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いま 本を読んで いるところ。


by bacuminnote
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「そのころ」を歩いてくる。

▲なんという一日のはじまり。
いつもコンセントも抜きっぱなしのテレビに、それでも受信料をあえて払い続けているのは、国会中継など「ここ」というとき観たいからなのに。NHKは今回(も)中継をしなかったから。朝いちばんの珈琲も淹れずにパソコンの前に座った。

▲何もかも念入りに仕組まれた、でも、ちっともおもしろくないドラマを見せられている気分で。むかむかする。
いや、ドラマだったら画面の向こう側で何が起きようが、気に入らなければスイッチを切ったらそれで全部お終いにできるけど。もはやそんなのんきな話ではなく。前にも読んだ『茶色の朝』の恐怖を思いだしながらここに書きました)この本の解説にあった高橋哲哉氏の【やり過ごさないこと、考えつづけること】を自分に言い聞かせる。

▲そんな重いきもちとは裏腹に、梅雨ながら毎日ええお天気がつづいて。今日も又すきとおった青空がひろがる。刷毛で掃いたような雲が「何あほなことばっかしやってるねん!」と人間を笑い飛ばしてるみたいに見える。
庭の緑は(草のことデス)このまえ刈ったとこなのにもう伸びて。ぐんぐん伸びて。「七月や既にたのしき草の丈」っていう日野草城の句があって。最初「たのしき」やなんて。よう言うわ~(苦笑)とか思ったのだけど。

▲後日この句が草城の晩年に近い時期、病気療養のさなかの作句と知って、そうか。せやったんか~草の勢いに「生」を思ってはったんか~としんみりする。けど、ふりかえってみるに、わたしも友人たちも若いときは快活とか、精気みなぎる~みたいなのはなんか恥しいと思ってて。服装でも生き方でも、ちょっと草臥れたような、枯れてるのが、かっこいいと思ってた気がする。

▲いまはもうみなぎる精気などはないから。
映画館のシルバー料金をなんの証明も要らないことにちょっと不満なおばちゃんであり。若い日の老成のフリが愚かしくもあり、いとおしく思える。

▲さて、晴天続きってことで、午後に買い物や用事に出ると保育園のおさんぽや小学生が校外学習?から学校に戻るところに、たびたび出くわす。ぞろぞろ、ぞろぞろ長い列だ。暑いし、だらけてる。あっち見て、こっち見て。歌をうたう子、大きなあくびの子。前とうしろで、足を蹴った、蹴らないで、けんかする子。通りすがりのおばちゃん(わたし)に手をふってくれる愛想よしから、口をぎゅっと結んだ不機嫌な子も。

▲ああ、にぎやか。皆それぞれ、ばらばらで。センセはさぞかし大変やろけど。ええなあ。こういうのすきやなあ~と後ろ姿を眺める。そしてその後ふと、この子らにあんな国会のようすを、嘘と詭弁にまみれた政治家たちのうす汚れたことばを、大人たちはどうやって説明できるんやろ、と思いながら、歩く。

▲この間からリハビリの待ち時間に『ボーイズ イン ザ シネマ』(湯本香樹実著 キネマ旬報社 )という本を読んでいる。わたしの持っているのは初版1995年刊なんだけど、初めて読んだのはずっと後。だから中に紹介されている映画の上映が終わっているだけじゃなくて、DVDにもなっていないものが多くて、観る機会がないのはとても残念。(本も絶版のようで残念)

▲それでも、ふしぎなことに観たいくつかの作品についてのエッセイより、むしろ観たことのない作品について書かれたものが印象に残って。文章から想像してちょっと「観たような気になってる」ものの、実際には観ていないからそのうち忘れて。しばらくしてまた初めて読むきぶんで本を開く・・というようなことを繰り返してる。ああ、これこの前も読んだなあと思いながらも、書かれている著者のこども時代のエピソードがそのつどたのしい。

▲そのなかの一篇『アーリー・スプリング』は、【ある日、私は穴を掘りはじめた。穴のなかに秘密を埋めるのだ】と、始まる。いや、これも映画の話じゃなく著者のこどもの頃の話なんだけど、気になる書き出しだ。(この方の「始まり」はいつもええ感じ)
最初は母親にもらったクッキーの缶にだいじなものを入れる。字はまだ書けなくてりんごの絵を描いてハサミやのりやガラス玉のついた指輪や牛乳瓶のフタを入れて。そして、それをどこにでも持ってゆく。これ、たぶん女の子でも男の子でも覚えのあるシーンだと思う。

▲つぎに母親の鏡台の抽斗のひとつを専用の抽斗にもらうことになる。鏡台の抽斗と聞いただけで、わたしも当時母のつかってた乳液の瓶やヘアーブラシが浮かんでくるようだ。うれしくて、著者は大好きなワンダースリーのシール(手塚治のテレビアニメ)を貼って、いきなり母親に叱られ断念。
次に思いついたのが、だいじなものをクッキーの缶に入れてそれを「埋める」という方法で。著者はいっとき家の庭じゅうを掘って掘って掘りまくるんよね。

▲そういうたら、昔わたしもラムネの瓶から取り出したビー玉を姉からもらって、庭に埋めたことがあったっけ。はじめは、毎日のように場所をたしかめて、追加にボタンや川原で拾ったきれいな石とかも入れたりしたのに。そのうち確認を怠って(苦笑)はっと気がついたときは、どこかわからなくなってしまった。
だいじにしなければ、と思うものはだいじにしすぎて(?)仕舞いこんで、それがどこだか忘れてしまう~というこまった癖は未だ治ってないんだけど。

▲やがて著者は中学校に入って、鍵のかかる抽斗のついた机を買ってもらい「秘密を隠す場所探し」はとりあえず終わることになる。
【私はいつも、その鍵を持ち歩いた。ひきだしの中身より、鍵が宝物みたいだった】 この感じよくわかるなあ。わたしの場合は鍵付き日記だった。あこがれのそれを初めて手にしたとき、こんなのでちゃんと閉まるのかと思うくらい錠前も鍵も小さくて。指先でつまむようにして鍵をもって鍵穴に入れて回すと、カチッと錠が開いて。そんなん当たり前やのに、そのことにカンゲキして、中に何書こうかとドキドキしてた。

▲こんなふうに本を読みながらわたしは著者の思い出話から自分のこどもの頃へと、何度も何度も飛んで行ってる。
すっかり忘れてしまってたようなことが、ふいに目の前に現れて。しばしタイムスリップしたみたいに「そのころ」を歩いてくる、というトリップを楽しんでる。
たまに思い出したくなかったことも見えたりするんやけど。

▲そうそう、映画のことは、最後の6行に書かれているだけ。湯本香樹実さんのこのセンスだいすき。(いつも長々しゃべりすぎのわたしのあこがれ!)
この映画観たいなあ。(予告編 
【『アーリー・スプリング』のエスターを見ていると、心のなかの秘密のひきだし、そこにおさめられた秘密ののぞみ、そんなものが世界の半分を占めていた頃のことを思い出す。少女のリアリティが心身両面から立ちのぼってくる、素敵な映画。エスターが駄菓子やパン類を頬張っているシーンがたくさんあって、そういうところもなんだかうれしくなるほど女の子そのものなのだ。】(同書p16~17より抜粋)



*追記
その1)
思春期の鍵付き日記はともかく。社会にむけて自分の思いや考えに鍵をつけなくてはならないなんて、とんでもないこと。まして、その鍵をだれかに管理されるなんて、あってはならないこと、と思います。


その2)
このあいだ、本屋さんの絵本のコーナーに行ったら『たねがとぶ』という本と目があいました。どこかで見たことのある本だと思って奥付をみたら1987 年発行の「かがくのとも」(福音館書店)とあったから。探せば家のどこかにあるはず、と買いたい気持ちを抑えて帰ってきたのだけれど。
帰り道もずっとタイトルの「たねがとぶ」が残っており。あらためて、ええ題やなあと思う。そして自分がずっと思ってることはこれやな、と思う。
道端の草に花が咲き、花のあとに実をつける。実のなかには種がある。
【たねは、くさの つくった くさの こども。
やがて、くさの こどもは たびに でる。 
あたらしい ばしょに なかまを ふやすために。
かぜに ふかれて そら たかく
とんで とんで とんで とんで、つちにおちて
めをだして おおきく なって、また たねを つくる。】(p16~19)


その3)
前回更新から16日も経ってしもて。長い休憩でした。休憩の間に、ここに来てくださった方、「なんかあったの?」と心配して尋ねてくださった方、ありがとうございます。わたしは元気ですが、これまでは年にほんの数回しかなかった遠出がけっこうあったり。いっぺんに複数のことができない不器用モンで、自分でもなさけなくなります。
そういうたら、昔パン屋のころ(前にも書いた気がしますが)一次発酵後のパン生地をスケッパーで分割して計量して、作業台で向き合って立つ つれあいがそれを次々丸めて天板に並べてゆくのですが。最初は寝起きということもあり(つれあいは午前2時半頃起床。わたしは一次発酵が終わった数時間後に起床、でした)無口なわたしも、だんだん調子づいて、しゃべりながら作業するわけです。と、しらんまに話すことに熱心になり(苦笑)手がお留守になって、よく怒られました。この行程は、というか時間配分は発酵、焼き上げに影響するのでとても大切なのでした。で、しばらくはしょんぼり黙々とスケッパーで生地切る音だけが小さく響くのですが。が、またそのうち忘れておしゃべりを始めるんですよね。これが。(そして、今もかわらず・・)


その4)
きょうはだいすきなこれを聴きながら。
Lou Reed -Walk On The Wild Side→
by bacuminnote | 2017-06-17 10:56 | 本をよむ