いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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<   2013年 04月 ( 2 )   > この月の画像一覧

▲ 昨日 相方とおにぎり四個にビスケット、熱い番茶を入れたポット持って出かけた。
天気予報の通り冷たい風ふく寒い朝だったけれど、道中ゆりの木も桜も、緑がうす青の空に映えて清々しくうつくしく、何度も足をとめて見上げる。
街行く人はダウンジャケットからジョーゼットのスカートまで。(←寒そう)。
年寄りみたいに「寒いなあ」をくりかえしながら歩く。
いつになったら「ほんまもんの春」になるのやら。

▲地下鉄から近鉄線に。二人で吉野行きの電車に乗るなんて、十数年ぶりかもしれない。例年ならこの時期には平日でも、まだ花見客でいっぱいになる電車だけれど。今年は桜が早かったからか、出かけたのが遅かったからか、特急の車内には空席が目立つ。中高年のお客さんが多いなか、通路はさんで隣は若いカップルで、缶ビールと柿の種。香ばしいにおいに軽やかな笑い声~よろしなあ。二人でお花見やろか。

▲ 少ししてお昼になったので、わたしは先に一人おにぎりを食べ始める。すると隣から「あのーおかあさん」と男の子の声。一瞬「え?」と思うが、まさかね~と顔をあげると、どうも視線はわたしに向けられており。「おかあさん」はわたしへの呼び名だと気づいた。
「あのーこの1号車って、禁煙車両ですよね?」
「はい。禁煙ですよ」
「あ、そうですよね。ありがとうございます。えっと、おかあさんたちも吉野に行かはるんですか」

▲おかあさんって、知らん子に呼ばれてもなあ。けど「おばちゃん」では失礼やと思ったのかもしれないし「オクさん」なんてうたら「安いで、安いで~奥さん、買うたってや~」の市場のおっちゃんみたいになってしまうしね。
皮ジャンにちょっと腰落とし気味のジーンズ、黒のブーツに茶色のヘア、わたしみたいなおばちゃんに話しかけてくることなど、まずないやろ、と思うようなお兄ちゃんやったけど、えらくフレンドリーに話しかけてきはるのであった。

▲ 花見かと聞かれたので、相方が病院に見舞いに行くねん、と答えると
「・・・おっちゃん(花見なんか)関心なさそうやもんねえ」と返ってきて内心笑う。わが相方に「おとうさん」とは言いにくかってんやろなあ。そうして「おかしいと思ってたんですよ。吉野着いてから弁当食べたらええのに、おかあさん、電車の中でもう食べてはるから」と言うので大笑い。お兄ちゃんは、カノジョがこしらえてくれたお弁当持って、まだ花の残る奥千本まで行ってお花見~とのこと。

▲ そのうち相方もおにぎり食べて(←ウチのカノジョはおにぎりだけ・・苦笑)花は散っても吉野の山の葉桜のうつくしさを語ったり。(←おっちゃんも関心がないわけちゃう~)思いもかけず「おかあさんら仲いいですねえ」とか言われて焦ったり。
やがて「つぎは吉野口~」というアナウンスに、がさごそと降りる準備を始めるお隣さん。
「次ですよね?」とごきげんなお兄ちゃん。「ちゃう!ちゃう!こんなとこで降りたら奥千本まで行きつかへんよ」と、切符見せてもらったら吉野口までしか買ってなくて。みんなで大笑い。吉野口のあと5つ目の終点が吉野駅なのである。

▲「吉野」って名前がついてたから、とりあえず切符買った、という若い子らのアバウトさを「ええかげんやなあ」と 呆れたり笑ったりしたけど。ひとのことは言えんのであった。
その昔、カナダに旅したときのこと。ジャスパーを目指す途中、ゴールデンという町を出てつぎの宿泊地にレンタカーで向かってたわたしたち。渋滞など無縁の広い道路で、前の車が動かないと思ったらマウンテン・ゴート(山羊)やムース(鹿)が道をふさいでて、親子で「おお、カナダ!」とごきげんやったんよね。相方に運転ごくろーさん、もうじき宿や~とかなんとか言うてたところに、うまい具合に観光局インフォメーションの前を通ったので、念のため予約いれた「アサバスカ・モーターイン」の場所確認しとこ、と入ったら。

▲ 係の人が「ほんとうにこのモーテルを予約したのか?すぐキャンセルしなさい」と言い出して。なんせフウフ揃って中学2年程度の英会話力しかないから、通じてへんのやろか、と会話集で用語例を探して言い方を変えてみたり(苦笑)「とにかく、どのあたりか教えて」と地図を差し出したら。アサバスカ川の載ってるところを見えるように小さく折った地図を、彼はやおら大きく大きく広げ始めた。
「そこと、ちゃうがな~」と親子三人覗きこんでたら、彼の指が地図の端っこで止まり、そして、気の毒そうにこう言わはったんよね。「たしかにアサバスカ川はこの辺りを流れてるけど、あなたが予約したアサバスカという町はここから車で6時間走り続けないと着かないよ」

▲ いやあ、カナダはものすご広いしね~「吉野口駅」と「吉野駅」どころの話やないわけで。「あんたが悪い」「お前が軽率や」となじり合う かつてのわたしらとはちがい、彼らは言い合うこともなく「ああ、よかったぁ。ありがとう。お母さんらに会うてほんまよかったですわ。話してへんかったら、ぼくらここで降りてましたもん」と、それもまた楽しいというように笑うのであった。
まあね、コイビトたちにはたとえ間違って降りたとしても、奥千本の桜見ることのぅても、きっとええ時間すごせるんやろけど。

▲ そうこうしてるうち 先にわたしらの降りる駅になり「ほな、楽しんできて」「またいつかどっかで~」と別れた。
さて、病院に着くと母はベッドで所在なさそうに座ってた。けれど入ってきたわたしらに気づくや、ぱっと顔が明るくなったのがうれしくて、ちょっとせつないきもちになる。
旧友が個展で上京するのに、てるてるぼうずの代わりに小さなクマのぬいぐるみ(前にウチの母がつくったのを彼女に貰ってもろた)を持ってきたよ~と前夜 写メを送ってくれた。やさしい子やからね、きっと入院中の母のこと気遣ってくれたんやろなと思う。かつて親に心配かけた娘やその友だちが いま年老いた母のことを想ってる。
その写真つきのメールをプリントしてきたのを見せると「そうかぁ。あの子東京まで行ってるん?(個展)うまいこといったらええなあ」と目を細める。

▲できたことができなくなり、覚えていたことをつぎつぎ忘れてゆくのが、くやしいと嘆く母に、わたしらも一緒やで、と言うたけれど「一緒とちがう」って思ってるんやろなあ。そんな顔してたよなあ。
そう言うたら、と前に読んだ上野千鶴子の本(『ひとりの午後に』)にあった句『ひとはみなひとわすれゆくさくらかな』(黒田杏子)がふっと浮かんできたけど、だまってた。
「せっかくここまで来たのに、山(吉野山のこと)でも寄って行ったらええのに。あそこにもここにも・・・」と「観光」を薦めたり、「早よ、帰らなあかんで」と言うてみたりの母に「ようなったら、夕方、また電話で長話しよな」と言うて病室をあとにした。

▲電車の時間も調べずに出たものの、都会とちごぅてここの駅で待つのは苦にならない。しんと底冷えのする待合室で腰掛けて、相方はビスケットを食べ、わたしはお茶を飲む。リュック姿の男性が入って来られ腰掛けると、駅のホームを指さして相方に何か話してはる。
「鹿や!」と相方。えっ!鹿って?慌てて窓際に寄ると一匹の鹿がホームを横切って走ってゆくのが見えた。男性と相方は二匹見たという。山から降りて来たんやろか。どこにむかって走って行ったんやろか。
たぶんいつもはのんびり仕事してはる 駅員さんが慌ただしく電話してるのが窓口越しにみえた。


*追記
その1) 旧友の個展
うらたじゅん個展  四月の停留所へ」
会期/2013年4月19日(金)~5月8日(水)
営業時間/12:00~19:00 【月曜定休】
★4月19日(金)~21日(日)まで在廊予定。
会場/東京・南青山 ビリケンギャラリー
〒107-0062 東京都港区南青山5-17-6-101 ☎:03-3400-2214


その2) 今日はこれを聴きながら、車窓からみえた きらきらひかる吉野の川や山の中にぽつんと咲いてた桜の木を思いだしています。Ólafur Arnalds(オーラヴル・アルナルズというアイスランドの作曲家、演奏家)の"Ljósið"
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by bacuminnote | 2013-04-20 13:10 | 出かける | Comments(0)
▲ 今日も買い物に行く途中、マンションの前に引っ越しトラックが停まってた。先月末から何度も見かけた長いボディのトラックやけど、もうそろそろお終いやろね。
毎年のことながら、荷降ろしの車のそばにちっちゃい自転車や三輪車が置いてあると、ついつい足が止まってしまう。
この町、気に入るとええなぁ。保育園、幼稚園や学校で。いや、行かないにしても。新しい場所で、たのしいことやおもしろい出会いがいっぱいでも、ひとつでも、ありますように~と、引越しシーズンのたびにそう思う。
始まりの春とか言うけど。足並みなんか揃えずに、みな、それぞれに、ぼちぼちいこか。

▲ それにつけても、高層マンションの引越しってほんとうに大変。道端に停めたトラックから下ろした荷物は台車いっぱいに積まれて、エントランスまでゴロゴロ。何度も何度も、若いお兄さんたちが汗だくになって繰り返す。
そばの歩道では、みなちょっと寒そうに歩いてはる。毎日暑かったり寒かったり。ころころ変わるからね。この前の強風で一気に散った桜の花のじゅうたん。踏んで汚さないように、わたしはつま先立ちで そろそろ歩いてみる。

▲ 桜の木には残った花のやさしいピンク。ガクの紅色。それから、みずみずしい緑の小さな葉っぱが風でたよりなげにゆれてる。ぜんたいが花で埋まってるより、このくらいがすき。すっかり葉桜になったころは、もっといい。そうして、あたりは緑のうつくしい季節になる。

▲ この間のこと。窓をあけたらご近所からピアノの音が聞こえてきた。聞き覚えのあるような練習曲。ええなあ。
ピアノは子どもの頃と大人になってからもちょっとだけ習ったけど。いっこも練習せんかったくせに。長続きせんかったくせに。ピアノを聴くと(ある日突然ピアニストのように)弾けたらいいなあ~などと勝手なこと思うてるんやから。我ながら呆れる。
一方自分が好きやから、とほんま何時間でも弾き続ける相方のピアノは、むちゃくちゃながら(←すまんが正直な感想)力強くて、熱い。
ひとは(わたしは)簡単に「すき」と言うけど「すき」にも色の濃淡がある。どれがほんまもんでどれが偽物なんて思わないけど、濃い人はやっぱり熱いなあと思う。

『ピアノマニア』というドキュメンタリー映画を先日観た。タイトル通りのマニアなすごい方たちがいっぱい登場するんだけど、主役はピアノメーカーのスタンウェイ社を代表するドイツ人調律師のシュテファン・クニュップファー。
自分の使い慣れた楽器を持って移動できないピアニストにとって、調律師の存在は大きい。ゆえに、彼のその緻密な仕事は、世界の名だたるピアニストたちから絶大なる信頼を寄せられていて。演奏者から次々に出される注文に、無理難題とも思えるそれにも耳を傾け、熱意をもって応えてゆく姿はもはや「縁の下の力持ち」というより共演者のように思える。

▲ 中でもフランスのピアニスト、ピエール=ロラン・エマールがバッハの「フーガの技法」を録音するにあたって、彼に出す注文の実に抽象的で細かいこと(苦笑)
ある時はシュテファンが『今回要るのは広がる音?それとも密な音?』と尋ねると、即「両方ともだ」と返ってきて。そして満足な音が得られて「いいねえ」と言うたかと思うと次にはもう「でも、質問なんだが」と続くんよね。それでも、その張り詰めたやり取りの間にも、シュテファンのユーモアとエマールの笑顔と「いい音だね」には、見ているわたしも「ああ、よかったぁ」と頬がゆるむ。

▲ 選んだピアノを何度も調整するのに理想の音が得られず、録音間際になって別のピアノを運び入れる、というシーンもあって。映画ながら、他人ごとながら、どうなるんやろ、とどきどきした。
もうこれ以上はアカンという極限まで調律している(らしい)から、そういうギリギリの線でピアノを演奏してると、その衝撃で翌日にはもう音が変わってしまうので朝と夜と二回調律するのだそうだ。

▲ すごいなあ、と思ってたら、録音技師たちも又すごくて細かい(苦笑)。録音した音をエマールと聴きながら「Fの音がかなり高い」とか言うてはる・・。でもエマールの演奏するバッハを、別室でヘッドフォン越しに聴きながら「美しい~」とうっとり楽譜を追うてはる。ほんまに皆楽しそうなんよね。シュテファンとのチームワークもええ感じ。シュテファンが一生懸命する音の説明に「(これが)シュテファン流なんだよね」「難しくないことを難しく解説する」と冗談まじりに言って笑う。

▲最初のうち、素人としてはそこまでこだわらなくても、とか単純に思ったりしたけど、声楽家が自分の喉や声を大事にするようなもの、ということばに納得。そして『“ブラボー!”の喝采の影に潜む、芸術への愛、完璧への執念、そしてわずかな狂気』(映画公式HPより抜粋)に頷く。
それにしても。
演奏家に何度も何度もNG出されるたびに、工夫して誠実にくりかえし挑む調律師。ほんとうに気の遠くなるような作業。でもシュテファンは言うんよね。
『落胆しながら仕事をしているんじゃない。私にとってこれは研究なんだ。』
深い。


*追記
その1)ピエール=ロラン・エマールの演奏をすこし。
PIERRE-LAURENT AIMARD   Bach The Art of Fugue Pt.1/3Contrapunctus 4 & 12 (The rectus version) 

その2) 小学生の頃習ってたピアノの先生が心斎橋・ヤマハ楽器で(←ローカルな話題ですみません。苦笑)買ってきてくれたレコード。ヴァン・クライバーンのチャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番(クライバーンは今年2月末に亡くなられたようです)
これを聴くと、そのころ近くの映画館で観た吉永小百合がピアニストになるというストーリーの映画(いま調べたら『父と娘の歌』1965年)の最後コンサートの場面で、この曲を演奏するところをよく覚えています。一緒に行った姉たちと「すごいなあ。ほんまに弾いてはるなあ。じょうずやなあ」とカンゲキしたのでした。なつかしい。
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by bacuminnote | 2013-04-09 21:51 | 音楽 | Comments(0)