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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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「ひとりで いることの みのり」

▲陽差しも柔らかで、窓辺のカーテンがすこぅし揺れて、お隣から 植木屋さんのちょきちょきとリズミカルな鋏の音が響く。
まだまだ日中は暑い日が多くて「もうええんとちゃいますか?」と「夏」に退陣を言い渡したいくらいだけど。
それでもあちこちで、少しずつ、秋を感じ始めたので 日々機嫌よく本を読み、あの人この人に便りを書き、いつになく外出も続いて。
さっき、ふとカレンダーを見たら1週間 勘違いしていたことに気づいてびっくり!

▲なんと時間のたつのが早いのだろう。
この分やと、あっというまに(ということはないにしても、あーあと言うてる間に)おばあさんになっていそうな気がする。
ここ20年ほどは 自他ともに認める出不精人間やけど、ぼんやりしてばかりいられへんなあ。「行動」するなら足腰がしっかりしてるうちに・・・と思うのであった。

▲この間『GRAPHICATION』という広報誌を読んでいたら、津軽の農民で画家である常田健さんの「申し分ない暮らし」の言葉を引いて紹介してはったことばが心に残った。(列島を歩く(1)常田健・土蔵のアトリエ美術館—青森市浪岡/by 結城登美雄)

『よき暇と
よき孤独をもち、
最低ではあるが、
食うにことかかぬ。
そうだとすれば、
申し分ないではないか。 』

▲よき暇、よき孤独、ということばに じんと来る。津軽のきびしい自然の中、高潔な空気のただようこのことばに、我が身を振り返るのはなんだか申し訳ない気がするけれど。
しばし「よき暇」と「よき孤独」について考える。 常々「暇」には恵まれたジンセイだ、とよろこんでいるけれど(笑) 「孤独」には弱い。人一倍弱い、と思っている。四人姉妹の末っ子やし、とか 「旅館やお店の子」でいつも多くの人に囲まれて育ったから、にぎやか好きやし、ね・・・と、いろいろ弁解してみるけど。

▲「ひとり」というのは、時に 行き先も告げられない列車のように心細くてこわい。
けど。いや、だからこそ。
50をすぎてわたしのテーマはこの「ひとり」だ。
いつか読んだ本の中に『多分日本の女に一番欠けるというか最も苦手とすることはこの「独りでいること」かもしれない。更にいえば「格好よく独りでいる」ということだろうか』というくだりがあって、これ、これ!と思って書き写した。(残念ながらどの本で誰が書いてはったかのメモも、記憶もないので調べようがないのだけれど)
そう。「カッコよく独りでいる」ことのできる自分でありたい、と思う。

▲「独り」といえば、息子がまだ小さかった頃『子どもが独り(ひとり)でいる時間(とき)』エリーズ・ポールディング作・松岡享子訳 こぐま社刊)という本に出会った。100ページにも満たない薄い小さな本で原題は"Children and Solitude"とある。
『Solitude---独り居(ひとりい)。なんと美しいことばではありませんか?
もしわたしたちが無礼にも、子どもからひとりでいる機会を奪い取ってしまったら、子どもたちは、内に秘めている宝や、外で得る経験をどうやって生かすことができるでしょう。』(本文より)

▲最初にこの本を読んだときは、ちょっとおどろきだった。子どもに「友だち」との時間が必要、という本はいっぱいあるけれど、「独りでいること」の大切さを説いた本は初めてだったから。
先日、本棚を整理していて久しぶりに開いてみたんだけど、1962年に書かれたこの本が「いま」にも十分に通じる内容だと思った。いや、いまこそ、という気もする。

▲そうそう。
こうして「独り」を考えているさなか、まったく反対のタイトルの本に出会った。その名も『いつもふたりで ~Happy Old Two~』(沢野実・シファート.イーデス著 /村松 美賀子 構成・文/平凡社刊)
沢野実さん90歳、イーデス・シファートさん85歳。 沢野さんが70才 イーデスさんが65才で結婚したそうだ。 お互いの母語を話せないふたりが、京都でであい、静かに 暮らす日々。 「いつもふたりで」だけど、『自分のことは自分でする。お互いのペースや時間、空間を尊重する』個人主義、個室主義だそうで。そうかあ。ふたりやけど、やっぱり基本は「独り」なんよね、と思った。

▲先に書いた『子どもが孤独でいる時間』の「はじめに」に訳者がこんなことを書いている。
『(著者は)おとな同様、子どもにとっても、生活のどこかに「孤独でいる時間(ひとりでいるとき)」を持つことが必要だ、と説くのです。それは、自由であること、内へ向かうこと、自分自身を発見するために欠かせない条件であり、人間にはひとりでいるときにしか起こらないある種の成長があるのだ、と』

▲うち も 含め友人たちカップルもまた ケッコン何十年とたち、子どもの成長や親の介護・・・と、生活スタイルの変化で
それぞれに「ふたり」について 改めて考え始めているように思う。皆そういう年頃(苦笑)なのかもしれん。
ふたりでも基本は独り。だったら、よけいに 。
お互い「カッコよく独り」のふたり、で 行こうゼ。
『"孤独の果実"(ひとりでいることのみのり)はこんなにも豊かです』  (この本の帯に書かれたことば)

by bacuminnote | 2006-09-21 20:08 | 本をよむ