、わたしはねじれ具合がこっちのほうがすき(そのかわり、つらくもあるのだけど)。(ここにちょっと書いています)そうそう、この映画の予告編の最後に川上弘美さんのコメントが流れてて、じんとする。

これは『海よりもまだ深く』でもおんなじ。
底に流れてるのは、やっぱり、かぞくへのあい(例によって漢字にするのはてれくさい)なんやろね。たぶん。
あ、それから、良多はあのあと小説を書き始めると思うなぁ。
こんどこそ、きっと書きあげると思う。

【生きているって、なんて厄介なことなんだろう。
なんて面白いことなんだろう。
なんて、かなしいことなんだろう。
そして、なんて、うつくしいことなんだろう。】(川上弘美)


*追記
その1)
思い返してみたら是枝作品→はけっこう観ていて(未見は2作品やった)どれも音楽もいいです。

そうそう。↑で書きそびれたことひとつ。
映画みる前に、どこかのサイトで監督のインタビュー記事読んだのですが、
そこに監督が団地の生活感をリアルに出すため、お風呂の場面では昔式の浴槽(上置き式で横にガススイッチのついてるの)
を探して、点火するときの「カチッ」という音出したかった~と言うてはって。

わたしもかつて文化住宅やアパートに住んだときあのタイプの浴槽だったので、とてもなつかしく。
どんな風に「カチッ!」を使わはるんやろ~と「お風呂に入る」場面になると注意深く(苦笑)観て(聞いて)たんですが。

「カチッ!」が登場したのは、風呂場で点火するその音が 居間で聞こえてる~という、それだけでした。
いやあ、ああいうのは映画やなあ~文章では表現できひんよなあ。あのかんじ、すごいなあと思いました。

その2)
この映画のあとに観たのが(DVD)『ボーダレス 僕の船の国境線』(原題・BEDONE MARZ アミルホセイン・アスガリ監督)は、家族から離れている、離れてしまう子どもや兵士の物語でした。

国境沿いの立入禁止区域に放置された船に住むひとりの少年は孤独なんだけど、魚や貝をとり、たくましい生活者です。ある日突然国境の反対側から少年と同じ年くらいの銃をもった少年兵が乗り込んできて。
次にはアメリカ兵がまよいこんでくる。
ペルシャ語、アラビア語、英語をそれぞれに話す3人と赤ちゃんだけ。
最後まで言葉は通じないままなんだけど、緊迫したなかでふっと空気が緩むのは赤ちゃんの存在と、これもやっぱりひとへの愛かなと思いました。

その3)
『海よりもまだ深く』の主題曲 ハナレグミ – 深呼吸 を聴きながら。
(Music Video Short ver.)うたは2'10"~そうそう、ここに出てくる良多の職場の後輩(池松壮亮)もよかったな。→

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Commented by hasikkoami at 2016-06-08 08:03
おはようございます^^

>「海よりもまだ深く」
私も観ました。
何も起こらないし、何も変わらないけれど、でも何かが(いい方向に)変わった、
と思わせてくれる気持ちのいい作品でした。
「歩いても」は私も大好きですが、
あの胸を締め付けられる切なさとはまた違った良さがありました。

是枝作品、随分とご覧になってらっしゃるのですね。
私は bacuminnote さんの未見作+「DISTANCE」「海街diary」が未見でした^^;
Commented by bacuminnote at 2016-06-08 09:59
■hasikkoamiさん
おはようございます。は、早い!(←に、かえはったんですよね♪)昨夜amiさんち読ませてもらったとこです。いっぱい観てはるのでうらやましー(またあとでおじゃまします。)

あ、観たものリスト!載せるつもりやなくて。あとで是枝サンのサイトへのリンクに、はり替えるつもりが、睡魔に勝てずそのまま寝てしまいました。(←さっき変更)
それから、ついでに(!)書きそびれてたお風呂の場面のことを追記1に書き加えました。

『歩いても歩いても』は、ほんませつなかったですよね。あのときの樹木希林さんの表情の変化もすごかった。おばあちゃんで、母で、妻で。

でも、せつなさもつらさも、ゴンチチのギターで和らいでた気がする。
もちろん、そういうことも考えて音楽選ばはったんやろなと思うけど。
Commented by lapisland2 at 2016-06-11 07:45

是枝裕和監督の作品はわりと見ていますが、こちらでは『そして父になる』がやっと昨年DVDになったところなので、そのあとの2作品はまだ見ていません。
この秋帰国した時に見るチャンスがあるといいのですが。
樹木希林には長生きしてもらって、もっといろんな映画で活躍してほしいですね。
Commented by bacuminnote at 2016-06-11 08:28

■lapisland2さん
>こちらでは『そして父になる』がやっと昨年DVDになったところ

そうですか~
あ、けど、こっちでヨーロッパの映画~「新作DVD」というても2~3年前の作品・・みたいなもんかなあ。

秋のご帰国!
たのしみにしています。

そうそう、友人が4年前のブログに是枝監督がお父さんを語る記事のことを、書いてはります。→「陸繋砂州通信」http://tombolo.skr.jp/blog/877.html
《楽しそうに生きてる大人がそばにいるって、大事だと思う。それは父親だけの役割じゃないと思います。》 (是枝裕和「おやじのせなか」より抜粋 朝日新聞2012.1.19】

昨日、雑誌のBNを何気なく読んでたらその号が島特集で、島尾敏雄氏が撮った奄美の写真と、息子さんの島尾伸三氏の「父と奄美大島」というエッセイが載っていました。

それで思いだしたんですが、『海よりもまだ深く』の劇中、主人公がとった文学賞というのが「島尾敏雄文学賞」という設定で。
台詞にはでてこないのですが、出版された本が映ったとき帯に「島尾敏雄文学賞受賞作」と書いてありました。(ありそうで、ない文学賞ですが) そのあたりに監督がこめたものもあるのかなあ、と思ったり。


by bacuminnote | 2016-06-08 00:43 | 映画 | Comments(4)