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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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さくら、さくらの道。

▲ 昨日今日の暖かさで近所の桜は一気に花開いた。
桜が咲くとその周辺までぱあっと華やいで、少ぅし残ってた冬も一掃、風景はすっかり春になる。
みんなが「さくら、さくら」と言うのが わたしにはちょっと かなんのやけど。(毎年同じこと言うてすまん→
うれしいような鬱陶しいような顔して(←たぶん)桜 、桜の道を歩いてたら、今日も道路脇にロングボディの引っ越しトラックが二台とまってた。花の季節は引っ越しの季節でもある。
あれして、これして、それから〜とてきぱき段取りを伝えてる社員風の人と、そのつど明るく軽く?(苦笑)「はーい」と返事してる学生アルバイト風の若い男子数名〜マンションの前の通りを台車で何度も行き来してはる。

▲明日はもう4月やもんね。
新入学に新学期。新入社員、新人、新生活・・・。「新しい」ことが、ええかんじで始まりますように。
その昔 下の子が小学校入学式の前日「ボク保育園に行かへんかったらよかったなあ。保育園に行ったらから卒園して、そんで次に小学校に入学するんでしょ」と真剣な顔して言うてたんをふっと思い出した。
「新しい」や「きらきら」が渦巻くなかで、どんより重い気分になってる子どもたちに(大人にも)4月の風がその子の窓をすこぅし開けてくれますように〜とおもう。

▲この間『おでんの汁にウツを沈めて』(和田靜香著・幻冬舎文庫2015.2刊)〜という本に出会った。「44歳恐る恐るコンビニ店員デビュー」という副題のとおり作者 和田さんのコンビニ店員デビュー記なんだけど。表紙の「自分が揚げたアメリカンドッグをときどき買う」「おいしい」「ぜいたく」というキャプションつきの絵(作者の和田さんが描いてはるらしい)がおかしくて、かいらしい。
作者プロフィールを見ると、ラジオ番組への投稿から音楽評論家のアシスタント、その後音楽ライターに、とあって。思わずひゃあ〜と声をあげてしまう。

▲ せやかてね、その道って、昔のわたしのあこがれた道やったから。ラジオ番組にせっせとはがき書き、授業中も音楽(ロック)雑誌を教科書の上に置いて熟読していたし。おまけに名前がシズカさんとは。(俳句と短歌の某誌投稿欄に出すとき用に咄嗟につけた名前がシズカなのでした)他にも心配性で虚弱体質なとことか、ね。(←見かけによらず・・苦笑)いろいろ共感することがあり。数行のプロフィール読んだだけで、何だかもう他人とは思えなくて(笑)読む前から一人盛り上がるのであった。

▲ さて、和田さんの本業はライターなんだけど、CD不況もありレコード会社や雑誌からの仕事依頼が激減したことで心身ともに低迷。《倒れんばかりにヨレヨレと行った病院で主治医にポツリ「私、バイトした方がいいかな」と言うと、先生が我が意を得たりという口調で「うん、和田さんはバイトした方がいいよ。薬よりそれがいい」と断言するから、「じゃ、やることにする」と即答》しはったらしい。

▲ とはいえ、実行に移すまでには少しのあいだ逡巡。やがて「悩むより動け」とバイト募集の張り紙のあった近所のコンビニで働くことになる。
わたしは、そもそもコンビニのないところで16年余り暮らしていたし、ここに越してからも「コンビニ払い」と「メール便」(←今日が最後でした!残念!)くらいしか行かないので、置いてあるものもよく知らなかったんだけど。その扱い品目の多さから、営業時間の長さ(というかずーっと開きっぱなしなんやもんね)から考えても、お客さんの層は厚く、ゆえにいろんな人が集まってくる場所ということで。「考える種」のいっぱいある、なかなか奥深い場所のようだ。

▲ くわえて仕事の内容も、物品の販売や品出しだけではなく、表紙絵にあるような揚げものをしたり、お弁当をレンジで温めたり、公共料金の支払から通販の支払い、宅配便にメール便、店まわりの清掃・・といっぱいあって。
和田さんは初日《商品を袋に詰めることさえろくすっぽできないまま》たった4時間・3200円の賃金労働に心身ともにぐったりするんだけど。
《自分を打ちのめしてくれるものに、初めて出会った》気がするのだった。そして店長マダム(と、和田さんが密かに呼ぶ)をはじめ「できるオバちゃん」「かわいいオバちゃん」「おしゃべりオバちゃん」「ロックオバちゃん」〜と、先輩パートのオバちゃんたちにサポートしてもらいながら徐々に仕事に慣れてゆく。

▲ ひとつひとつのエピソードがドラマチックで、和田さんのキンチョーしてる様子や その誠実な人柄も、だからこそのしんどさや切なさにも共感。で、そこに添えられた絵が又ええ味なんよね。
困ったお客さんの話にも、怒るばっかりやなくて何故そうなるのか〜と考える目や、コンビニで扱う食品について(おにぎりの味に食傷してしまった話など)素直な感想を書いてはって好感を持てた。

▲ この本には和田さんがバイトをしていた間(2009.10〜 2011.10)のことが書かれていて。大震災直後のコンビニの混乱ぶりの記録もあり、とても興味深く読んだ。
でも何より一番こころに残ったのは、ふだんやってくるお客さんとのエピソードだ。

《大晦日に一人で買い物に来てお酒やらつまみを一人分買って 、「今日は紅白観見るよね?」なんて話ししかけてきてくれてからずっと親近感を持っている。 いつも白飯やおかずを一人分だけ買い「あっためてね」と言う。オバさんは間違いなく一人暮らしだ。 特段オバさんと何かを話すわけじゃない。「今日暑いね」「もうだめよ。年だからね」「これおいしいわよ」とか、そんなほんの一言を交わすだけ。 
でもオバさんが気のいい人なのも、どっかちょっと変わってるのも伝わってくる。オバさんが何の仕事をしてるとか、いや、もう仕事は辞めてるのかとか、何も知らないけど、そんなことはどうでもいい。》
(p84〜第2章「コンビニのお客さんに考える」 )

▲ わたしは先日ここに書いた図書館の貸出カウンターのことを思い出していた。前はよくお年寄りが館員さんと言葉をかけあってはったんよね。今はまだ自動化したばかりでで「わからない」人が多くて、そばに付いて教えて貰ってはるけど。そのうちマシンに慣れてしもたら、誰にも一言もしゃべらんと帰って来ることになるんやろなあ。(いや、図書館って「しゃべる場所」ちゃうやろ〜と言われたら確かにそうなんだけど。市民図書館は子どものコーナーも含め、少しくらいはざわざわしてるのがええとわたしは思う)

▲ そういうたら、よく行くレンタルビデオの店でも、常連さんがカウンター前で、誰からも聞かれてへんのに「こないだからなぁ、風邪引いてしもて、しばらく来れんかってん」と家の中で篭ってた日々を語ってはったりする(笑)
連続ドラマを「今日は◯巻から5本借りる」とか言うて、従業員の若い子に「それ、もう観はったんとちゃいます?」と返されて大笑いしてるのを、順番待ちのわたしもつられて笑うたりする。

▲ 和田さんは言う。
《私は仕事でいろんな有名人にインタビューをするけれど、そこで1時間とかする濃密なようでいて実は上っ面をなぞってるだけの話なんかより、オバちゃんと何気ない一言を日々積み重ねていくことの方がずっとずっと濃厚に思える。》(p85〜第2章「コンビニのお客さんに考える」 )


*追記
その1)
小学校の入学式から行きたくなかった息子2は、しかしその小学校でええ「校長センセ」に会うことになります。ひとがひとと出会うのって大きいこと。2年生の終わりにこの先生の異動を「離任式」で知った息子は、式の最中に号泣したそうで。
離れるのがさびしくて号泣するようなセンセと出会えた彼も、校長という生徒たちからは ちょっとキョリのある立場で、子どもに号泣されたセンセも。ええなあ。シアワセやなあ〜と思う。

その2)
この間観た映画『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』(監督:行定勲)→
原作は(西加奈子さんの『円卓』)未読やったし、この主人公を演じてる子がちょっと苦手やったんで 観てなかったんですが、先日『西加奈子と地元の本屋』→という冊子を読んだら(とくに西加奈子✕津村記久子が語りたおす「大阪を書くことはほんまはしんどい?」)めちゃおもしろくて。ここにこの映画の紹介も載ってたのでDVDを借りてきました。

いまの小学生があんなディープな大阪弁しゃべってるんか〜わからへんけど。
観てる間じゅう子どもに戻った気分。こっこちゃんの世界に共感。おもしろかった。
それにしても。劇中子どもらがランドセルやらサブバッグやら何やら一杯持ってるのに、走る、走る。子どもって元気やなあ。
原作も読みたくなりました。(←そして、この文庫解説は津村記久子さん)

その3)
今日はこれを聴きながら
Jackie Oates - Waiting For The Lark (Live BBC Radio 2)→

その4)最後になりましたが。
友人うらたじゅんの個展がもうじき始まります。
http://junmilky.exblog.jp/
【京都】
出町柳・トランスポップギャラリー
「ミリオン通り」
2015年4月2日(木)~12日(日)

【東京】
南青山・ビリケンギャラリー
2015年5月9日(土)~20日(日)
詳細は後日


その5)
「春の夜鬱という字の迷路かな」(しずか)
by bacuminnote | 2015-03-31 17:59 | 本をよむ