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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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ああ、ええ風や。

▲蒸し暑い日が続く。
こういう日はわたしもウエットに、そして おこりっぽくなってる気がする。
散らかってる部屋に、乾かない洗濯物に、寝ころんで本を読んでる相方に。途中で嫌になった押し入れ掃除。母の愚痴。重い掃除機。脱ぎっぱなしの息子のソックス。また痛み出した肩。
そして、新聞の一面飾るノーテンキなおっさんたち。
いやいや、最後の二人はともかくとして。何でもかんでもケチつけたくなって。イカン、イカン。

▲寒さにはちょっとだけキャリアもあって結構強いんだけど、そもそも暑さには弱い。
子どもの頃から夏の日の朝の会には、くらっと来て「保健室組」だったし、アイスやかき氷 食べるのが誰よりも早かったし。(って、関係ないか・・笑)
まあ、そんなこんなで悶々としてるうちに、気がつけばもう7月。
大阪に戻って3回目の「夏に喘ぐ」が始まった。

▲それでも、夜も8時を過ぎる頃になると 今はまだ涼風が窓からすぅーっと流れるように入ってくる。
これ、これ、この風がすき。
この風に故郷 吉野を思い出す。吉野川畔に吹く風。
その昔、わたしがまだ小学生の頃のこと。 旅館をしていた我が家から夏になると鮎舟が出ていた。

▲夕方お客さんが浴衣に着替えて、次々屋形船に乗り込む。冷えたビールやお酒や料理をぼんさんが運び入れ、仲居さんたちは太鼓や三味線を積み込んで。「ああ、暑ぅ」と団扇ぱたぱたさせると、汗と白粉と香水が混じったような匂いが飛ぶ。それから着物の裾をちょっとあげて乗ったのを 確かめると「ほな、行きまっせ」と船頭さんが舟を漕ぎ出す。

▲舟が出ると、旅館の中はさっきまでの騒ぎがうそのように しんとして。
母は玄関に残った下駄を片付けて「ああ、行った、行った」と
邪魔者追っ払ったみたいに(笑)豪快に伸びをする。
それから、川のほうを向いて決まって言うのだ。
「ああ、ええ風や」

▲そういえば、一度だけこの「舟遊び」に親父が「乗せたろ」と言うてくれたことがあった。
「お客さんのとこに子どもは出たらあかん」といつも見てるばかりだったから、大喜びで乗り込んだ。
川下に下ってしばらくすると、舟の動きが止まり 船頭さんが鮮やかな手つきで、ぱっと網を投げ込む。
そうして、捕った鮎や「はいじゃこ」を川原で焼き、フライにするのだ。
「今日は特別や。ほれ食べてみ。うまいぞ」と親父が焼きたての鮎と揚げたての「はいじゃこ」をお皿に入れてくれた。
そのおいしかったこと!(今も鮎の塩焼きは大好物だけど、あのときの鮎には届かない気がする)

▲台風が来ると、母が船頭さんに電話かけて頼んで集まってもらってた。「ほんまに すんまへんなあ」と何度も電話口でおじぎをしていた姿を思い出す。
どんどん川の水かさが増える中、みんなカッパ着て五艘の舟を順番に道端まで上げている姿は、子ども心にも「人も舟も流されないか」とはらはらした。

▲その後、船頭さんをしてくれる人が年をとり なり手もなく、いつからか舟は道に上げたままになり、鮎舟も終わった。
そうそう、あとに残った「鮎狩り」と書かれたチラシはわたしの落書き帳になった。裏に宿題の計算やマンガを描きながら帳場で、母の仕事の遅い終わりを待っていたものだ。
さっき母と電話で舟の話をしてたら、チラシの図案とその焦げ茶色のインクを思い出した。記憶の糸って不思議やなあ。
それは屋形船のまわりに鮎がぴょんぴょん飛びはねている図。たぶん ええ風 吹く中に、ね。

by bacuminnote | 2006-07-03 00:23 | yoshino