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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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通り過ぎるために。

▲ まいにちまいにち暑い。
それでも時々ざーっと俄雨が降っては地の熱を鎮めてくれて、ふうう〜っとひと息つく。じきにまた「待ってました」とばかりにお陽ぃさんがぎらぎら照りつけ始めるんやけどね。そうして草の元気のええこと言うたら。あちこちに葦簀(よしず)や日除けを吊るしたのたのをええことに、極力まどの外は見んようにしてる(苦笑)
そんな中先週お墓そうじに行ったあと、週明け辺りからどうも調子が出ず、寝たり起きたり、読んだり、寝たり(!)の時間をすごした。
おかげでだいぶ回復したけど、大阪に戻って10年目にして初めての夏バテにちょっと弱気の今日このごろ。

▲ さて、その墓参に行った日のこと。
台風の前だったからか、朝はけっこう涼しくて。よかったぁ〜今のうち、暑くならへんうちにちょっとでも早く、と思っていたところ 予定より一本早いバスがまだ停車しており。ラッキーと〜慌ててダッシュ。
バスはわたしが乗車するなり発車したから。ひょっとしたら運転手さん バックミラーに「ヨロヨロ必死でむかってくるおばちゃん」が見えてたのかもしれないな(笑)
そんなわけで、走ったあとの火照ったからだに、いつもなら寒いクーラーも気持ちよく、これで予定より半時間は早く着く〜と気分上々持ってきた本を開く。

▲ 水色のかわいらしい装丁のその本は岩瀬成子さんの『くもり ときどき 晴レル』6人の子どもたちの話〜6つの短篇集だ。
ひとつめは「アスパラ」 アスパラっていうのはね、アスパラの好きないとこの冬二(ふゆじ)に「わたし」がつけたニックネームなんだけど。山盛りにゆでた緑あざやかなアスパラを1本1本「ぽくぽくと」マヨネーズつけて食べてる少年のすがたが浮んでてきて。物語が始まったばかりだというのに、わたしはせつない気分になった。

▲ 子どもが自分以外のだれかのことを思うきもち。けど、その思いの届け方もよくわからなくて、かんがえたり、思ったりして。
ある日、「わたし」は自分とはまるでちがうアスパラの家庭環境に同情する気もちが湧きかけるんだけど。こんなふうに思い直すんよね。

わたしはその落とし穴には落ちないように気をつけた。気もちの落とし穴に。
すぐに泣いたり、だれかをかわいそうに思うのは気もちの落とし穴で、罠みたいなもんだから、やすやすと罠にはまってしまってはいけない。いい人ぶるのは、いやだ。
》(p25)

▲ この一節で、会ったこともない本の世界のこの女の子が見えるような気がした。
そして、いつも、どんなことがあってもにこにこしてるアスパラが切ない。そんな《アスパラもそのうち、わたしと同じ五年生くらいになったら、悲しいことで泣けるようになる、と思う。自分のことで泣けるようになる、と思う》(p31〜32)と言いながら、アスパラが泣くときはそばにいてあげたい、守ってあげたいとおもう「わたし」もいとおしい。

▲アスパラを食べるたびにこの物語を思いだすことだろうな〜と 読後のなんともいえないきもちに浸っていた、そのときのこと。車中で”終点A駅には〜“というアナウンスが耳に入って、思わず飛び上がる。
わたしの目的地はまだもうちょっと先のB駅で。いつも墓参のとき乗るバスは終点がB駅のはず。
信号待ちを狙って運転手さんに聞きに行ったら「はい。このバスはA駅止まりですよ。B駅に行かはるんでしたら、電車に乗り換えが早いし安いです」と、にっこり。
ええ!?この前乗ったときはこの系統でもOKやったのに。いつのまに路線変わってしもたんよ!とびっくりしたけど、運転手さんの愛想のよさと運転中ということもあり、おとなしく下車仕度。ふうう。読書の余韻もいっぺんに飛んでしまった。

▲ やがて回り道のすえ目的のB駅に着いて、お花を買ってタクシーに乗り込む。
いつもは閑散としている墓地も、お盆前ということもあり、あちこちに草抜きする人、墓石をきれいにしてる人がいて。草払い機のぶーんぶーんという音が響いて、暑さ倍増。
洗い場でしゃがんで花入れを洗うてるだけで、汗がぽとぽと流れる。横で同じように洗い物してはる人と「きょうも暑いですねえ」「ほんまにねえ」「せやけど、暑うならんとお盆は来んさかいに」「ほな、お互い熱中症に気ぃつけて」と。知らん人との会話はいつもお決まりやけど。なんか ほっとするんよね。

▲ お墓でひとり黙々草抜きしているとなぜか俳句がうかぶ。
そういえば信州でいた頃、雪かきの合間スコップを置いて、ごっついスキー用グローブを指折って五七五七七(←当時いっとき短歌にはまってた)なんてやってたなあ、と思いだす。一面真っ白の世界にいると、どんなことばも光ってみえて(!)一人悦に入ってたもんやけど。
夏のお墓はあまりに暑過ぎて光らへん(苦笑)いや、そんなことより早いとこすませて帰ろう〜と気を取り直して草抜きしていたら「すんまへん。ちょっとうしろ、通りまっせ」と年配のご夫婦。うしろに人がいるなんて。まったく気がつかなかった。「いやあ、道ふさいでしもぅてすんませーん」と立ち上がるや、「あれ?△△さんのお家の方でっか?」とおじいさんが振り返って言わはる。
それからちょっと先の墓石をまるでお家みたいに指さして「わたし、あそこの◯◯ですねん」と。指の先の「◯◯家」の文字に、そういえば相方の祖母や親から聞いたことある名字、と気づく。こんな会話もまた「ここ」ならではのこと。

▲ お茶もいっぱい飲んで、着替え持ってきたらよかったと思うほど汗びっしょりかいて、予定終了。いつも帰りは徒歩。でも、この日の駅までの道の長かったこと。ああ、駅に着いたら、とりあえずソフトクリーム、かき氷、いや生ビールかなあ・・と、励ましながら歩くも(笑)駅では果たしてまたもや予定より一本早いバスが。
というわけで、こんどは行き先を確かめて乗車。どすんと座席に腰掛けて、しばし呆然。空いてたこともあって持参のパンとお茶でかんたんランチ。からだの火照りが少し収まってから、本のつづき。

▲ ふたつめは「恋じゃなくても」というお話。
毎週金曜にガッコ休んでる桃井さんを登校途中にみつけた「ぼく」が、中学校そばまで来ながら、ガッコには行かず桃井さんのあとをつけるんよね。わたしはもうこの段階でわくわく(笑)みんなおんなじ制服着て、おんなじ交差点で横断歩道渡ってガッコに行くのに。自分だけそこをスルーして違う道を行く、ってかっこええ。じきに桃井さんは「ぼく」に気づいて話をする。
桃井さんは一年の一学期と二学期は登校したり休んだりで、三学期は全休だったと言う。二年になってからはまた登校するんだけど《金曜日だけは休むことにしてるんだ。べつに毎日学校に行くと決心したわけじゃないんだよ、と自分に知らせるためにね》(p50)と言う。

▲ いいなあ。このかんじ。岩瀬成子の描く子どもはかんたんに、そのきもちわかる、とは言わなくて。
よくわからない理由だけれど、でも、桃井さんは自分の気もちを他人にすべてわかってもらいたいと思ってるわけでもないんだろう、たぶん。そういうことも、ぼくは最近、考えるようになった。誰かが言った言葉に言葉どおりの意味がくっついているわけじゃない、ということ。人は思ってもいないことを言ったり、ほんとうみたいな嘘だってつくし、言いたいことはどこか別のところに置きっぱなしにしていたりする。》(p50)


▲ そうやって話してるうちに「ぼく」は桃井さんがいじめにあってたと知る。
冗談っぽい言葉でしかないんだけど、刺は心にずばずば確実に刺さって、しだいに毒が効いてくるの。心ってやわらかいものでできているんだと思う》(p52)
ほんまやね。
桃井さんは歩きながらよその庭木を指さして「あれは金木犀」とかこれはモクレンで、あれはニシキギ・・とか言うんよね。「ぼく」が名前を言えるのは松だけやのに(まるでわたしみたいやな)
それから、ふたりはコンビニでプリン買って公園で食べるのだった。
そうそう、だいじなこと書き忘れていた。桃井さんが履いてた靴はローラーシューズ。学校の前を滑って通り過ぎるために。かっこいいぞ、桃井さん。

▲ ほんまいうと、帰り道はその場で寝転びたいくらいにくたびれてたけど。この本読んでさわやかな緑の風がふきこんできたみたいに、元気がでてきた。アスパラと「わたし」、桃井さんと「ぼく」ありがとう。そういう子どもたちを描く岩瀬成子さん、いいなあ。すごいなあ〜とバス降りて、たこ焼き屋に直進。「たこ一枚・・・あ、生ビールもひとつ、ね」


*追記
その1)
あつあつのたこ焼きとビール飲んだとこまではサイコーやったんですが、あとが暑くて、これまた家までの道の長かったこと。(あ、いま数えたら本文中に「暑い」が7個もあった。あつくるしい文章ですみません。あ、たった今気づいたのですが。暑いという字は"日"の下に"者"と書くんですよね〜改めてなっとく・・笑)
そして、この翌々日あたりからダウンすることになるのでありました。


その2)
この本のタイトルみて、ぱっと浮かんだのは以前観たイギリス映画『人生は、時々晴れ』(マイク・リー監督)
いつもじゃなく、時々しか晴れない空。だから、ジンセイはしんどくておもしろいのかもしれない。

その3)
今日はこれを聴きながら。
もうほんと長いこと泳いでないから、泳いでみたい。プールでもいいけど、やっぱり川がいいなあ。流れにのってすいすい泳ぐ。腕をすーっと前に伸ばす。指と指の間、透明の水が流れて、お陽ぃさんに照らされてキラキラ光るんよね。

Breathe Owl Breathe - Swimming
by bacuminnote | 2014-08-18 11:45 | 本をよむ