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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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「はなだにかはる きのふけふ」

▲朝 窓を開けたら、色鮮やかな紫陽花が目にとびこんではっとする。この間までは薄い緑色で、昨日はたしかまだ白っぽかったのに。淡いブルーにピンク、薄紫に、額紫陽花も色づいて。
「紫陽花や はなだにかはる きのふけふ」・・・はるか昔 老教師が子規を語る梅雨時、だるい午後の授業を思い出す。
ガッコというところで、熱心に授業を受けたことなどあんまりない気がするのに、こうして突然ひょっこりと記憶が戻るのも
いとをかし(笑)

▲昨日は午後から某大学で作家の山田詠美さんと奥泉光さんの公開講座というのがあって、行って来た。同じ大阪とはいえ、出不精で方向オンチのわたしがネットで調べ、人に聞き聞き、電車乗り換えて。この熱意、30年前にはガッコの外に向いていたんやろなあ・・・とか思いながら、その名も大学通りという商店街を人の波にのりながら歩く。
当たり前だけど、70年代後半の空気とはあまりにちがう 今の学生の風貌と まち に改めて自分の年を思う。

▲お昼前に家を出たので、どこかでごはんを・・と、歩きながらあっちこっち眺めてたけど「ここ」と思うところがないまま、とうとう門が見えて。しようがないから終わってからにするか・・と がっかりしてたら、門のすぐ手前「キッチン・カロリー」という店の入り口に立ってはったおばちゃんと目があった。
「さあ、いらっしゃい。空いてますよ~」の呼び声に引っ張られて入ったら、
おおお!70年代の香りに満ちた店内(笑)

▲厨房のおっちゃんの火をふく鮮やかなフライパンさばきを見ながら、注文のオムライスを待つ。
隣のテーブルには、十数年ぶりに懐かしのキャンパスに来た(と、おばちゃんに言うてた)30代前半とおぼしき男ふたり。あっち見てこっち見て「なつかしい。変わってヘン」の連呼。
で、「ガチャ」とかいうこの店の名物メニュウらしい てんこ盛り野菜炒めの上に生卵?ひとつ、横にはスパゲッティ・・とめちゃ大盛りの「思い出の鉄板焼き」を注文して、ケイタイで写真撮ったり盛り上ってる。

▲料理運んで来てくれるおばちゃんがまた昔から学生街にいるようなひとで。オムライス食べてたら、ピッチャーと何故かスポーツ新聞を持って来てくれる。
顔馴染みらしい学生には「どしたん?今日はガッコ行って来たんか?」と肩をたたき「何や?この頭?こんなん今流行ってんの?」と遠慮なく男の子の髪をさわり(笑)なかなかええ感じ。

▲そのうち「はい。おまたせ~」と注文の一皿が運ばれて。
薄焼き卵の下には ケチャップライスがもう思いっきり詰まってて。横にはたっぷり刻みキャベツに一筋のマヨネーズ。いかにも男子学生対応ボリュームのオムライス。おいしかったけど、さすがのわたしもあと二、三匙・・というところで「もうあかん。残してごめん」で、店をあとにする。

▲さて、会場に着くと長蛇の列でびっくり。
列には50~60代が圧倒的多数。30~40代は家庭や仕事でまだまだ忙しく、若い人たちはやっぱり「ガッコの外へ」なのかもしれない。(せっかく「大学」まで来てるのに。同年代のおっちゃん、おばちゃんばかりでおもしろくない「おばちゃん」ではあった)
山田詠美さんは思うことをはっきり話す、そのしゃべり方が感じよかった。最後に奥泉光さんのフルートと山田さんの朗読(『風味絶佳』より)もあって。日々、緊張感のない暮らしをしてるので、特大オムライス満腹感から居眠りしないか、心配だったけど、しっかり最後まで聞いた。(斜め前のおっちゃんは始まるなり、眠りの世界に行ってはった様子)

▲帰りの電車の中、珍しく眠らず 持って行った本(辺見庸『永遠の不服従のために』毎日新聞社刊)を読んでいたら「朗読」について書いてあった。
「この世には、喉の浅いところからの発声を拒む、なににせよ たやすくはまつろわぬ言葉だって多数伏在しているのである」という氏のことばと、引用されている谷川俊太郎の『詩ってなんだろう』の中の「たんか」にある「こえにだしてよんでみると、いみはよくわからなくても、きもちがいい」の間で唸る。

▲結局、この日いちばん熟考したのが帰りの地下鉄の中での読書だった。
そうそう、歩数計は一万歩。
寄り道もせず帰って来たというのに。
いかに地下でうろうろ まよっていたか示す数値である(苦笑)が。
たのしかったから、また、ひとり道に迷いながら出かけようと思うのであった。
by bacuminnote | 2006-06-11 21:46 | 本をよむ