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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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ゆっくり時間をかけて。

▲通勤客の多い時間帯に電車に乗るのは久しぶりだった。
地下鉄から近鉄南大阪線に乗り換えて半時間。タクシーで15分余り行くと、なつかしい田園風景がひろがって思わず「わあ!」と声が出た。
朝の大阪は今にも降り出しそうな曇り空やったのに。
空は広くてベビーブルーで。そんな中に浮かび上がる低い山の連なりと、いちめん田圃の緑も。みな、ほんまにうつくしい。

▲そのカンゲキの声に、運転手さんが遠方から来た客かと、あの山は、この山はねぇ~と大和三山(香具山かぐやま/畝傍山うねびやま/耳成山みみなしやま)をていねいに案内してくれはったから。
ついつい郷里は「この近くですねん」と言いそびれてしまったんだけど。
制服姿のころは、ただ「田舎」の一言で片付けてた風景を、こんなきもちで眺める日が来ようとは。歳を取るのもええもんやね。

▲ああ、それにしても。
きゅうくつな喪服も(そのうち買い換えようと思いながら30年。体重はそのままでも体型は年寄り化するのであった)めったに履かないストッキングも、いつもより小さめのバッグやハンカチも、靴も、ぜんぶ。
家で篭ってることの多いわたしには、何もかもが非日常で緊張する。
せやからね、早いうちにお手洗いに行っておこうと思ったんだけど。
斎場近くのそれは「和式」しかなくて、びっくりしたりがっかりしたり。

▲いまのわたしは膝が痛くてしゃがめないのである。
周囲をみわたせば、高齢の方も杖をついている方も何人もいてはるのに。大きな公営葬祭場なのに。それほど古い施設ではなさそうやのに・・・と、憤りつつ、痛い用足しとなった(泣)

▲わが身となって、気がつくことっていっぱいある。
駅の階段は構造上仕方ないにしても、エレベーターはたいてい駅構内の端っこにあって、そこにたどり着くまでが大変だ。
大きい駅になると、そのエレベーターを「乗り継ぐ」ことにもなって。それでなくても方向音痴のわたしは、やっと見つけたエレベーターで階下におりたのに、乗り継ぎエレベーターが見つけられず、こんどはまた長い階段を登ることになって・・・ほんま、泣くで。
街は元気で健脚なひとたち用につくられているんやなあ、と「痛」感する。

▲故人はわたしにとって、あまり近しいひとではなかったのだけど、ご家族や、わたしの近いひとたちが嗚咽してるすがたに胸がいっぱいになる。
それでも、和やかに談笑してはるときもあって。
こんなふうに、遺された者たちは泣き笑いをくりかえしながら、大事な人とゆっくり時間をかけておわかれをしてゆくんやなあ~と去年の義母の葬儀を思いだしていた。

▲帰りも姉とタクシーで駅まで。
一緒にお昼ごはん。この間会ったとこやのに。話は尽きない。
おなか一杯食べて、しゃべって笑うて、しんみりして。コーヒーフロートも注文して。ここでは安心して洋式トイレにも行った(苦笑)
結局姉にごちそうになって(m姉ちゃん、いつもおおきに!)「階段気ぃつけや」と見送ってもろて「ほな、またな」とそれぞれのホームにわかれた。

▲この日のおともは軽い文庫本。『陰翳礼讚・文章読本』(谷崎潤一郎著・新潮文庫)。どちらもずいぶん前に読んだけど、先日ツイッターでこの新刊に読んだことのない「文房具漫談」が収められてるというつぶやきに、それなら~と買った文房具好きなり。
この「文房具漫談」8頁ほどの短い文章なんだけど、ペンや万年筆嫌いの谷崎が筆、紙への、それはこと細かなこだわりぶりが可笑しい。
これは筒井康隆氏による「解説」と共に買うてすぐに読了。

▲カバーには【文豪の美意識と創作術の核心を余さず綴る、名随筆を集成】とあって『陰翳礼讚』のあとには『厠のいろいろ』が続くんよね。
「厠で一番忘れられない印象を受け、今もおりおり想い起こすのは」と始まる厠の話は「或る饂飩屋へ這入ったときのこと」とあり、この店、なんとわたしの生まれ育った町にある店だと書かれているのであった。

▲曰く、急に催した谷崎がその饂飩屋で案内を乞うと「家の奥の、吉野川の川原に臨んだ便所」で、一階が二階になって、下にもう一つ地下室が出来ている・・という川沿いの特徴的な建ち方の家のトイレ(二階にある)は

【跨ぎながら下を覗くと、眼もくるめくような遥かな下方に川原の土や草が見えて、畑に菜の花が咲いているのや、蝶々の飛んでいるのや、人が通っているのが鮮やかに見える。つまりその便所だけが二階から川原の崖の上へ張り出しになっていて、私が踏んでいる板の下には空気以外に何物もないのである。】(「厠のいろいろ」p67~68より抜粋)

▲ええっ~!?菜の花や蝶々が飛んでるのが見える川沿いの家のトイレって!そんなスタイル、祖父母や親からも聞いたことないよぉ~と失笑しつつ。
「けど、それって、どこのうどん屋さんやろ?」と、長いこと歩いていないジッカの周辺を一軒一軒思い浮かべたりして。
そういえば、以前これを読んだときも、同じように「どこやろ?」とさんざん考えあぐねたことを思いだして、電車の中で「わたしもあほやなあ」と笑ぅてしもた。

▲そうこうしてるうちに、あべの橋に到着。
ここからの乗り換えは、エスカレーターもトイレの場所もよくわかってるから安心。
このごろは駅構内の見取り図もネットで検索できるようになってるけど、平坦な道ですらわからないわたしには、あの 何階かに渡って描かれた立体図は、ほんまにちんぷんかんぷんなのであって。
だから、せめて構内のエレベーターやエスカレーター、トイレの案内はもっとわかりやすいものにしてください!

▲乗り換えの後は「文章読本」をうんうん頷きながら。
けど、朝が早かったからか、しらんまに爆睡して~気がついたら降車駅のひとつ手前だった。やっと着いたなあ。
「クミはどっか行くたび大冒険やなあ」と友だちに笑われるけど。ほんま旅がおわった気分!ああ、早う家に帰って、ストッキング脱いで、楽な服に着替えて、ほんで冷えたビールをのもう。

*追記
その1)
何度もトイレの話、厠の話ですみません。
件の公営葬祭場~気になって、いまネットでHPにあった見取り図をみてみました。
そうしたら別棟「待合ロビー」には、車いすマークのトイレが一箇所ありました。ということは、その棟にあるトイレは洋式かも。ここには授乳室もあるようで。ああ、よかった!・・と、ちょっとほっとしました。
もしかしたらこの棟だけ新しく増設したのかな。

ただ、斎場からそこに行くのにはけっこうあるし(健脚な方なら問題ないキョリかもしれないけど)何より道中 階段もあって。
階段を避けようとすると、敷地内をぐるりと大回りということになりそうです。

その2)
今回また書きそびれた『屋根裏の仏さま』(ジュリー・オオツカ著 岩本正恵 小竹由美子訳 新潮社刊)→はまたこんど。(早う書かんと忘れてしまいそうや・・)

絵本『ちっちゃいさん』(イソール作 宇野和美訳 講談社刊)→ も 『絵本といっしょに まっすぐまっすぐ』(京都"メリーゴーランド"店長/鈴木潤著 アノニマ・スタジオ刊)→も、とてもいい本でだいすきになりました。
どちらも若い(若くなくても♡)友人に贈りたいすすめたいとおもう本でした。

その3)
観た映画(DVD)
『リップルヴァンウィンクルの花嫁』→(岩井俊二監督)
劇中でてくるせりふで「この世界はさ、本当は幸せだらけなんだよ」が、せつなかった。

そういえば
この公式HPのバックで流れてる『 歌の翼に』( 作曲:F.メンデルスゾーン 編曲:F.リスト )は、むかし友だちの結婚式のスピーチのBGMにした曲で。元演劇部の友人にわたしの原稿を朗読してもらって録音して、当日流してもろたんよね。

今思えばこの曲に結婚のお祝いのスピーチって「まんま」やなあ~と恥しくなるけど。その日の新婦も新郎もとてもとてもよろこんでくれて、うれしかった。
その彼がなくならはって、もう4年になります。劇中この曲が流れるたびに、あの日のふたりを思いだしてなつかしくせつなかったです。

『「僕の戦争」を探して』
「僕の戦争」というのは、リチャードレスター監督が、ジョン・レノンを起用した映画のことやそうで。その「僕の戦争」の撮影が、スペインのアルメリアで1966年に行われて、ビートルズファンの英語教師が、ジョン・レノンに会おうとロケ地まで旅に出かけていく間にいろんな人に出会う話。
邦題のイメージとは全然ちがってたな。よかった。
ちなみに原題は
Vivir es facil con los ojos cerrados英題はLiving Is Easy with Eyes Closed
予告編(字幕なし)→

その4)
今日はこれを聴きながら。
秋になったらどこかに行きたいなあ。

Lisa Hannigan - Lille en Francais→

by bacuminnote | 2016-09-07 20:09 | 出かける