いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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2017年 04月 17日 ( 1 )

小鳥くる。

▲めずらしく本を読まない(読めない)時間がここしばらく続いている。
それでも、こどもの時分からの癖で毎晩本を持って布団にもぐりこんで。目をとじる。眠れなくて目を開ける。ふたたび目を閉じる。
いつも枕元に本があるのは、たぶんわたしの安心のしるし。読んでも、読めなくても。

▲このあいだ(というてもだいぶ前になるけど)思い立って友人とドキュメンタリー映画『人生フルーツ』を観に行って来た。この映画のことは、もうずいぶん前からあちこちで、とりわけわたし位か、もう少し上の世代の人がブログなどでこぞって絶賛してはって。ほんま言うとね。それを読んだだけで、もう「観なくてもわかった」的気分になっており(すまん)。それに「おだやかにていねいに暮らす」とか言われたら尚のこと、背をむけたくなる天邪鬼も自分のなかにいたりして。

▲そのうち上映館も一つ減り二つ減り、まあいつかDVDになったら~とか思ってたんだけど。観てきた友だちが言うてた「二人、ほんとに仲がいいのよねえ」のひとことがずっーと残ってて。つまり「仲のよいフウフ」に引っかかってたもんで。「今さら」と思いつつ、公式HPみてみたらまだ上映館があることを知ったのだった。

▲ケッコンして40年近いというのに、いまだにかんかんがくがく、けんけんごうごう(苦笑)な自分たちをおもって、わたしは時々ふかーくため息をつく。
「あんたら若いなあ。わたしらそんなんとっくに諦めたわ」「もう今さら、人は変わらへん、って」と、センパイ方は言わはるんやけど。

▲「諦める」とか「言うても仕方ない」やなくて。
どうしたらフウフなかよく(いや、ウチも仲が悪いというわけでもないけど)何より、おだやかにすごせるのやろ~と。農的生活や「ていねいな暮らし」にスポットライトのあたるこの映画に求めるモンが「そこか?」と笑われそうやけど。けっこう真剣にそこのところを観て確かめたかったんよね。

▲その日は友人のやさしいエスコートで、エスカレーターやエレベーターを使って(方向音痴のわたし一人だと探すのにくたびれて仕方なく階段を昇降することも多いのデス)すいすい目的の映画館に。
お客さんは中高年の女性が多かったものの若い人らもけっこういて。
ひさしぶりに来たけど、ここはやっぱり上映してる作品がすきなものが多くて『草原の河』なんかはもう予告編のみじかい時間だけで、ぐっとひきこまれて観たくなる。
やっぱり、たまには「街」に出てこんとあかんなあ。

▲さて、本編である。建築家の津端修一さん(撮影当時90歳)は、愛知県春日市の高蔵寺ニュータウンの一隅に樹木と畑に囲まれたお家に妻・英子さん(87歳)とふたりで暮らしてはる。

▲修一さんはかつて阿佐ヶ谷住宅や多摩平団地などの都市計画に携わる。
そして1960年代 伊勢湾台風の高台移転として当時住宅公団のエースだった修一さんが高蔵寺ニュータウンの設計を任されることになって。

▲彼は風の通り道になる雑木林を残し、自然との共生を目指したニュータウンを計画するんだけど、経済優先の時代の波にのみこまれ、結局完成したのは理想からほど遠い四角い建物がずらりと並ぶ大型団地で。
その後修一さんはそれまでの仕事から距離をおき、自ら手がけた高蔵寺のニュータウンに土地を購入して家を建て、みんなにも呼びかけて雑木林を育て始め、里山再生のローモデルとして提唱し続ける。

▲「平らな土地に里山を回復するには、それぞれの家で小さな雑木林を育てる。そうすれば一人ひとりが里山の一部を担えるのでは」というわけだ。
映画の中でも「ドングリ作戦」と称し、開発でハゲ山になってしまった高森山に樹木を植える運動が当時の写真と共に紹介されるんだけど、氏の熱のようなものが伝わってくる。

▲彼の師アントニン・レーモンド氏の自邸に倣ったというおふたりの家は、木造平屋で台所と30畳の広いワンルームである。
大きなダイニングテーブルのうしろに、修一さんのデスクがありベッドもふたつ並んでいるのが見える。天井はなく、光の入る高窓を長い棒を使って開閉する。玄関もなくて、庭からそのままあがる。センスはいいけど、気取りのない、居心地のよさそうな家だ。

▲せやからね。
映画で映し出される二人は、ほぼこのダイニングテーブルの前に腰かけてはるか、台所か、70種類の野菜が育つ畑と50種類の果実が実る木々の辺りで土をさわってはるわけで。

▲そうそう。
あるとき「このテーブルから庭を見るのが気に入ってる」というような話になって、季節でテーブルの位置を少しずつずらしたりしてると二人が言うて。
「この位置がいい」という修一さんに、すかさず「わたしは、ほんとはもうちょっと◯◯のほうが好きなんですけどねえ」と英子さんが返してはって。
「お、いいぞ、いいぞ」(苦笑)とにんまりする。

▲津端さん夫妻は年齢的にはわたしの親世代であり。
母がそうだったように英子さんもまた夫・修一さんに話すのはキホン敬語である。でも、語り口は敬語だけれど、彼女は思ってることはちゃんと夫に言うてはるんよね。
なんども出てくる食事風景(畑のものを存分に使いおいしそう!)の中、朝食に修一さんにはご飯。英子さんはというたらパン~というのが印象的だった。ゆるやかに、しかし「自分流を通す」ということか。

▲で、わたしやったら、と考える。
和洋二種類も作るのフケイザイだの、めんどくさいだの~と、こぼして(自分のすきなものを)がまんしてつれあいに合わせるか、あるいは、つれあいに「今日はこれにしとき!」と押し通すか(苦笑)どっちかになりそうだ。(もちろん彼が自分で拵えるという選択もある)
でも、ほんま言うとこういう日々の一見「小さながまん」は積み重なると、思いのほか大きく膨れるもんなんよね。手間をおしまず「通す」英子さんはすごいなと思う。

▲そして、映画に映る修一さんはいつも笑顔だったけれど、かかってきた電話に(なんと黒電話!)講演だか取材だかの仕事を「わたしももう90歳だから自分のために時間を使いたい」ときっぱりと断ってはったのも残っている。

▲おだやかで豊かな暮らしやから、単純に好々爺みたく思ってしまいそうになるけど(そういうたら、いま「好々爺」に値する「好々婆」ってあるのかな、と調べてみたけど、なかった。気のいい爺さんはいるのに、婆さんはいないのか?と、愕然とする)その底辺には、厳しい「NO!」の思想が流れていることを。お二人ともそういう思いを共有してることを、あちこちでつよく感じた。

▲いろんなひとがブログなどで言うてはるから、ええかと思って書くけど、この映画の撮影中におもいがけず修一さんが、昼寝したまま起きてこなくなるのであった。ふたりはいつかひとりになるのであった。

▲毎年、障子の張替えをするのに、外で戸を洗うのが修一さんの役だったようで。わたしもまた、そのむかし信州の山ぐらしのころ、外で10枚以上の障子戸を洗って干して、障子紙を張り替えたときのことを思い出す。
英子さんは夫、修一さんから「自分ひとりでやれることを見つけて、それをコツコツやれば、時間はかかるけれども何か見えてくるから、とにかく自分でやること」を教わったと言う。

▲そうやよね、コツコツ、コツコツと続けることで見えてくるものがあるよね。そして、気がついたのは、互いのちがいをわかった上で同じ方向むいて暮らしてはったんやな、ということ。
結局のところ、わたしらは相手のちがいを未だ(しぶとく?)受け入れてないのかもしれなくて。この映画鑑賞後も、やっぱり相変わらず「なんで(わたしの/ぼくの言うことが)わからへんねん?」が続いてるけど(苦笑)

▲映画の中ではけんかもなく波風もたたず。修一さんの死の後もしずかで。そのころ雑木林にあった野鳥たちの飲み水の大きな鉢が割れてしまうんだけど。がっかりする孫たちに英子さんは淡々と言う。「しょうがないよ。いつかは壊れるんだから」と。
エンドロールのテロップにあった「すべての答えは偉大なる自然の中にある」(アントン・ガウディ)のことばを今あらためてかみしめているところ。


*追記

その1)

割れてしまった小鳥の水鉢はその後、お孫さんたちが修理して復活することになります。鉢のなか、きらきら光る水に、小鳥たちのすがたにほっとする思いでした。
「小鳥来るここに静かな場所がある」
(田中裕明句集『先生からの手紙』)

そうそう、映画をみたあと、とりあえず暖かくなったら、ひさしぶりに障子戸を外で洗って、障子紙の張替えをしようと思いました!

その2)

この間発売のその日に本屋さんに走った本。
ここんとこ、いろいろいっぱいあって。唸ったり考え込んだり沈んだりしてたけど。そろそろちょっとづつ浮上中。また寝床読書が再開できるかな。

『離陸』(絲山秋子著 文春文庫)の解説は池澤夏樹氏「この友人たちを得ること」という副題がついており。 【読んでいて気持ちがいい理由の一つは、この作家は自分の小説に登場する人物を愛していることだ。そんなことはあたりまえと思う人は多いだろうが、しかし世の中には(名は挙げないけれど)登場人物を将棋の駒のようにあつかう作家も少なくない。彼らは作中の彼ら彼女をぱちんぱちんと盤面に叩きつける】
(同書「解説」池澤夏樹 p422より抜粋)

その3)

ふたりといえば、このひとたち。音源のなかではいつまでもふたり。

Lou Reed andLaurie Anderson - Gentle Breeze→


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by bacuminnote | 2017-04-17 09:40 | 映画 | Comments(2)