ひとりをたのしめ。
2010年 05月 01日
▲子どもの頃は赤い字の日はきらいだった。その日は朝早くから家業が忙しくて、厨房をちょろちょろしたり、ぐずぐず言うたりしては「ほれほれ、子どもは外で遊んで来なはれ」と追われるように外に出る。けど、「あーそぼ」とたずねた家は留守やったり、家族でお饅頭食べてたりするんよね。「あんたも上がって食べていきー」と言うてくれる声が背中の方でして。普段なら「おおきにー」と大喜びで上がりこむわたしも、家族みな揃ってるとこに加わるのは、子ども心にも気が引けて。「ほな、また」と走り去った。
▲ しかたなく自転車でその辺をぐるぐるまわり、それにも飽きると家に歩いて帰って、こっそり業務用の大きな冷蔵庫からサイダー出してラッパ飲みして、げぽっ~と大きなげっぷに どきん。
夕方になって「あ、せや!行きは自転車やった」とあわてて暗くなり始めた道を走り駄菓子屋さん、本屋さん、と順番に自転車探しするのだった。
なぁんて事を最近になって話すと、母など涙目で「えらい淋しい思いさせたんやなあ」とか言うんだけど。そんなでもない。サイダーのラッパ飲みできたし(笑)ひとりをたのしんだし。
▲そんなこんなを思い出しつつ家に帰って来て、図書館で借りてきた絵本を開いてびっくりした。
最初に男の人が「DIG YOURSELF」と書いた本を開いてみせていて、なんとその上には「ひとりをたのしめ」と書いてあったんやもん。
この本はかのボブ・ディラン作 『はじまりの日』だ。(原題は『FOREVER YOUNG』ポール・ロジャース絵 / アーサー・ビナード訳 / 岩崎書店刊)。ディランのこの歌は昔から好きだったけど、はずかしながら詩の意味を考えたこともなく「いつまでも若く」みたいな歌かなと思っていた。だからこの本の最初に彼が「ぼくはひとりアリゾナ州に行って、そこで息子のことを思いながら『フォーエバー・ヤング』という歌をつくった」とあって、初めて子どもを思う歌だったのだと知った。
▲ もとの歌がすばらしいのは言うまでもないけど、アーサー・ビナードさんの訳がとてもいいかんじで、ぐっとくる。
「やくそくをまもって うそを きらいますように
このひろい 世界が きみの目に 光りますように
背を まっすぐのばして いつでも勇気がもてますように」
「きみの手が ずっと はたらきつづけますように
きみの足が とおくまで 走っていけますように
流されることなく 流れを つくりますように」
そして、くりかえす。
「毎日が きみの はじまりの日
きょうも あしたも
あたらしい きみのはじまりの日」
▲ もうひとつ。
絵の中にポール・ロジャースさんがいっぱい仕掛けをしてはって、本を開くたびにあたらしい発見があって楽しい!よく見ると、部屋のすみっこにウッディ・ガスリーのレコードジャケットがあったり、椅子の上に置いた本が『ON THE ROAD』(←ケルアックの・・・かな?)だったり。アレン・ギンズバーグ風の人が登場したり、ギターケースに『THiS MACHiNE KiLLS FASCiSTS』なんてシールが貼ってあったり、ね。というわけで、先に書いた「ひとりをたのしめ」の男性はどうやらディランのようだ。
* 追記(その1)
Bob Dylan Animated Video for New Kids Book - Forever Young (you tube) ■
アーサー・ビナードさん
『日本語ハラゴナシ』
*追記(その2)
この本とは話がかわって。
すてきな「自立する」料理の本の紹介。
『ロカの定食』 (京阪神Lマガジン刊)
著者はわれらが木村緑さん。
かっこいい本だけど、かっこだけじゃなくて。
小さい本だけど、ロカ(みどりちゃんのお店)的おいしい世界がぎゅっと詰まって。
わかりやすくて、ほんま ていねいに本を作ってはるのをあちこちで感じます。
これ見たら、台所に立ちたくなりますよ。
あ、なんで「自立」かというと、この本、開いて目玉クリップでとめると、ひとりで立ってくれるから。
本を見ながら料理できマス。
room cafeロカ ブログ ■
大阪市西区新町1-29-16 第5中村興産ビル半地階