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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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たぶん、もうじき。

▲ここ二、三日とはうってかわって今日は寒い朝になった。
庭に散った梅の花びらが風でひらひらして。朝いちばん山茱萸(さんしゅゆ)をひと枝切って一輪ざしに入れる。ちいさい黄色の蕾が「モウジキハル」と告げてくれるようで。いとおしい、かいらしい。
でもじっさいには「モウジキ」は、なかなかで。まだまだ行きつ戻りつの「ハル」なんやろうけど。

この間の土曜日、友人の個展 に京都まで出かけた(→うらたじゅん個展「少女手帖」この頃はその日になるまで予定がたてにくいので、相変わらず手帖は白いとこばっかりなんだけど。朝起きて足さすってみて窓あけて青い空みて「さ、行こか」と自分に声かける、そんな気儘な一人の外出もけっこうええもんで。

京都には山田真さんのお話会atカライモブックス)以来やろか。
ついこの前のことのように思ってたけど手帖を繰ったら、なんと一年も前のことで驚いた。早いなあ。一日一日ほんまにゆっくりぼんやり(!)暮らしているのに。なんで一年はこんなスピードで過ぎてゆくのか。なんかもひとつ納得いかへんけど。

ほんで、この調子やったら「一生」というのも、あっという間かもしれへんから。会いたいひとに会い、行きたいとこに行っとかなあかんなあ~とか思いながら地下鉄から京阪電車に乗り換え。
つい目の前の階段を「これくらいやったら大丈夫やろ」と上って、これでお終いかと思ったら、もういっぺん階段があるのすっかり忘れてた(泣)

▲それで懲りたしね、京阪ではエレベーターでホームに下りた。(ほんまに駅は上ったり下りたり、ややこしい)
ホームで並んで待ってたら、2階建て特急電車が到着した。
車内清掃が終わって扉が開き、人の流れのままだだだっ~と乗車すると、なんかわからんうちに階段を上って2階席に行ってしもて(苦笑)

で、2階はちょっと旅行気分やなあ。どこに座ろうかなあ、と迷ってるうち、あっという間に席が埋まってしまい。いま上ってきた階段をまた降りて一階席に移動。足がいたくならへんように、と気ぃつけてるつもりが、ほんまに何をしていることやら。

とはいえ始発駅。まだまだじゅうぶんに空席はあり、ゆっくり腰おろして、バッグから本をとりだす。終点までは一時間ほどあるから、重たいけれど『ボローニャの吐息』(内田洋子著)を持って来た。

この本まだ買ったばかりなのに、しっかりシミ付きで。というのも届いた日に珈琲をのみながら読み始めよう~と本とカップをパソコンのそばに置いたとたん、ひっくり返してしまったのである。

▲咄嗟に本を持ち上げ、ティッシュペーパーで拭きながら、いや、あかん!パソコンが先や!とオロオロ。机の上、散らかってたメモやらノートやらみな水没。布巾を取りに立つ余裕もなく、ひたすらティッシュでカップ一杯分の茶色い液を拭く(というか、吸う)。
幸いパソコンはなんとか無事だったものの、マウスが壊れてしもたり、読む前から本に派手に茶色のシミつくるわ・・で。図書館の本とちがってよかったものの、ほんま何をしていることやら。(こんなんばっかし。泣)

▲内田本は『ロベルトへの手紙』が去年出たばかり(この本のことはここにも書きました)尽きることのない「種」は、著者の人やものに対する好奇心や、向学心、そのおおらかな愛と行動力がハンパないからやろなあと思う。

あたらしい本が出たらすぐに読む。そのうち忘れてはまた初めて会ったみたいに読んで。はじめから、途中から、最後まで通して、なんとなく開いたとこだけ・・と気の向くままに読むのが、内田本とわたしのつきあい方。須賀敦子の本もそんなふうにして、いつも傍にある。
そして、前々から行きたいと思ってたのに、ぐずぐず思案してるうちに、足の不調で、行けないままのイタリアに、たっぷりと思いを馳せる。

さいしょの話は「ミラノの髭」~著者はある日、中学生の友人ラウラから美術館行きを提案される。連休でラウラの友人たちは出かけていない、共働きの両親は夕方まで帰ってこない、そのかん面倒をみている妹弟もその日は誕生パーティーによばれていない・・ってことで、著者に声がかかったらしいのだけど。そのネットワークの広さは著者の仕事柄もあるとはいえ、そっか~中学生からも「誘われる」ひとなんやなあ~としみじみ。

最初は彼女の母親と「バールや信号待ちで頻繁に顔を合わせるうちに」「目礼から挨拶、立ち話からコーヒー、日曜の公園での散歩」と親しくなる。

ここまではありそうな話だけど、あるとき子守りや家事手伝いを頼んでる女子大生が試験前で来れなくなって「しばらくの間、ラウラの妹弟をうちで預かることになった」というあたりは、内田本を読んだことのあるひとなら「おお、またか~」と思うにちがいない。この方、困ったひとを放っておけないほんまに面倒見のよいひとなのである。

まあ、そういう経緯でラウラともなかよくなったんだけど。

で、そのラウラに誘われる数日前の午後のこと。

著者の家にやってきたラウラは
【天板がガラス製のテーブルの下に入るように言う。そして台所からエスプレッソマシーンや茶碗、皿、ジャム瓶を持ってきて、テーブルの上に並べ置く。ぺたんと床に直座りし、一列に並べた物を見ている。おもむろに仰向けに寝転がってテーブルの下に潜り、私を隣に誘った。

「横から見て、上から見て、下からも見る。見えないところも想像し、触れ合ったときに鳴る音を考える。それからスケッチするのが、今日の宿題なの」

いっしょにエスプレッソマシーンの底や皿の裏側を見る。瓶の底から、ジャムの隙間の向こうに居間の本棚が歪んで見えている。いつもそこにあるものなのに、初めて見る光景だ。使い古した日用品にも、それぞれ見慣れた顔と秘した裏の顔がある。「全部合わせて、一つなのねえ」ラウラは天板の下に寝転んだまま、しきりに感心している。】(同書p12より抜粋)

そうして後日ラウラが再びやってきて、学校に提出した二枚の絵を見せてくれるんよね。一枚は内田さんちの台所の物を題材にした静物画、もう一枚はピカソの作品の模写。つまり「横から見て、上から見て、下からも見る。見えないところも想像」はキュビズムを知るための予習だったという。

「人間もあちこちから見て初めて、その人がわかるのね」というラウラに内田さんはおもう。
【突然、周囲の物々や人々が表裏をさらけ出して目の前に迫ってくるような気がして、中学校の美術の授業に畏れ入る】

【毎日の登下校の道がそのまま古代ローマへの道であり、ルネサンスの残り香が漂う広場でボールを蹴っているのである。目の前で幼い子が躓いた石も、古代ローマの一片なのだ。】(p14より抜粋)

▲中学校の美術の授業といえば、薄い教科書の「単元」のところを開き、最初に「模範作品」を見て、センセに言われたように静物画を、風景画を、ポスターを・・と時間内に描いて、描けなかったら持ち帰って宿題やったなあ。それでもわたしは「自習」っぽいその時間は嫌いやなかったんだけど。
中3のとき教育実習で、美術のセンセとしてやってきた姉2が「教科書通りでいっこも、おもしろない」とぼやいてたのを思い出す。

さて、
20頁余りのエッセイなのに本題の「ミラノの髭」までたどりつけなかったんだけど(苦笑)内田洋子のエッセイは思わず声に出して読みたくなる(読みやすい)文章なのに、読むのはけっこう時間がかかる。投げられたボールをただ受けるだけじゃなくて、ついつい、あれこれ思ったり考えて、行きつ戻りつしてしまうから。

このことについては、以前webのインタビュー記事で内田さんが【かつて、俳句に接し「読者の気持ちがあって完結する書き方」があることを知った。通信社業に長く携わる者としての<材料、部品を提供する>という気持ちも、常に頭にある。

と語ってはるのを読んで、ああそういうことかも~と納得した。

はっと気がついたら、どこの駅だったか若い女性が乗ってきて隣りの席に。すぐにバッグから本を出して読み始めた。何読んではるんかなあ~と、気になりつつも不明なまま(苦笑)終点「出町柳」に到着。

ギャラリーはここから徒歩23分だ。
いつもより一枚薄着で来たけど、ちょうどよく。ぽかぽか陽気の中、すれちがったベビーカーのあかちゃんのぷくぷく白い素足がきもちよさそうだった。

ギャラリーに着くと、ウインドウ越しにJが軽やかな春色のスカート姿で、加えてちょっとよそゆきの面持ちで(!)お客さんと談笑してるのが見えて頬がゆるむ。で、ここまでは旧友J。

今回は「少女手帖」というテーマだそうで、もらったDMの絵も辛夷の花や道端にはたんぽぽが描かれており。扉をあけたとたんパステルカラーの中の少女たちに囲まれる。作品を観ているうちに、わたしのなかで友だちのJは知らんまに「うらたじゅん」という漫画家/イラストレーターに切り替わる。

▲パステルカラーの・・・なぁんて書くと「やさしい」「なつかしい」「せつない」という常套句が浮かんでくるけど。そういうのに騙されたらあかん。目を凝らすと彼女の絵には「ふしぎな時間」への入り口があって。少女たちの弾む声も、ぎゅっと結んだ口も。跳ねて走って、佇んで。ときどき、カッパやクマもすまし顔で登場して。そういうとこがすきやし、そういうとこがうらたじゅんの世界やな~とおもう。

そうそう。
話題にのぼるたびに絶版がほんとうに残念だった うらたじゅん作品集
『嵐電』(北冬書房刊)が近々重版~というニュースを聞いて歓声をあげる。うれしいです。

ギャラリーでは、オーナーのY氏とベイキングの話もして(ご自分でバゲットを焼いてはるそうで。ええなあ。)以前からいっぺん会いたかったツイッター友Nさんとも偶然会えて、久しぶりのひとにも、若いころ会ったきりのひとにも会えて。

べつの友人とお昼を食べに入ったカフェでは、隣席に久しぶりの友だちが居てカンゲキのハグ!
ふだんこもってるわたしには一年ぶりくらい人に会うた気分で。
おおきに~「少女手帖」のおかげで少女な時間でした。


*追記 

その1)

個展は今からやと7日(火曜)のお休みのあと、12日(日曜)までopen 。
うらたじゅん在廊は1112日(両日とも14時~18時)やそうです。

お近くの方は(そうでない方も!)ぜひ。


その2)

今回はパソコンの珈琲掛け(泣)で、パニックって、借りてきたDVDも

ほとんど観ていないという(あり得ん!)状況wです。

観たのは『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』一本だけ。


その3)

きょうはエヴァンス聴きながら。

Bill Evans Trio - It might as well be Spring


by bacuminnote | 2017-03-06 19:37 | 出かける